現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 実際に試乗して考えた。スポーツカーが21世紀に大進化を遂げたのはなぜか?

ここから本文です

実際に試乗して考えた。スポーツカーが21世紀に大進化を遂げたのはなぜか?

掲載 更新 2
実際に試乗して考えた。スポーツカーが21世紀に大進化を遂げたのはなぜか?

筆者は、輸入車を専門に取り扱うYoutubeチャンネル「外車王TV」の試乗インプレッション動画に出演している。幸運なことに、この動画の撮影のために1980年代~2000年年代のクルマを中心に、およそ20台の輸入車のステアリングを握ることができた。

これまでの試乗を振り返ってみて、強く感じることがある。

1000馬力は真実か?ケーニッヒ フェラーリ、それはバブルの忘れ形見

それは、「21世紀へと突入したことを境に、クルマの性能が段違いに向上している」ということだ。

なぜ、この時期にクルマの性能は大幅に向上したのか?今回はその真相について考察してみたいと思う。

■ボディ剛性と足回りの大幅な進歩についての考察

ひとつの大きなトピックとして「ボディ剛性が大幅に向上したこと」が挙げられる。

フェラーリF355ベルリネッタ(1994年)および後継モデルにあたる360モデナ(1999年)に試乗する機会に恵まれた。360モデナのボディ剛性の向上には、目を見張るものがあった。

360モデナには、段差やうねりの激しい路面でも運転が楽しめるほどの安心感がある。この安心感たっぷりのボディ剛性には、車体に使われる素材の進化が影響している。

当時、ボディに高張力鋼板やアルミニウムが採用されるようになり、軽量・高剛性なクルマが登場しつつあった。

このように、クルマの進化の裏側には、採用される素材の進化や、その素材を加工する製造機械の進化によって支えらている。人類の英知と工業技術の進歩が、クルマの進化にフィードバックされているのである。

また、ボディ剛性の向上は、サスペンションの設計思想の変化も起こしている。

BMW・M3におけるE36型からE46型への進化は、その最たる例であると言っても過言ではない。E36型では、ボディのねじれとサスペンションの動きが一体となり、コーナリングフォースを生み出すような挙動を生み出していた。これに対して、E46型以降のモデルは、ボディはがっちりと固定され、サスペンションジオメトリーを設計時の理想的な状態を維持するように設計されている。

ボディ剛性の進化により、サスペンションもより理想形を追求されよりスタビリティに優れたクルマが登場してきたのだ。

■効率化されたエンジンの出力向上についての考察

フェラーリ・360モデナ(1999年)のV8エンジンは、先代にあたるF355(1994年)と同じエンジンをベースにしている。にも関わらず、実際に試乗してみると、出力特性がまったく異なっている点がかなり印象的であった。低速トルクの厚みが圧倒的に増しており、まるで別物のエンジンのように感じられたのだ。

この時代は、エンジンの高出力化のために、世界の各自動車メーカーで可変機構が採用されるようになっていた。

ホンダの可変バルブタイミング機構「VTEC」をはじめ、BMWは吸気と排気のバルブタイミングを無段階で調整する「ダブルVANOS」を開発。ポルシェの「バリオカム」は、カムシャフトの位相を変化させる仕組みだ。フェラーリも、吸気管長の切替やカムシャフトの作用位相切替の機構を進化させることで、360モデナの出力アップを果たしているのだ。

この可変機構は、当初、機械的な制御であった。しかし、電子制御の技術が進化すると、コンピューター制御も加わるようになり、さらなる高出力化と省燃費化に貢献した。

■高性能で運転が楽しいクルマに共通している特徴についての考察

このように、クルマの進化の背景には、工業技術の発展によるボディ・足回りの進化が挙げられる。さらに、コンピューターの進化により、複雑な制御が可能により高出力化されたエンジンの存在があるのだ。これらの進化は、21世紀前後のスポーツカーに惜しみなく投入され、歴史に名を残す名車として結実したように思う。

これまでに試乗した輸入車のなかで運転が楽しいと思ったのは、「フェラーリ・360モデナ」「BMW・M3(E46型)」「ポルシェ・911 GT3(996型/後期モデル)」の3台である。これらのスポーツカーはいずれも異なるメーカーの車種であり、それぞれ駆動方式も、MR・FR・RRとまったく別のものだ。

しかし、いずれのクルマの運転してみると、突き抜けるようなドライビングプレジャーを体験できる。それを生み出している共通点はいったい何なのだろうか。

この3台に共通しているポイントは、やはり「21世紀前後に誕生したクルマ」という点である。360モデナのデビューイヤーは1999年、M3は2000年、996 GT3も1999年といずれも21世紀前後に誕生している。

そしてそれぞれのクルマには、際立った個性があるのも見逃せないポイントだ。

まず360モデナは、洗練されたエアロダイナミクスをもち、高速走行で他を圧倒する安定感をもつ。M3はFRスポーツの利点を活かし、優れた前後バランスによりどこまでも曲がれるような未曽有のコーナリング感覚を味あわせてくれる。996 GT3は、ポルシェ独特のピッチングを使って姿勢をコントロールする面白さを秘めている。

これら3台はまったく異なるバックグラウンドとキャラクターをもっている。いずれのクルマも迫力のパワーとサウンドで、その世界観に没入させてくれるのだ。非日常体験が好きな人にとっては、これほど面白いクルマはないだろう。

そして、この時代のクルマにはしっかりとしたシャシー性能と素直な応答性が備わっている。一昔前だと、操る楽しさを堪能するにはハードルが高すぎるほどのパワーであっても、この時代以降のクルマならば安心感をもって楽しむことができるのだ。

■余談:さらに20年後、21世紀前後の名車はどのように評価されるのかについての考察

2020年現在、上記で述べたようなクルマが登場してから約20年が経過した。さらに20年が経過した2040年頃の世界では、これらのクルマはどのような評価を得ているのだろうか?

まず2040年の世界では、自動運転が現在よりも確実に普及しているであろう。そして2030年を境に、一部の国ではガソリン車の販売が停止されるので、世界的にEV化が大幅に進展しているに違いない。

現時点でさえ、上記のような官能的なエンジンを搭載するクルマは貴重であるから、さらに20年後の世界ではさらに特別な存在になっているであろう。しかし、クルマの性能やエンジンが進化したいまも旧車を楽しむクルマ好きは多い。そのクルマにしかないドライビングフィール・歴史的背景に特別な価値を見いだしているからだ。

いまから20年後の世界でも、上記で挙げたようなクルマは希少な体験をもたらしてくれる存在として、リスペクトされ続けるであろう。

■まとめ「21世紀を境に、クルマはなぜ大進化を遂げたのか?」

「21世紀を境に、クルマはなぜ大進化を遂げたのか?」

この疑問に対する筆者の経験に基づいた見解を述べさせていただいた。

これまでに熟成されてきた工業技術が結実し、ボディ剛性や足回りの改善・エンジン出力の効率化といった形でクルマにフィードバックされた。それが、この時期のクルマの大進化の秘密であると考えている。

筆者自身、1980年代~2000年代の輸入車のスポーツモデルを網羅的に試乗できるという大変ありがたい機会のお陰で、この時代の自動車に対する理解を深めることができている。

しかし、自分が試乗して感じたクルマの個性や乗り味を、視聴者に対して言葉や映像だけで伝えていくことは非常に難しい。それぞれの車種がもっている独特の世界観・エンジニアによって込められた想いは、実際に運転して五感で感じてみなければなかなか理解しづらいものだ。それを実際に体験できる機会に恵まれることは人生にそう多くはないだろう。

そして、10年・20年が経過すれば、その体験の希少性はなおさら高まっていくに違いない。

だからこそ、私の体験を視聴者に分かりやすく、より解像度を高めて伝えていくことが私の使命であり、そのために必要な努力を惜しまずに励みたい構えだ。

[ライター・カメラ/長尾 孟大]

こんな記事も読まれています

三菱自動車の2024年3月期決算、売上高と営業利益が過去最高 今期も新型車効果で売上増へ
三菱自動車の2024年3月期決算、売上高と営業利益が過去最高 今期も新型車効果で売上増へ
日刊自動車新聞
レンジローバー初のEVモデル「レンジローバー エレクトリック」の走行テスト画像および動画が公開
レンジローバー初のEVモデル「レンジローバー エレクトリック」の走行テスト画像および動画が公開
カー・アンド・ドライバー
一度見たら忘れられない「衝撃フェイス」! 「秀逸顔」な国産車3台と「正直理解不能な顔」の国産車3台をデザインのプロが斬る!!
一度見たら忘れられない「衝撃フェイス」! 「秀逸顔」な国産車3台と「正直理解不能な顔」の国産車3台をデザインのプロが斬る!!
WEB CARTOP
F1分析|マイアミGP序盤、”目立たない存在”だったことが、ノリスの初優勝を後押し……フェルスタッペンの警戒はルクレールに向いていた
F1分析|マイアミGP序盤、”目立たない存在”だったことが、ノリスの初優勝を後押し……フェルスタッペンの警戒はルクレールに向いていた
motorsport.com 日本版
カーブって素人かよコーナーだろ! ハンドルとかダサいぜステアリングな! クルママニアが面倒くさいほどこだわりがちな用語5選
カーブって素人かよコーナーだろ! ハンドルとかダサいぜステアリングな! クルママニアが面倒くさいほどこだわりがちな用語5選
WEB CARTOP
トヨタ新型「ハイラックス GRスポーツII」発売! ワイドボディ&車高アップでゴツさ強調! 英で約972万円
トヨタ新型「ハイラックス GRスポーツII」発売! ワイドボディ&車高アップでゴツさ強調! 英で約972万円
くるまのニュース
猿こそが地球の支配者!? 300年後の世界を描く人気シリーズ最新作『猿の惑星/キングダム』
猿こそが地球の支配者!? 300年後の世界を描く人気シリーズ最新作『猿の惑星/キングダム』
バイクのニュース
ヨコハマ、GT500では開幕に続き苦戦もGT300で躍動。富士3時間で復調しドライバーからも好評価「どれだけプッシュしてもタイヤが応えてくれる」
ヨコハマ、GT500では開幕に続き苦戦もGT300で躍動。富士3時間で復調しドライバーからも好評価「どれだけプッシュしてもタイヤが応えてくれる」
motorsport.com 日本版
【スクープ】日産「サファリ」が復活!? 「パトロール」の次期型を大予想! 国内でランクルのライバルとなりえるか?
【スクープ】日産「サファリ」が復活!? 「パトロール」の次期型を大予想! 国内でランクルのライバルとなりえるか?
LE VOLANT CARSMEET WEB
新しいロールス・ロイス カリナン、堂々誕生!──GQ新着カー
新しいロールス・ロイス カリナン、堂々誕生!──GQ新着カー
GQ JAPAN
クルマのホイール「アルミ」と「スチール」どっちがいい? 足元を支える“重要パーツ”のメリット・デメリットとは?
クルマのホイール「アルミ」と「スチール」どっちがいい? 足元を支える“重要パーツ”のメリット・デメリットとは?
くるまのニュース
カタナを1/6スケールで再現!「KATANA ブロックキット」の予約販売が CAMSHOP.JP でスタート!
カタナを1/6スケールで再現!「KATANA ブロックキット」の予約販売が CAMSHOP.JP でスタート!
バイクブロス
アロンソ、ペナルティの一貫性向上に向けFIAと協議「会長は耳を傾けてくれた」新たなドライビングガイドライン策定へ
アロンソ、ペナルティの一貫性向上に向けFIAと協議「会長は耳を傾けてくれた」新たなドライビングガイドライン策定へ
motorsport.com 日本版
2024 SUPER GT第2戦 FUJI GT 3HOURS RACE Niterra MOTUL Z 高星 明誠 / 三宅 淳組が2位スタートから逆転勝利!8万人のファンとともに盛り上がる
2024 SUPER GT第2戦 FUJI GT 3HOURS RACE Niterra MOTUL Z 高星 明誠 / 三宅 淳組が2位スタートから逆転勝利!8万人のファンとともに盛り上がる
AutoBild Japan
【ブレイズ】ボード&水上バイクのイベント「中部ボートショー2024 in常滑」に出展
【ブレイズ】ボード&水上バイクのイベント「中部ボートショー2024 in常滑」に出展
バイクブロス
テール周りの印象を変える「LED ライン テールライトシリーズ」がダートフリークから登場!
テール周りの印象を変える「LED ライン テールライトシリーズ」がダートフリークから登場!
バイクブロス
日産が新型「3列ミニバン」初公開! 全長5m級&大開口スライドドア採用!? 「エヴァリア」とは 欧州で発表
日産が新型「3列ミニバン」初公開! 全長5m級&大開口スライドドア採用!? 「エヴァリア」とは 欧州で発表
くるまのニュース
4人寝られるSUV! 車中泊が大得意なミツビシ アウトランダーPHEVがベースのキャンパー
4人寝られるSUV! 車中泊が大得意なミツビシ アウトランダーPHEVがベースのキャンパー
月刊自家用車WEB

みんなのコメント

2件
  • タイヤの進化も外せない。
  • モデナは900万位で買える。
    買える人は、一回乗った方がいいよ。人生感が変わりますよ。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

1758.81884.8万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

699.07800.0万円

中古車を検索
360モデナの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

1758.81884.8万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

699.07800.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村