イマドキの若者のクルマへの考え方、付き合い方は昭和生まれの世代とは大きく変わっていると言われている。そこで、昭和感漂う懐かしの自動車用語がどこまでZ世代と言われるイマドキの若者に通用するものかを現役大学生ハルオくん(愛車:スズキ ハスラー/兄と共有)に直撃取材。すると想定外の迷回答が返ってきた……。
文/公文裕介、写真/日産、ホンダ、写真AC
オヤジ確定!? Z世代にはまったく響かなかった自動車用語とは?
使わなくなったから知らない…というわけでもないらしい~メカニズム編
■V6(エンジン)
「ブイシックスってまだ活動してましたっけ? たしかTOKIOよりも後輩だった気もしますが……」と、自動車用語と言っているにもかかわらず、ボケではなくまさかの本気の回答……。
かつては大型排気量エンジンの登竜門的位置付けだったV型6気筒エンジン。ただ今のご時世、環境問題の観点から絶滅危惧種に。スモールエンジンにとってかわられた感は否めず、さらに今後はモーター時代に突入していくだけに、Z世代にとっては馴染みのない用語であることは間違いないようだ。あの爽快な吹け上がり感はもはや……。
V6エンジンといえばスポーツカーの証と、オジさん世代はV6の言葉の響きに心躍らせられたものだが、Z世代には……。とはいえ、GT-Rはさすがのハルオくんも知っていた
■タコメーター
「海にいる蛸がどれだけいるかがわかる魚群探知機的なものですかね? でも、クルマとは関係なさそうですよね」。魚群探知機も蛸専用は多分ないだろう……。
タコメーターとは、エンジン回転数を表示するメーター。そもそもAT限定免許でも恥ずかしくないと思っている若者たちはトップ・エンドの回転数を示すタコメーターの存在すら認識しいないのかもしれない。
ちなみに、タコとはギリシャ語で速度を意味する「タコス」からきているなんていうちょっとした豆知識もZ世代の心にはまったく響かなかった……。
■チョーク
「チョークは学校の黒板に書くものしか知りません……」。
これに関しては、1970年代からクルマのオートチョーク化が進み、オジサン世代でも触ったことがない人も多いため、仕方がないかも。
チョークとは、エンジンが冷えている際の始動時に、燃焼させる混合気の空熱比を一時的に高める機構で、キャブレターを採用するガソリン車に付随するものだった。エンジンが始動して走り出す時に、チョークを元に戻さなければならないが、忘れてそのまま走ってしまうこともよくあった。ただし、キャブレター採用率の高いオートバイや、農業機器などでは現役として活躍している。
なんていうチョークに関する説明をしたところでハルオくんの心にはまったく響かないどころか、理解すらしてもらえなかった。
特殊な運転操作には興味なし!? ドラテク編
■半クラ
「根暗よりも半分だけ明るいこととか?」というまさかの珍回答。半分だけ明るいって……。
これもMT車に関わる用語だけに知らなくて当然か。クラッチペダルを踏み込んだ、エンジンからタイヤへ動力が伝わらない状態から、ペダルを少しだけ戻して動力をタイヤにスムーズに伝えるのに必要な動作。
坂道発進ではマストのテクニックと言えるが、そもそもハルオくんは教習所を卒業して以来、クラッチペダルを使用したことがないとのこと。周りの友人も然りだという。
■ドリフト
「これは知ってます、知ってます。ずっと家族で見てました、ドリフの大爆笑。テレビの番組とは違いますか? あっ、クルマ用語だから違いますよね」。多分Z世代だと、ドリフの大爆笑は生放送ではなく、再放送だった可能性も……。とはいえ、Z世代にも知られているドリフの偉大さを再認識!
ドリフトとは、車両の進行方向に対して意図的に横滑走状態にして素早くカーブを回るための方法。また速さを競わない見世物ショーとしてかつては「D1グランプリ」が人気を博した。
と、ここまで説明したところ、「あー、思い出しました。「ワイルドスピード」のやつですね!」という回答が返ってきたことは救いか……。「でも、自分ではやりたいと思わないですね」
その昔は峠にはタイヤを滑らした後、いわゆるブラックマークが残っている道路が至る所で見られたが、最近はそれも少なくなった
■カウンター(カウンターステアリング)
「カウンターで! とか昨日も使いましたよ。私は面と向かって座るより、カウンター席のほうが落ち着きます」。まぁ、カウンターにもいろいろ意味があるわけで……。
クルマ乗りがカウンターと聞いたらカウンターステアを思い起こすのだが。カウンターとは、コーナリング時に旋回方向と逆方向にハンドルを切る操作方法。高速走行でコーナリングする際に、スピン回避のために用いられるドラテクのひとつ。逆ハンを切る、カウンターを当てるとも言われる。
と、ここまで説明したところ、「あー、思い出しました。「ワイルドスピード」で観たやつでいね!」と、またしても「ワイルドスピード」つながりだった。「でも、危ない運転はしたくないです」とのこと。
そりゃそうだよな…と納得もできる絶滅危惧用語~番外編
■エンスト
「建物のエントランスみたいなとこですか? 違う違う、教習所で使ったことある言葉でした。エンジンストップするやつ」。これはなんとか正解。
「AT車限定免許なんて恥ずかしい!」なんて言ってしまうのは今は昔。イマドキの若者にとってはMT車の存在自体がガラパゴスらしい。ということで、今のクルマは自動的にエンジンストップすることはあっても、クラッチ操作をミスして止まるようなことはないというのが常識。それを考えるとエンストの意味をすぐに思い出せないのも当然と言えば当然か……。
教習所では慣れないクラッチワークで、連続エンストに苦しめられた、坂道でエンストしてヒヤヒヤした思い出も、今では懐かしい!
■シャコタン
「車庫、駐車場に停まっている単車のことですか?」。たしかに間違いではないかもしれない。車高の低いクルマのことを指すシャコタン=「車高短」は、昔はクルマ好きなら誰もが知っていた用語だった。
かつては、見た目がスタイリッシュになるとか、車高が低くなると安定感が良くなるといった理由から、ショックアブソーバーとスプリングを交換して車高調をするのが人気だったものだが……。
そういえば、最近は街を暴走するシャコタン車を見かけることもほとんどなくなった。
ひと昔前はこんなシャコタン車はよく見かけたものだが、今となってはお目にかかることが難しい状態に……
■セコハン
「洋服じゃなくてクルマですよね。だったら中古車?」。やっとまともな回答が!
セコハンとは「Second hand」の和製略語で古物、中古品として昔はよく使われていた。クルマ好きにとっても今では死語となっている言葉かもしれない。
ただし、ファッション用語としては比較的浸透している用語。ハルオくんはヴィンテージのジーンズなどに興味があったことから、Second hand→中古車と、思考回路がつながったらしい。
今回は一部のカー用語を実際に今のZ世代にクイズ形式で投げかけてみたのだが、チンプンカンプンな答えが続出。ジェネレーションギャップを大いに感じる結果となった。まぁ、それも無理はない、街中で過去の旧車を目にすることもほぼなく、そもそもクルマに関心が薄い友達も多いとのこと。さみしいかぎりだ……。これは「ワイルドスピード」のさらなるヒットを祈るしかない!?
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