電気自動車(BEV)DS3クロスバック Eテンスを1年ほど長期レポートしてきたが、そのなかで気になったのは、電動車の個性はどこにあるのかということ。ここからは少し嗜好を変えていくつかのモデルをレポートしていきたい。今回はジープのコンパクトSUVでPHEVのレネゲード4xeだ。(第2回/Motor Magazine 2023年6月号より)
フィアット製エンジン搭載だからこそ重要な充電環境
道幅の狭い日本の道路環境に適合するコンパクトさ、そして愛嬌あるフロントフェイスとスクエアスタイルのボディデザインなど、様々な要素により若年層や女性からの支持を獲得している。このプラグインハイブリッドSUVは、ガソリンエンジン車より350kgの重量増となっているが、これが良い方向に働いているのだ。
【BEV長期レポート】DS3 Eテンスで肝を冷やした充電残量1%の危機。メーター上の走行可能距離は「--- km」になった話【第8回】
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フロントに搭載されたエンジンとISG、リアモーターを組み合わせることで四輪を駆動するレネゲードのPHEV「4xe」は、満充電でのEV走行可能距離がWLTCモードで50kmとスペックシートに表記されている。では実際の道路環境ではどうか、ほぼモーターのみで駆動する「ELECTRIC」モードを選択して走行してみると、街中においては43kmほど、高速道路では40kmと、想定していた以上の距離をEV走行できることがわかった。
自宅に普通充電器を設置していれば、買い物や子どもの送り迎えなど普段づかいと充電を繰り返している限り、ガソリンを消費することはほとんどないはずである。
ではなぜ、今月の長期レポート車の燃費は17.5km/Lなのか。理由は単純。普段はEV走行距離を超える100km近くを走り、しかも編集部のガレージ&充電器は予約制のため毎日使える状況ではないからだ。
充電環境が整ってさえいれば「いくらでも」・・・は言い過ぎだが、かなり省燃費な数値を示すのではないだろうか。フィアット製のエンジンを搭載しているゆえ、使用燃料はプレミアムガソリン。ランニングコストを気にするなら、なおのこと充電環境の重要性は高まるというものだ。
運転したあとは毎回充電。だからこそ充実させたい設備
搭載される駆動用バッテリーの容量は11.4kWh。充電残量が0%を指していても200V・3kW出力の普通充電器に接続すればわずか3時間ほどで満充電になる。この手軽さは大きなメリットだ。それでも、もし自宅駐車場に普通充電器を新設するなら、ジープ販売店で設置申し込みできる、より高出力な200V・6kW普通充電器をおすすめしたい。
近年、PHEVは燃費性能向上のためバッテリー容量が大きくなる傾向にあり、これに伴って充電に必要な時間も伸びている。モデルによっては満充電まで6時間以上かかることもあるのだが、6kW普通充電器なら充電時間をおよそ半分に短縮できる。
しかも普通充電ソケットの形状はどのモデルも基本的に共通なので、クルマを買い換えたとしても充電器は次のクルマに引き継げる。編集部の3kW充電器をメインで使ってBEVの長期レポートをしてきた私は、PHEVであっても充電時間が短ければ精神的にも楽だと結論づけたわけだ。
ちなみに、燃費性能に優れる反面で燃料タンク容量はガソリンエンジン車の48Lより小さく、36Lに設定されている。満タン&充電残量ゼロでの航続可能距離は500kmに届かず、やや短めな印象だ。これほどの長距離移動をする機会は少ないが、そんな時は給油ポイントをチェックしておいたほうが良さそうだ。
実用性だけでなく、愉しさも併せ持つオールマイティSUV
さて、このレネゲード4xeにどんなイメージを持っているだろうか。ジープらしいオフローダー? それとも燃費性能を高めたエコカー? いずれも間違いではないが、運転すると反対のキャラクターが見えてくる。
デザインは直線を基調としたラングラー系統で、トラクションコントロールの制御モードとして「SAND/MUD」や「SNOW」といった4つのドライブモードを用意するセレクテレインシステムを搭載するなど、見た目にも機能的にも悪路走破性の高さを感じさせるパッケージングとなっている。
しかし、である。オンロードの、とくにワインディングロードに行くとコーナーのひとつひとつがとにかく気持ちいいのだ。これを実現する要素のひとつが前後重量配分の良さで、駆動用バッテリーをセンタコーコンソール下からリアシート下にかけて配置され、リアモーターの追加も相まって前55:後45と好バランスを示している。後輪のモーター駆動も加われば、コーナリング中の挙動は全高1695mmのSUVとは思えないほどビシッと安定してくる。
足元に目を向ければ17インチアルミホイールに組み合わされる235/55R17サイズのタイヤ、グッドイヤーのハイパフォーマンスモデル「イーグルF1アシメトリック5」も、舗装路でのグリップ性能の高さを物語っている。
省燃費でオン・オフロード走行をこなすオールマイティなSUV。逆に苦手なことはなんだろうかと、つい探してしまう。
第2回/2023年3月11日~4月6日(2カ月目)のデータ
・オドメーター:1万0863km
・当月の走行距離:1675km
・給油量:約95.8L(プレミアムガソリン)
・燃費:17.5km/L
・充電回数:6回(200V普通充電)
ジープ レネゲード アップランド 4xe 主要諸元
●全長×全幅×全高:4255×1805×1695mm
●ホイールベース:2570mm
●車両重量:1790kg
●エンジン:直4 ターボ+2モーター
●総排気量:1331cc
●エンジン最高出力:96kW(131ps)/5500rpm
●エンジン最大トルク:270Nm/1850rpm
●モーター最高出力:前33kW(45ps)/後94kW(128ps)
●モーター最大トルク:前53Nm/後250Nm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:電気式4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・36L
●WLTCモード燃費:16.0km/L
●タイヤサイズ:235/55R17
●車両価格(税込):568万円(発売時)
[ アルバム : 長期レポートレネゲード4xe/2回目 はオリジナルサイトでご覧ください ]
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