最も斬新で個性的なAMG
text:Richard Lane(リチャード・レーン)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
メルセデスAMG CLA 45 Sシューティングブレークは、マーケティング主導というより、鋭い感覚で誕生した特別なモデルという印象を受ける。
メルセデス・ベンツが3世代目のAクラスを発表したのは2013年。驚くほどの俊足を持つ、高価なAMG製のコンパクト・ステーションワゴンは、そこから始まった。
3代目Aクラスは、独創的だった2代目までとは異なり、より明確な2ボックスのハッチバック・スタイルを得ていた。パワートレインも前席足元へ斜めに搭載するのではなく、通常のFFモデルと同様、前輪車軸上にマウントされていた。
不安定さも指摘されたが、筆者は個性的なところが好きだった初代Aクラス。3代目は一般的な成り立ちへ変化すると同時に、新しいアイデアを具現化することにもつながった。
そのアイデアとは、ホットハッチ市場へ殴り込みを仕掛けるべく、AMGのAクラスを投入すること。メルセデス・ベンツと同様、AMGとしてもエントリーモデルになった。
誕生したAクラスのAMGはA 45。職人が手わざで組み立てる2.0Lターボは最高出力360psを獲得。世界を驚かせるパフォーマンスを誇った。実際、とんでもない1台だった。
同時にメルセデス・ベンツは、Aクラスのボディ展開も進めた。洗練されたサルーンのCLAが生まれ、実用性を高めたシューティングブレークも登場。ハッチバック以上に、強い所有欲を感じさせるモデルとなった。
この2つの要素が融合し、価格帯を問わず、最も斬新で個性的なAMGが誕生する。2015年に発表された、初代CLA 45 AMGシューティングブレークだ。
AMG C 63エステートをも凌ぐ瞬発力
筆者の目には、V型10気筒エンジン時代のBMW M5や、フェラーリFFを彷彿とさせるモデルに写った。速く、使いやすく、独創的。一方で、車内空間は限定的で、ハンドリングも表面的。見た目に匹敵する実力は、獲得できていなかった。
そんなCLA 45が2020年にモデルチェンジ。AMGが45を名乗るにふさわしい内容、パワーとテクノロジーを得ている。スタイリングも、新旧の違いは明らかだ。
新しいCLA 45 Sは、モータースポーツ・シーンから取ってきたような、フロントのカナードが目立つ。リアには、直径90mmもあるマフラーカッターが4本並ぶ。M139型と呼ばれる職人が組み立てた2.0Lエンジンは、180度向きを変えてフロントに収まる。
ターボチャージャーは運転席側に位置し、エンジン前方には空間が残る。空気特性を高めたデザインを与えるとともに、大きな吸気ダクトの装備も可能となった。
4気筒ターボのM139ユニットは、420psと50.9kg-mを発揮。0-100km/h加速は4.0秒をうたう。
この瞬発力は、カタログ数値上ではAMG製のV8ツインターボエンジンを積んだC 63エステートや、アウディRS4アバントをも凌ぐ。RS4の加速力といえば、本当に狂ったほどの勢いがあるのに。
このAMG CLA 45シューティングブレークは、C 63やRS4よりも軽量。それでも1705kgもあり、先代から90kgほど重くなっている。
増えた車重の原因の1つが、後輪を駆動するためのメカニズム。CLAが多くのコンポーネントを共有するホットハッチ、A 45 Sと同様に、電子制御クラッチがデフに内蔵されている。
スタイリング優先の実用性
極端な状態下では、すべてのトルクを前輪か後輪へ分配することが可能。もちろん前後50:50にもできる。ドライバーがクルマの挙動を選べる、多くのドライブ・モードも搭載する。
サーキットでは、最高の走りを楽しめる。同時に、最も穏やかなドライブ・モードを選択すれば、そんな荒々しさは微塵も感じられない。
前輪の間には、ハッチバックのA 45 Sと同じLSDを搭載。電動式パワーステアリングとデュアルクラッチAT、アダプティブ・サスペンションも譲り受ける。
インテリアも共通点が多い。明るく目を引くモニターと、Aクラスのように若干省コストを感じる部分に納得できれば、きっと気にいるはず。個人的にAMGなら、もっと本物の金属を使用してほしいところだ。
フロントには、AMG製のシリアスなバケットシートが2脚並ぶ。その結果リアシートの膝周りは、やや制限を受けている。頭上空間も、必要充分という程度。
ファミリー・ワゴンとして気になったのが、リアドア内張りの握り部分。乗り降りする際、足に引っかかる形状で突き出ているようだ。
スタイリング優先のステーションワゴンだから、荷室容量もリアハッチの開口部も、妥協はある。本格的な高性能ワゴン、フォルクスワーゲン・ゴルフRエステートなどには並ばない。そもそも、メルセデス・ベンツは初めから承知済みなはず。
実用性だけを見れば完全とはいえない。しかし、ハッチバックのA 45やサルーンのCLA 45の実用性を高めたと考えれば、不満はないだろう。長尺の荷物もちゃんと収容できる。
素直でありながら荒々しい二面性
走り始めると、AMG CLA 45 Sシューティングブレークの二面性が面白い。とても素直に走るお手本のようなクルマでありながら、目まいがするほどの激しいパフォーマンスを見せつけてくれる。
一般道を速めのペースで普通に運転している限り、ソフトなサスペンション設定なら、乗り心地は穏やか。ただし、強い衝撃でバンプストッパーに当たることはないものの、瞬間的に、ドキッとするほど落ち着きを失う場面がある。ボディとシャシーが別の方向へ動きたがるように。
ステアリングの反応は鮮明で、フィードバックも濃く、操縦性には優れる。乾燥路面でのグリップ力は凄まじいものの、濡れていれば、驚くほど簡単にトラクションを失わせることも可能だ。
1L当たり200psを超えるパワーを生み出すエンジンは、高速道路なら燃費は13.5km/Lに届く。巨大なターボを装備し、ピークパワーの高さやトルクの山がある割に、どこを走るにしても気難しいことはない。
ドライブ・モードを切り替える度に、AMG CLA 45 Sシューティングブレークの能力に並ぶライバルは、ほとんどいないと実感する。
A45 Sとホイールベースは同じながら、トレッド幅はCLAの方が少し広い。それでもコンパクトなボディは、狭い道でもストレスを感じさせないプロポーションを保っている。
エンジンはフロントタイヤの車軸より前方に搭載されているものの、位置はかなり低め。低い重心が、コーナリング時にボディをフラットに保てる要因の1つとなっている。
後輪駆動かと思わせるバランスの良さ
ボディが大きい分、CLAはハッチバックのA45 Sのように、手首をひねるだけで機敏に反応するような感覚は得られない。RS4が備える、フロントタイヤの圧倒的なスタビリティにも届いていない。しかし、リアタイヤへ依存したコーナリングも可能。
完璧なパワー・オーバーステアを引き出せるわけではないものの、まるで後輪駆動モデルかと思わせるような、素晴らしい瞬間を楽しむことも難しくない。バランスに優れ、想像以上に小気味いい。ウェットなら、なお一層。
AMG CLA 45 Sシューティングブレークは素晴らしい。でも、百点満点を与えられないことも確か。
テクノロジーが前面に出た操縦性は、人工的な感覚が強い。猛烈に鼻先を突っ込んでいくA45と、熟成され上質な動的性能を持つC 63エステートとの、間に位置するようでもある。
人間工学的な部分では、もう少し求めたい部分もある。価格も高い。より素晴らしい喜びを、より普通の、それほど特別ではないモデルでも得られるという、一抹の引っかかりが拭えない。
例えば、LSDを搭載したBMW 330iツーリングなどが、脳裏をよぎるのだった。
メルセデスAMG CLA 45 Sシューティングブレーク(英国仕様)のスペック
価格:5万9479ポンド(797万円)
全長:4688mm
全幅:1830mm
全高:1442mm
最高速度:249km/h(リミッター)
0-100km/h加速:4.0秒
燃費:11.6km/L
CO2排出量:191g/km
乾燥重量:1705kg
パワートレイン:直列4気筒1991ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:420ps/6750rpm
最大トルク:50.9kg-m/5000-5250rpm
ギアボックス:8速デュアルクラッチ・オートマティック
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