フォルクスワーゲン/アウディのグループ商品戦略と企業方針に従い、内燃機関を使用したカテゴリーへのカスタマーサポート継続に暗雲が立ち込める状況のなか、スペイン発のマニュファクチャラーとしてセアト傘下の『クプラ』ブランドで活動を続ける同社は、引き続きTCR規定ツーリングカーでの支援継続を決断。来季2024年には新型『レオンVZ TCR』のホモロゲーション登録を予定している。
親会社フォルクスワーゲンは『ゴルフGTI TCR』を早々に見切り、第8世代をベースとした新型車両の開発も道半ばで凍結。同じくアウディも、現状は『RS3 LMS 2』が各国、各地域、そして今季創設の新生TCRワールドツアーでも一線級の戦闘力を発揮し続けていながら、今後のカスタマー支援継続は不透明な状況に置かれている。
豪州の“聖地”でSC乱発。ハフとエルラシェールが同点で最終戦マカオへ/TCRワールドツアー第8戦
しかし、同グループ内のクプラはその方針には与せず、新しい車体、再設計されたフロントサスペンション、再設計されたブレーキペダルボックスを含む、ブランニューモデルの投入とカスタマーサポートの継続を予定する。
そのクプラ・レーシングを率いるシャビ・セラは、ツーリングカー情報専門サイト『TouringCarTimes.com』に対し、その意図を次のように明かしている。
「ご存じのとおりクプラは限界を押し広げ、自動車の世界を電動化するという野心を持っている。そのためクプラでは引き続き電動化に100%取り組んでいく」と続けた部門責任者のセラ。
「そのため、我々のブランドとしては電動モビリティを採用するカテゴリーにのみ正式に参加していくつもりだ。しかし我々はこれまでと同様に、すべてのプライベートチームとカスタマーチームにサポートを提供し続ける。これは、車両デザインを現在のデザイン言語やカスタマーのレースに適応させることを意味する」
「この考えに従って、我々は2024年シーズンに向けて新しいレーシング仕様ツーリングカー、クプラ・レオンVZ TCRを発売することを決定した」
その新型モデルには、TCR規定準拠のSADEV製ギヤボックスとアップグレードキット、改良されたドライバーディスプレイ、オープントップ・ステアリングホイール、さらにオプションのオーリンズダンパーも含まれる。
また、現時点で現行モデルのクプラ・レオン・コンペティションTCRを所有するカスタマーに向けては「新しい仕様にアップグレードする可能性を提供する」と同時に、その予約プロセスは認定パートナーを通じて11月9日よりすでに開始されている。
また来季2024年に向けては、TCR規定を統括するWSCグループがFIA国際自動車連盟と協議し、2年目を迎える世界戦にFIA格式が付与される可能性が高まっており、開発中の共通ハイブリッド導入はさらに遅れる見込みながら、ヨーロッパを1戦のみとしたよりグローバルなカレンダー策定が見込まれている。
■来季に向けて“FIA”チャンピオンシップのステータスを狙う
「スケジュールを見れば非常に野心的なカレンダーであることがわかるだろう。地元ドライバーからも大きな関心が寄せられると信じている」と今季ツアー最終戦マカオを前に、連戦を実施した豪州の地元情報サイト『nine.com.au』に語ったのは、WSC会長を務めるマルチェロ・ロッティだ。
現時点で公式に確認されている2024年のTCRワールドツアー開催ラウンドは、11月のシドニー・モータースポーツパークとバサーストでのオーストラリア連戦のみだが、残りのラウンドはモロッコ、南北アメリカ大陸、中国、マカオ、そして欧州ではイタリアでの1戦のみになると見られている。
そして当初は今季導入予定だった共通ハイブリッドの“HTCR(仮称)”だが、開発を主導するWSCは昨年末にも「2024年への導入延期」を発表していた。しかし前出のロッティは、その期限が「さらに2025年以降に後ろ倒しされる」可能性を示唆した。
「新機軸のTCRワールドツアーでは、世界各国のさまざまなチャンピオンシップにジョイントする。こちらはハイブリッドなしで走り、もう一方はハイブリッドありで走ることはできないだろう?」と続けたロッティ。
「少なくとも選ばれたすべてのイベントにおいて、ハイブリッドであろうとなかろうと全面的に同じ技術レギュレーションを適用する方が良い。そして、これが昨年初めの我々のアイデアだった『OK、ハイブリッド導入は2024年に延期しよう』とね」
「個人的には100%正直に言いたいから、現状は『まだ未定』だ。現在、各イベントプロモーターと3年契約を結んでいる最中で、2024年からすぐに導入できるとは言い切れない。まずはカレンダー策定が最優先で、そこが安定したら……おそらくハイブリッドに着手する時期が来るだろう」
その2024年に予想されるのはFIAチャンピオンシップのステータス認証で、議論は進行中ではあるものの、ロッティもハイブリッドの遅れが影響を与える可能性があると認めた。
「来季に向け『FIA TCRワールドツアー』としてタイトルを掛けるべく、WSCとFIAの間で合意が得られるかどうかを話し合っている。FIAの目標はより環境に配慮したものにすることで、ハイブリッドは彼らにとって良い議論だ。彼らは明らかにこのキットをできるだけ早く使用したいと考えている」と明かしたロッティ。
「率直に言って、2024年にすべてを含めるのは困難だが、12月の第1週にはFIAを含めいくつかの会議がある。すべてが正しい方向に進んでいる場合、おそらくその時点で我々も何らかの決断を下すことになる。現時点では、ふたつの新規車種を国際的に展開することで、この分野を拡大できると考えている」
その1台が前述のクプラ・レオンVZ TCRを指し、もう1車種は南米大陸発のトヨタ・カローラGRS TCRだと見られ、アルゼンチンを拠点とするトヨタ・チーム・アルゼンティーナ(TTA)は、兼ねてより世界戦への挑戦に意欲を示している。
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