「ステランティス」新名称に驚き
text:Kenji Momota(桃田健史)
【画像】ステランティス傘下にはどんなブランドがある?【全14ブランドを代表車種とともに】 全180枚
editor:Taro Ueno(上野太朗)
プジョー・シトロエン(PSA)とフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)は2021年1月16日付で統合した。新会社の名称は、ステランティスである。
ラテン語「Stello」をベースとした、星が輝くイメージを造語化したものだという。
さすがに、2つを単純につなげて、PSAFCAと名乗るのは、投資家、社員、ユーザー、メディアなどに対してわかりづらい、と思うのが一般常識だろう。
ステランティスという名称とロゴは、正式合併に先立ち、2020年11月に公開されていた。
その時点で世界中の多くの人が、ステランティスというまったく新しい名前が登場したことに、かなりの驚きを持ったのではないか、と筆者は思う。
なぜならば、自動車産業界において近年、部品メーカーを除いて自動車メーカー名が完全に変わる事例がほとんどないからだ。新鮮という感覚をこえた大きな驚きである。
しかも、ステランティス傘下には合計14ものブランドがあり、それらはフランス、イタリア、アメリカが起源という極めて稀な状況である。
時代を振り返ってみると、こうした多国ブランドを抱えた企業としては、米フォードが90年代に設立した、プレミアム・オートモーティブ・グループ(PAG)があった……。
ステランティスとPAG何が違う?
スウェーデンのボルボ、英国のアストン マーティン、ベントレー、ランドローバー、ジャガーで構成されたPAGの本部は、米カリフォルニア州南部のオレンジカウンティにあった。
筆者はテキサス州内の自宅からPAG本部へ取材に出かけることが何度かあったが、当時の印象としては、フォードの経営思想やモノづくり精神、さらにフォード主導による部品共通性の強い推進力を感じた。
その中で、人員の最適化も進み、例えばランドローバーの車体やサスペンション開発者の多くが、モデルSの開発を控えていたテスラに転じた。結果的に、フォードはPAGの各ブランドの良さを生かしきれず、各ブランドは中国企業、インド企業、さらに投資会社へとバラ売りされた後、PAGは消滅した。
こうした経緯を見てきた筆者としては、FCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)の誕生当初から、同社がどのような事業戦略を進めるのか、とても興味があった。
蓋を開けてみると、フィアットらしさ、ジープらしさなど、各ブランドの個性を維持しながらFCAが中央コントロールセンターの役割を果たしたことが、日本での成功にみられるような高い実績を生んだ。
他方、PSA(プジョー・シトロエン)について、とくにシトロエンのブランド戦略の成功を、筆者は十分に予測できなかった。
単なる部品共有性にとどまらず
筆者にとってのシトロエンは、若き日に触れたハイドロニューマチックサス採用のCXだ。親類からこの機構の特殊性を聞き、またその未来的なボディフォルムに圧倒された。
その後、筆者自身が世界各地で業務としてシトロエンに触れるようになったが、ブランドとしての方向性が揺らいでいるとの印象を長らく持っていた。
それが近年になり、いわゆるライフスタイル系ブランドとしての再構築が時代の流れにマッチし、直近ではベルランゴのヒットを生んだ。またプジョーも、206ブームから20年近くが経ち、今後は電動化戦略で新たなるムーブメントを築こうとしている。
このように、ブランド戦略という文脈でみると、FCAとPSAそれぞれが、現時点の事業が上昇気流にのっている。
そのうえで、ステランティスとなって傘下ブランドが倍増しても、それぞれのブランドがユーザーのライフスタイルに密着し、魅力ある唯一無二の存在であり続けることは、近年のFCAとPSAの動きを見る限り、十分に可能だと思う。
むろん、車体、電動パワートレイン、通信のコネクティビティ、またADAS(先進的運転支援システム)など開発投資が大きい分野については、部品共通性を高めることになるだろう。
見方を変えると……。
8位と9位が合併 gm抜いて4位へ
自動車産業全体として、クルマのベースとなる技術での差別化が難しいなか、各ブランドを時代変化にあわせて巧みに演出するポテンシャルを秘めるステランティスは、企業間アライアンスを重視する他の大手メーカーでは想定できない、飛躍の可能性を持っているのかもしれない。
2019年での販売台数で見ると、トップは独フォルクスワーゲン・グループ(フォルクスワーゲン、アウディ、セアト、スコダ、ポルシェ、ランボルギーニ、ベントレー)で1097万台。
つづく2位はトヨタで、3位:ルノー日産三菱アライアンス、4位:米gm、5位:韓国ヒュンダイ、6位:フォード、7位:ホンダ、そして8位がFCA、9位がPSAだった。
こうした8位と9位が合併したことで、gmを抜いて4位となるステランティス。
ただし、これはあくまでも大量生産・大量消費を前提とした順位づけに過ぎない。近未来の世界市場は、環境対応でのグリーン化や、デジタル化をフル活用するクルマの利活用が重視されることが現時点でも十分に予想できる。
つまり、自動車メーカーに求められるのは「数の論理」ではなく、新たなるサービス提供やブランド価値に強化における「収益性の向上」だ。
そうした中、ブランドの玉手箱であるステランティスが、どのようなブランドコントロール戦略を描くのか? 今後の動向を楽しみに見守りたい。
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