スバルのコンパクトSUV、XVは1.6ℓ、2.0ℓの水平対向エンジン、そして2.0ℓ水平対向エンジンにモーターを組み合わせた「e-BOXER」モデルをラインアップする。550km走って、スバルXV e-BOXERの価値を考えてみる。TEXT & PHOTO◎鈴木慎一(SUZUKi Shin-ichi)
現行スバルXVは、2017年デビューのGT系と呼ばれるモデルだ。初代のXVが「インプレッサXV」だったことからもわかるように、もちろんベースとなるのはインプレッサである。現行モデルは、スバルの新しいプラットフォーム「SGP(Subaru Global Platform」の第二弾モデルだ。SGPモデルはこれまでどれも好印象だった(インプレッサ、XV、フォレスター)。コンベのXVも例外ではない。
デビュー当初は、1.6ℓと2.0ℓの水平対向4気筒DOHC自然吸気エンジン(FB16/FB20)とリニアトロニックCVTを組み合わせたAWDモデルだけだったが、18年10月に「e-BOXER」モデルを追加した。グレード名では「Advance」となるモデルだ。
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e-BOXERはいわゆる「マイルドハイブリッド」に分類されるハイブリッドシステムだ。リニアトロニックCVTの後端に10kW(13.6ps)/65Nmのモーター(MA1)を搭載する。
さて、久しぶりにXVに乗るにあたって、e-BOXERを選んだのは、フォレスターより一回り小さく軽いXVで、e-BOXERの価値を体感してみたいと思ったからだ。
恵比寿のスバル本社でクリスタルホワイトマイカのボディカラーのXV Advanceを受け取った。まず、航続可能距離が「450km」と表示してあったのに驚いた。えっ450kmしか走れないの?
Advance(e-BOXER)の燃料タンクは、コンベの2.0ℓモデルの63ℓから15ℓ少ない48ℓである。トランクの下にリチウムイオンバッテリーを積んでいる関係で燃料タンク容量も少々犠牲になっているのだ。
とはいえ450kmは短すぎる。AdvanceのJC08モード燃費は、19.2km/ℓ、WLTC燃費は15.0km/ℓだ。15×48ℓ=720kmは難しいとしても450kmはないだろう。前に借りた人の運転が燃費に優しくなかったということで、まずは街に乗り出した。
SGP全モデルに共通することだが、自然な乗り味と視界の良さはXV Advanceも同様だ。個人的にはSUVよりセダン/HB派なのだが、もはや乗り込んで街を走り始めた時点で、乗降性、視界の良さなど、コンパクトSUVの優秀さをすぐに実感する。インプレッサもいいが、日常使いではXV。フォレスターもいいが、サイズが少し大きいから、やっぱり日常使いならXV、と思う。
信号待ちで停止するとエンジンは、もちろんストップする。前走車が少し前進した際に、e-BOXERはブレーキペダルから足を離してもエンジンは再始動せず、モーターで少し前に出る。いいなぁ、こういうの。(もちろんバッテリーの充電具合によるが)
エンジンのピックアップ(というか、中低速で走っていてポンとアクセルを踏むようなシチュエーションで)はレスポンスに優れるモーターが先に反応してくれるからコンベのエンジンよりいい。とはいえ、乗り比べたらわかることで、コンベのエンジンでも不満はないのだが。
e-BOXERが、燃費のためのハイブリッドではなく走りのための、いわば「電気ターボ的な」デバイスであることを理解していても、やはりモーターが付いていることで、他のハイブリッド車と同じようなメリットを期待してしまう。
たとえば……早朝ガレージから出発するとき、まずイグニッションをオンにする……とやおらエンジンがかかり1000-1100rpmでうなりをあげた。どうやらリチウムイオンバッテリーに充電しているようだ。期待していたのは、走り出しの数メートルを無音でモーター走行することだったのだが。
翌日の土曜日は雨と強い風の絶好の(?)のコンディションだった。XV Advanceに乗って首都高を走る。全車速追従機能付クルーズコントロール、アクティブレーンキープを起動させるのはとても簡単。ハンドル右側のスイッチを親指で操作するだけだ。
荒天だと白線の認識はなかなかしてくれなかった。ステレオカメラだけで、高度なドライバーアシストを実現しているスバルのアイサイトは、いつだってすばらしい。なんといっても、プリクラッシュセーフティブレーキ/AT誤発進・後進抑制制御/全車速追従機能付クルーズコントロール/アクティブレーンキープなどなどなどの機能をレーダーなしで成立させているのだ。
とはいえ、ユーザーにとっては、ステレオカメラだけだろうと、レーダーを使うおうと、3眼カメラを使おうと、LiDARを使おうと、結局はリーズナブルな価格で充分な性能の先進運転支援機能があればいいわけで、その意味では、数年前までほどの優位性はいまのアイサイトにはないように感じた。要するに周りのレベルがグッと上がってきたというわけだ。
今回の試乗で感心したのは、白線を認識できなったときに「いまできてません。ロストしました!」という通知がドライバーにとって非常にわかりやすいということだ。
高速道路を100km/hで巡航しているときのエンジン回転数は約1500rpm。静粛性も高いので高速ドライブは快適だ。車重が重い(コンベのモデルより110kg重い)ことがよい方に出て、乗り心地もいい。
スイッチ左側の上・中で前走車との車間距離を設定する。エンジンを切っても設定が維持できるのがいい。右の上がACCのON/OFFスイッチ。中央のレバーがRES/+、SETー(クルーズコントロールがONの際に車速を加減速できる。上げると加速、下げると減速となる)。右中がレーンキープのON/OFF。右下のS/Iスイッチが、ドライブモード(スポーツ/インテリジェント)の切り替え。今回はほぼ「I」で走った。ECO-Cは、ACCを使って高速巡行している時に、e-BOXERのモーター出力を最大限に活用して燃費運転する機能だ(広報車を返却してから調べました)。
ユーザーがe-BOXERに期待することのひとつは、燃費だろう。
今回走った547kmの内訳は、高速道路6割、郊外路1割、市街地3割といったところだった。高速道路走行の7割はACCをセット(80~100km/hで)して走ってみた。
燃費データを先に書いておくと
14.6km/ℓ
だった。この数値を、いいと感じるか、物足りないと感じるかは人それぞれだが、筆者は少し物足りないと思った。JC08モード燃費19.2km/ℓに対して達成率が76%だから、まぁまぁとも言えるが、取り立てて飛ばしたわけでもなく、高速道路主体のドライブで14.6km/ℓは、「モーター付」「マイルドハイブリッド」のモデルとしては期待値を下回っていると思う。e-BOXERの燃費改善効果をオーナーが明確に感じることはないのではないだろうか?
ちなみに、XV AdvanceのWLTCモード燃費(JC08より実燃費との乖離が少ないとされる)は
WLTCモード燃費:15.0km/ℓ
市街地モード:11.5km/ℓ
郊外モード:15.5km/ℓ
高速道路モード:16.8km/ℓ
だ。ほぼWLTCモード燃費と同じ実燃費なのだから、実力通りの燃費データが採れたわけだ。
ちなみに、ちなみに、新型マツダ3(2.0ℓガソリン FF 6AT)のWTLC燃費は
WLTCモード燃費:15.6km/ℓ
市街地モード:12.1km/ℓ
郊外モード:15.8km/ℓ
高速道路モード:17.7km/ℓ
である。AWDが燃費に不利なのは重々承知だが、それでもモーター+バッテリーを搭載するハイブリッドなのだから、燃費はもう少しいってほしい。
前述したように、リヤにラゲッジスペースと燃料タンク容量を犠牲にしてまで積んでいるリチウムイオンバッテリー、110kgの車重増、そして約13万円のエクストラマネーと引き換えに得られる明確なメリットを感じにくいと言わざると得ない。
筆者がスバルXVを選ぶなら(実際、かなり好きなモデルだ)、2.0ℓのコンベのモデルを選ぶ。e-BOXERとの13万円の価格差でちょっといいテントを買ってキャンプに行く方、スキーに行くとき、1ランク上のホテルに泊まる……方がよりハッピーになれる気がする(アウトドアの趣味はないけれど)。
547km走って、レギュラーガソリンを満タンにすると、航続可能距離は「700km」と表示されていた。あーよかった。700kmなら好きな場所に行けそうだから。
SUBARU XV Advance
車両価格●282万9600円
試乗車はオプション込みで290万5200円
全長×全幅×全高:4465×1800×1550mm
ホイールベース:2670mm
車重:1550kg
サスペンション:Fストラット Rダブルウィッシュボーン
エンジン
形式:2.0ℓ水平対向4気筒DOHC+モーター
型式:FB20+MA1
排気量:1995cc
ボア×ストローク:84.0×90.0mm
圧縮比:12.5
最高出力:145ps(107kW)/6000pm
最大トルク:188Nm/4000rpm
燃料:レギュラー
燃料タンク:48ℓ
トランスミッション:CVT
燃費:JC08モード 19.2km/ℓ
WLTCモード燃費:15.0km/ℓ
市街地モード:11.5km/ℓ
郊外モード:15.5km/ℓ
高速道路モード:16.8km/ℓ
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