もくじ
ー セアトを導く、ミラノ生まれの50歳
ー 9:15 AM デ・メオがスペインに惹かれるわけ
ー 決断は、意外にも直感だった
ー 9:45 AM 適切かつ極めて重要な貢献
ー 10:30 AM ミレニアル世代への戦略
ー 11:30 AM ファクトリー4.0とは何か
ー 12:30 PM デザイン部門ボスとランチ
ー 1:30 PM 副社長との打ち合わせに潜入
ー 2:30 PM 「誇り」と「プレミアム」は無縁だ
ー 3:30 PM 大きな勇気こそ大切である
「確かなルーツがなければ、夢は生まれない」 アバルト本社訪問
セアトを導く、ミラノ生まれの50歳
雨が降っている。本当に土砂降りだ。バルセロナ郊外のセアト本社に向かうひとたちは皆、顔を合わせるたびにこの季節はずれの大雨をお詫びしてくれる。今日だけは、英国の天気をからかったスペインのジョークは通用しない。
われわれは巨大なセアトのマルトレル工場に向かっている。最終目的地は、6階建ての管理棟ビル最上階にある役員室だ。すっきりとした現代的な白いオフィスで大きな壁画がかかっている。欧州で最も成長著しい自動車メーカーにはうってつけだ。購入層は他メーカーより明らかに10歳若いという。
われわれは1日かけて、フォルクスワーゲン・グループのお荷物、いやそれは昔の話で今ではすっかり立派になったスペインのメーカーの秘密を探ろうとやってきたのだ。特に社長になって2年のルッカ・デ・メオのことを。
彼はミラノ生まれの50歳で、この3月に会社は創立以来最高の業績を達成した。
9:15 AM デ・メオがスペインに惹かれるわけ
マルトレルの最上階にあるデ・メオのオフィスには、少なくとも1ダースの人間が座れる巨大なテーブルがある。レクサスにいた彼に初めて会ってから20年たつ。服装がちょっとフォーマルになり、白髪も目立つようになったが、相手をリラックスさせる雰囲気はそのままだ。
当時、彼は30歳で出世頭の野心家だったが、会社は彼の実力を十分理解していなかった。彼はひと当たりが良く、つねに活動的で、自動車ビジネスを深く愛し、与えられた仕事に没頭するビジネスマンだ。
ほどなくして彼はセルジオ・マルキオーネ率いるフィアット・グループに戻り、首尾よくランチア、アバルト、アルファ・ロメオの担当になった。これは彼がフォルクスワーゲン・ブランドとそのグループ双方の営業部長になる2009年まで続く。
その後、アウディの販売と営業のボスになり、2015年に好業績を上げたユルゲン・スタックマンの後任としてセアトに移った。
それまで12カ国に暮らしたことのあったデ・メオは、どうしてスペインに引きつけられたのか?
決断は、意外にも直感だった
そのころ、フォルクスワーゲンは30億ポンド(4460億円)をセアトに投資する予定だと発表した。悪い話であるはずがない。この投資には4つのニュー・モデル(レオンとアテカの新型、新モデルのイビザとアローナ)が含まれていた。セアト始まって以来、最大の新車攻勢だ。
「わたしのような立場なら、仕事を変わる場合、理性的な判断をするとお思いかもしれませんが、わたしは直観的に本能で決めたんですよ」とデ・メオは言う。
「もうすでに、セアトにはユルゲンが築き上げた立派な基礎がありました。でも、いま必要とされているのはビジネスを磨き上げることで、それには少しばかり自信がありました。セアトに何が必要かを理解することは比較的簡単です。また、組織を動かしている80~90人を理解するのもそんなに難しくありませんね」
「難しいのは、セアトが自動車の大衆化に貢献した1950年代、60年代の状態にセアトを戻すことなんです。あと、輸出市場での状況を好転させることですね」
9:45 AM 適切かつ極めて重要な貢献
営業のグローバル・ヘッドであるスーザン・フランツが到着する。11月中旬にバルセロナで開催されるスマート・シティ・エキスポ・ワールド・コングレスにセアトはどのように貢献するか、詳細を一通り説明してくれる。
最近、バルセロナは自身を技術のハブとして効果的に位置付けている。そして、1万5000人の雇用を生み出しているセアトの貢献は、適切かつ極めて重要である。
セアトにはクルマのコネクティビティを先導しているという別の側面もある。既にセアトは、欧州でのスマートフォンのシームレスな接続性に関して先頭に立っており、まもなくいくつかのモデルでアマゾン・アレクサの音声アシスタント機能が使えるようになる。良し悪しを検討しているところだ。
10:30 AM ミレニアル世代への戦略
若い4人組の社員が部屋にぞろぞろ入ってきた。それぞれ別々の部門にいる。彼らはセアトの「タレント・サークル」のメンバーだ、会社を発展させることについて徹底的に考え抜くことがミッション。
デ・メオは定期的にこのようなグループと面会している。今日のお題はミレニアル世代、つまりクルマが好きじゃないと噂されるひとたちへのアピールだ。
スクリーンを使ったプレゼンと(デ・メオが奨励している英語での)スピーチで、彼らは「セアト・エクスピアリアンス・ボックス」なるものを提案した。
2日間のアクティビティ・パッケージで49.9ユーロ。クルマとホテル付き、それに目的地のイベントを選ぶことができる。
アイデアは生煮えで、売れる可能性も高くないとすぐ判明したが、同様の計画を「クプラ・サーキット・デー・エクスピアリアンス」パッケージに転用してはどうかという話になった。デ・メオはこのアイデアがアウディでも上手くいったことを思い出し、ミーティングは前向きな結論で終了した。
11:30 AM ファクトリー4.0とは何か
われわれはアイボリーのタワーから降りて、マルトレルの敷地をドライブする(雨は降り続いている)。敷地の狭い他の欧州の工場と比べ、何と機能的にレイアウトされていることだろう。
1993年にできたばかりで稼働率は高いが(昨年の生産台数は44万9000台)とても整然としている(キャパシティは公称50万0台)。デ・メオによればこれは意図的であり、急激に拡大するのは危険だということだ。
今回訪問したこの工場をセアトは自慢げにファクトリー4.0と呼ぶ。ホディの製造は高度に機械化されており、オペレータがスクリーンと制御盤で主要な機能を操作し、実際の作業者には身に着けたスマート・ウォッチでその情報が伝えられる。
技術に疎い頭(わたしのだ)には目が回りそうだが、要は、この第4世代工場ではビッグデータ解析を駆使して複雑な問題を予見し、問題が顕在化するのを未然に防いでいるのだ。
例えば、ロボットがコストのかかる修理を必要とする前に20台まとめてメンテナンスを行う、というような。他のフォルクスワーゲン・グループの工場に先駆けてマルトレルに導入されたので、セアトは特にご自慢のようだ。
12:30 PM デザイン部門ボスとランチ
VIPクラブでアレジャンドロ・メソネロ-ロマノスとランチ(素晴らしい食事だ)をともにする。2012年からセアトのデザインのボスを務めている。
彼はセアト・ブランドをエセフォルクスワーゲン的なありふれたクルマから、現在の特色ある訴求力の高いデザインへと引き上げた。
彼の主導のもと、デザイン・スタジオのスタッフは2倍の180人に増え、デジタル・デザイン部門も大幅に拡大した結果、技術者との共同作業はずっと密接なものになった。
マルトレル工場では新しいアウディA1を製造する。マルトレルの名声を高める重要な一里塚だ。
われわれはクルマの話をする。メソネロ-ロマノスは現在88年のポルシェ911を所有している。その前にはフェラーリ308GTBと59年のアルファ・ジュリエッタを持っていた。
クルマの基本的特性を示しながら、彼はクルマの外観デザインは人間の体のエコーだ言う。攻撃的なデザインは好みではないようだ。歴史上の偉大なクルマを思い浮かべてください、明らかに攻撃的なデザインのクルマなんてほとんどありませんよと彼は言う。
1:30 PM 副社長との打ち合わせに潜入
われわれはデ・メオのオフィスに戻り、販売/営業担当の副社長ウェイン・グリフィスと社長の打ち合わせを盗み聞きする。
グリフィスは英国人だが「欧州人でいたいので」ドイツ国籍を取得した。アルジェリアでの販売の話になる。厳しい輸入制限が施行される前には、2万台を売り上げたが、今では1万台(一部は現地組み立て)に逆戻り。
だが、1万5000台は達成可能だと見ている。次回のアルジェリアへの輸出車種をレオンにするかアローナにするか議論し、結論は後者になった。
セアトのトータルのセールスは好調のようで、スペインと英国では大きく伸びているが、グリフィスもデ・メオも浮かぬ顔だ。過去の調査ではフランスとイタリアではまだ需要は弱く、さらに悪いことには欧州以外での売り上げはたったの15%だ。デ・メオとグリフィスは30%を目指すこととし、これを中期目標にした。
2:30 PM 「誇り」と「プレミアム」は無縁だ
われわれは再び出かける。次はセアト・スポーツ。ウサギの巣穴のように整然とつながったワークショップだ。ここでは、ボディの準備はエンジンの組み立て、エグゾースト・システムなどの製作や最終整備とは別に行っている。
デ・メオはこの場所をセアト魂(誇りを持つのにプレミアムである必要はない)のるつぼだと考えており、以前アバルトで行ったのと同じように、急いでセアト・スポーツのテコ入れをしたいと考えている。
そこで昔のアバルトの同僚、アントニオ・ラバテに来てもらい、長年のチーフであるジェーム・プークの支援に加わってもらった。「アントニオは中身の濃い仕事をしてくれました」とデ・メオは言う。「わたしがパワーポイントとスピーチにかまけている間に……」
ここでは、レオン・サイズのコンペティション・セダンの製作に特化しており(同じ建物にはレーシング・ゴルフも置いてあった)、今までに450の最新モデルを製作した。最低でも1台平均10万ユーロ(1,330万円)することを考えると、悪くない商売だ。
3:30 PM 大きな勇気こそ大切である
次にデ・メオと車で向かったのは敷地の奥にある秘密の場所、R&D本社だ。非公開のデザイン・モデルが置いてあるメソネロ・ロマノスのデザイン・スタジオにもほど近い。
部屋に入り、ひと懐っこいマシアス・ラーベ(R&Dのボスだ)と握手するより早く、わたしは厳かな感覚にとらわれた。最繁期には2000人を数える研究員にとって、2017年はすでに遠い過去だ。彼らは2020年のずっと先を見ている。
「これからの6、7年がもっともチャレンジングな時期ですね」とラーベはいう。「全く新しいモデルを最低でも5車種、発表します。それと既存車種のモデル・チェンジ、さらにCO2削減の基準達成、加えて電動化への対応です。たくさんあります」。一瞬くじけそうになるが、彼は有能な技術者らしく落ち着いて話す。
わたしはまた頭がくらくらする。バーチャル・リアリティのヘッドセットをかぶって、もうすぐ発売されるセアトの新型モデルに座りインテリア・トリムの間を行ったり来たりする。ついで本物のインテリアに座ってアマゾン・アレクサのデモを楽しむ。若い顧客から強い要望があるそうだが、今回初めてその理由がわかった。
もう時間切れだ。空港への道路は混雑し始めている。わたしの頭はもうオーバーフローしているが、ラーベが現在の業務を要領よく数字でまとめてくれたおかげで、自動車メーカーが今後どのように進むのか、おぼろげながら理解できた。
345のプロジェクト、82種のプロトタイプ、270万時間のエンジン開発に130万kmのテスト走行だ。これからの自動車メーカーには、勤勉や才能だけでなく大きな勇気も必要だということが、今日、はっきりとわかった。
少なくとも、ルッカ・デ・メオの率いるセアトは、紛れもなくそれを持っている。
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