新型コロナウイルス禍は予断を許さない状況だが、2020年6月に入り自動車業界はフルモデルチェンジ車、ブランニューモデルを合わせ注目のニューカーが続々と登場している。
そのなかでも2020年6月10日に発表発売となった軽クロスオーバーのダイハツタフトと、24日に発表(発売は6月30日から)したコンパクトSUVの日産キックスは「以前とは違う車格で車名が復活する」というケースとなっている。
タフトの期待度も聞いてみた!!! ハスラー ルークス N-BOX…いま「推し」の軽はどれ!!?
車名が復活するケースは珍しくないが、当記事では「車格ジャンル違いで車名が復活した車種」を振り返っていく。
文:永田恵一/写真:DAIHATSU、NISSAN、HONDA、SUBARU
【画像ギャラリー】36年ぶりに車名が復活したダイハツタフトと8年ぶりに復活した日産キックスは旋風を巻き起こせるか?
ダイハツタフト
初代:1974~1984年(小型車)
2代目(現行):2020年~(軽自動車)
初代タフトはコンパクトなボディながら本格的な悪路走破性を備えたダイハツのクロカンとして1974年にデビュー。今見ると味のあるデザイン
1974年登場の初代タフトは1998年に施行された現行の軽自動車の規格を基準にすれば、軽自動車より大きなボディサイズを持つという現在のジムニーシエラのような本格的なコンパクトクロカンSUVである。
クルマの成り立ちはラダーフレームのボディに四輪リーフリジットサスペンション、ボディは幌やFRP製のレジントップなどを持つ2ドアで、エンジンは1L、4気筒ガソリンでスタートし、後にダイハツ製ディーゼルやトヨタ製1.6Lガソリンを追加、駆動方式は4速MT+副変速機付パートタイム4WDのみだった。
またタフトは1980年からトヨタにブリザードの車名でOEM供給もされ(こちらはトヨタ製2.2L、4気筒ディーゼルのみを搭載)、1984年に車名をラガーに変え、タフトは一度絶版となった。
2020年6月に登場した2代目タフトはスズキハスラーが直接的なライバル車かつ、キャストアクティバの実質的な後継車となる軽クロスオーバーとして36年ぶりに復活。
クルマの成り立ちはダイハツ最新のDNGAコンセプトに基づくプラットホームやパワートレーンというオーソドックスなものだが、急な下り坂に対するブレーキ制御はないものの滑りやすい路面での駆動力を高めるグリップサポート制御や190mmという十分な最低地上高を備え、クロスオーバーとしては十分以上の悪路走破性を確保。
36年ぶりにタフトの車名が復活。小型車から軽SUVになったが、遊び心が満点というコンセプトはクラスが変わっても不変
また全グレードに大型ガラスルーフを装備し、自動ブレーキ&運転支援システム周囲の情報を収集するステレオカメラの改良により夜間の歩行者にも対応するようになった。
さらに先行者追従型のアダプティブクルーズコントロールも停止までの対応に加え、電動パーキングブレーキの採用により停止状態の保持機能を備えるなど、着実な進化を遂げている。
そのわりに価格も約135万円から約173万円とリーズナブルと全体的な競争力は高く、ハスラーとの勝負にも注目したい。
日産キックス
XIX(1994年東京モーターショー:コンセプトカー)
KYXX(1998年パリサロン:コンセプトカー)
KIX(2008~2012年:軽自動車)
KICKS(2020年~:小型車)
リアがピックアップのようになっているが、ラシーンを彷彿とさせるボクシーなエクステリアデザインが特徴的なコンセプトカーのXIX(キックス)
キックスはもともと1995年の東京モーターショーと1998年のパリモーターショーに出展されたコンセプトカーに使われた車名で、前者は4ドアセダンのリアデッキをピックアップトラックのようにしたもの、後者は将来のコンパクトカー像を示唆したモデルだった。
市販車にキックスの車名が初めて使われたのは2008年のことで、初代キックスは2代目パジェロミニのOEMとして2012年まで販売された。
2020年6月に登場した2代目キックスは2016年のブラジルを皮切りに北米や中国といった世界各国で販売されるオーソドックスなコンパクトSUVで、日本へはビッグマイナーチェンジを施したタイ国で生産されるモデルが導入される。
1998年のパリサロンに出展されたコンセプトカーのKYXX(キックス)。日産のコンパクトカーの未来を示唆したコンセプトカーだった
2代目キックスの日本仕様は1.2L、3気筒ガソリンエンジンに129馬力の駆動用モーター組み合わせたミドルハイトミニバンのセレナに近い動力性能を持つ2モーターシリーズハイブリッドのe-POWERのみ。
運転支援システムプロパイロットも周囲の情報収集源に単眼カメラに加えミリ波レーダーも持つなど、日本で販売するクルマ相応のアップデートを受けている。
4WDや安価なガソリン車がないというバリエーションの少なさは事実にせよ、日産の登録車としては久々の新型車となる2代目キックスが日産復活の狼煙となることを期待したい。
ちなみに、2種類のショーモデルと2種類の市販車の合計4車種存在する日産キックス。響きは同じながら、XIX→KYXX→KIX→KICKSとすべて綴りが違うというのは世界的にも珍しい。
2008年に軽自動車のラインナップ拡張のために2代目パジェロのOEMをKIX(キックス)という車名で販売。今でも復活に期待する人は多い
ジュークの後継モデルとして2020年6月30日から販売を開始したKICKS(キックス)。デビュー時はe-POWERのみで、後にガソリンモデルを追加予定
ホンダインサイト
初代(1999~2006:2シーターファストバッククーペ)
2代目(2009~2014年:5ドアハッチバック)
3代目(2018年~:4ドアセダン)
徹底した軽量化、エアロダイナミクスの追求により、当時実燃費で世界最高の称号を得た初代インサイトは2シーターのファストバッククーペ
1999年登場の初代インサイトはかつてのCR-Xの元々の姿を思い出せる、空気抵抗低減に注力した2人乗りかつ軽量なアルミ製ボディに、アシスト型の比較的簡易なハイブリッドとなるホンダIMAを組み合わせた燃費追求のコンセプトカーの市販車版的な存在として登場。
燃費は最終モデルの当時の10.15モードで36.0km/Lと技術レベルは高かったが、実用性や普遍性はないクルマだっただけに、販売は振るわず2006年に絶版となった。
2代目インサイトは2代目フィットをベースに1.3LのホンダIMAを搭載した5ナンバーサイズの5ドアセダンとなるハイブリッド専用車として2009年2月に復活。
ハイブリッド王国トヨタに対抗すべく、安価で手にできるハイブリッドということで人気となった2代目は5ドアハッチバックスタイル
コンセプトの柱に「安価なハイブリッドカー」ということもあったのもあり、価格は189万円からと2代目インサイトの登場に販売されていた2代目プリウスに比べれば確かに安価で、発売2ヶ月後の2009年4月の月間販売台数ランキングでは1位に躍り出た。
しかし、2009年5月に登場した3代目プリウスは2008年に起きたリーマンショックによる不景気や2代目インサイトの価格を考慮し、車格や装備内容を考えれば2代目インサイトよりさらに安い205万円からという価格を掲げた。
結果3代目プリウスは発売から1カ月で約18万台という空前の受注を集め、2代目インサイトは一気に陰が薄くなってしまった。
2代目インサイトは2011年に1.5LのホンダIMAを追加するなどのマイナーチェンジを行ったものの、3代目プリウスの登場以降浮上することはなく、2014年に再び絶版となった。
月間販売台数ランキングでは1位になったクルマが後継車なく約5年で絶版になってしまうというのは日本車史上極めてマレな例だった。
二世代で終わりかと思われたインサイトだが、2018年12月に今度は現行シビックにエンジン直結駆動モード付き1.5L2モーターシリーズハイブリッドを搭載した、ハイブリッド専用の上級車的存在として再び復活。
3代目はハッチバックのように見えるが、トランクが独立した4ドアセダンとして登場。エクステリアデザインはカッコいいと評判。2020年5月にマイチェン
ミドルクラスに車格が上がった3代目インサイトも悪いクルマではないが、カーナビなどフル装備なのを考慮するにしても最近マイナーチェンジされた最新モデルで価格は約336万円からと車格に対し高価で、登場当初から販売低迷が続いている。
インサイトは初代モデルからハイブリッド専用車ということこそ一貫しているが、ボディ形態、クラスとも違う。3代目モデルも「いつ絶版になってもおかしくない」というのが率直な印象だ。
ホンダクロスロード
初代(1993~1998年:ローバーディスカバリーのOEM)
2代目(2007~2010年:クロスオーバーSUV)
ホンダは1990年代にクロカンを持たなかったためジャズ(ミュー)、ホライゾン(ビッグホーン)、クロスロード(ディスカバリー)をOEMで販売
1993年登場の初代クロスロードは当時バブル崩壊や現代のミニバンやSUVといったRVブームに乗り遅れたためピンチに陥っていたホンダが、つなぎのような意味合いでこの頃資本提携を結んでいた英国ローバー社のSUVであるディスカバリーをOEMとしたモデルだった。
2007年に復活した2代目クロスロードはミドルSUVのCR-Vが前年の2006年に登場した3代目モデルからややプレミアムな路線に移行したこともあり、初代CR-Vにも近いライトなSUVとして登場。
スクエアなボディに3列シートというコンセプトは今の時代なら絶対にウケているハズ。登場する時期が早すぎた2代目クロスロード
7人乗り3列シートとなる点やハマーを思わせるスタイルが大きな特徴で、機能面は評価の高かった2代目ストリームに近かったこともあり走行性能などは申し分なく、価格もリーズナブルと今になると文句は少ないクルマだった。
しかしプロモーションがうまくいかなかったせいのか販売はパッとせず、3年後の2010年に絶版となるという短命に終わってしまった。
スバルジャスティ
初代(1884~1994:スバルオリジナルの3/5ドアハッチバック)
現行(2016年~:OEMのハイトワゴン)
ジャスティはスバルのコンパクトカーとして欧州でも販売されていた。世界初のCVTであるECVTを搭載したクルマ史に名を残す1台
初代ジャスティは当時スバルの軽自動車において主力だったレックスのボディや、エンジンをレックスの2気筒から1Lの3気筒に拡大するといった成り立ちのリッタカーとして1984年に登場した。
という成り立ちだけに初代ジャスティの特徴はあまりないが、1987年に世界初の量産CVTとなるECVT搭載車を追加。
初物だっただけに信頼性&耐久性やフィーリングなどに問題はあったが、ECVTは初代ジャスティが残した最大にして唯一の功績だったことは事実である。
初代ジャスティは1994年に国内販売は終了するのだが(10年間販売されたことの方が驚きだ)、海外向けはスズキカルタスの2代目モデル、スズキスイフトの初代モデル、ダイハツタフトブーンの初代モデルのOEMとして2011年まで販売が続いた。
トヨタタンク/ルーミー、ダイハツトールと兄弟車となる現行ジャスティ。熱いファンが多いスバルではOEM車は販売面で苦戦
2016年に復活した日本向けとしては2代目モデルとなる現行ジャスティはトヨタタンク&ルーミーとダイハツトールのOEMとなるプチバンだ。
昔を知っている人にとっては残念だろうが、軽自動車、コンパクトカーがOEMゆえ、存在感が薄いのは仕方がない。
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みんなのコメント
だから日本専売時のポリシーで作られていないのに、名前だけ拝借して売ってるのが多い。
スカイラインなんかは典型例。元のコンセプトとは全く違うものになってる。
以前のオープンのソアラとか、今のアコードやシビックもそういう路線。
何しろ日本のシェアは世界で1割程度しかないのだから、その志向はほぼ無視されている。
だから日本人が抱くイメージと違っても仕方ないのです。