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3種類のBMWを融合 110km/hでの高速道路も快適 ブリストル400 ドロップヘッド・クーペ(2)

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3種類のBMWを融合 110km/hでの高速道路も快適 ブリストル400 ドロップヘッド・クーペ(2)

雰囲気は1930年代のグランドツアラー

ブリストル400のボディは、BMW 327へ強い影響を受けたスタイリングで、ウッドフレームにスチール製パネルを被せたもの。シャシーは、326と同じボックスセクション。エンジンは、328用の直列6気筒へ改良を加え、最高出力の向上が図られた。

【画像】「走りはドイツ車」な英国車 400 ドロップヘッド・クーペ 個性的なブリストル 戦前のフレイザー・ナッシュ-BMWも 全116枚

価格は、ハードトップのサルーンを1000ポンド、ドロップヘッド・クーペを1250ポンドに設定。それぞれ500台の生産が、当初は計画された。

直列6気筒エンジンの1号機が完成したのは、1946年5月。その直後にシャシー番号400/1/001が振られた、最初のサルーン・プロトタイプが組み立てられ、一部の自動車雑誌などで紹介されている。

続いて、もう1台のサルーン、400/2/002が完成。ドロップヘッド・クーペのプロトタイプ、400/1/003と、今回の400/1/004も形になった。

ウッドフレームで組まれたソフトトップは、プロトタイプとは思えないほどソリッド。重厚感が漂い、大人2人で持ち上げた方が賢明なほど重いが、スムーズに動く。フロントガラスの上端へ、ピタリと前端が収まる。

固定は3か所のラッチで。閉じた状態で走れば、印象はガラリと違う。キャビンは日陰の落ち着いた空間になり、後方視界は小さなウインドウで殆ど得られない。頭上空間は大きく、風切り音や隙間風などは生じない。

排気音は僅かに小さくなるが、エンジン音は大きく聞こえる。雰囲気は、1930年代のグランドツアラー。柔らかく右足を傾けながら、早めにシフトアップし、太いトルクにあやかるのが良い。

調査でプロトタイプだと解明したマニア

クリーム色に塗装され、レッドのカンバスでコーディネートされた、400 ドロップヘッド・クーペのプロトタイプは、1947年3月のジュネーブ・モーターショーへ出展。400 サルーンとともに、沢山の注目を集めることに成功したようだ。

その1か月後、400 ドロップヘッドクーペは売りに出され、アラン・マーシャル氏が購入。彼はBMWの愛好家として知られ、フレイザー・ナッシュのハロルド・オールディントン氏と友人関係にあった。

想定価格は1500ポンドへ値上がりしており、マーシャルは手数料や税金などを含め1669ポンドを支払った。積極的に乗られ、1947年末までに走行距離は1万6000kmを突破。1948年には、自動車雑誌のモーター誌で紹介もされている。

マーシャルによる売却後、複数の所有者を経ながらリビルドを受け、走行距離は16万km以上に。ボディは1度ブルーへ塗装されるが、オリジナルのクリーム色へ戻された。

1972年に、ブリストル・マニアのアンドリュー・ブロウ氏が購入。彼はこのクルマが特別な1台ではないかと考え、ケンブリッジ大学とオックスフォード大学、ブリストル・カーズを訪問し、細かな調査を進めた。

そして、ステアリングラックに開発段階だったことを示す痕跡を発見。プロトタイプだと解明した。だが、なぜか1976年に手放している。

贅沢感を醸しつつ親しみやすい個性

英国からアメリカ・ロングアイランドへ運ばれた400 ドロップヘッド・クーペを、10年後にロバート・シラーマン氏がオークションで落札。海岸で過ごす、バケーション用に乗られていた。

1988年にブロウがクルマの所在を知り、シラーマンへ連絡。手放したことを悔いていた彼は願い出て、1万5000ポンドで買い戻した。その後、入念にレストア。21世紀に入ってからも、レストアとアップデートを受けている。

現代の交通環境へ耐えるよう、直列6気筒エンジンは後期型のパワフルな100Aユニットへ置き換えられ、トランスミッションもブリストル403用へ交換。ブレーキにはサーボが追加され、ディスク化されている。ドアミラーなどもオリジナルではない。

とはいえ、贅沢感を醸しつつ親しみやすい、本来の個性はしっかり残る。ソフトトップを開いても閉じても、400 ドロップヘッド・クーペで遠くの目的地を悠々と目指せるだろう。戦後のクルマとして、目新しいポイントはないかもしれないが。

現在のオーナー、スティーブン・パーカー氏は、週末が来る度に運転しているそうだ。「76年も昔のクルマが、110km/hで高速道路を快適に走るんです。それには毎回驚かされますよ」。と話す。

幸せな気持ちを生むドロップヘッド・クーペ

ところが、保守的なブリストル・エアロプレーン(BA)社の姿勢に不満を高めていったハロルドは、1946年11月に400のシャシーをイタリアへ送付。カロッツェリアのトゥーリング社とファリーナ社へ、モダンなスタイリングを提案するよう依頼した。

トゥーリング社は細い鋼管フレームにパネルを貼り付けた、スーパーレッジェーラ構造のクーペを製作。後に401として販売された。ファリーナ社はアルファ・ロメオやランチアにも似たコンバーチブルを製作するが、冷ややかに受け止められたようだ。

フレイザー・ナッシュ側とBA社の関係は改善することなく、協力体制は解消。ブリストル・カーズは単独ブランドとして歩むことになり、1950年までに425台の400 サルーンを提供した。他方、ハロルドは自動車販売へ事業を戻している。

400 ドロップヘッド・クーペが、量産されることはなかった。1949年の402 カブリオレまで、ソフトトップのブリストルが作られることもなかった。

それでも、快適で実用的で、幸せな気持ちを生むことを、短時間の試乗でも筆者は確かめることができた。実らなかった過去が、とても惜しまれるプロトタイプだ。

ブリストル400 ドロップヘッド・クーペ・プロトタイプ(1947年/欧州仕様)のスペック

英国価格:1500ポンド(新車時)/20万ポンド(約3700万円/現在)
生産数:2台
全長:4648mm
全幅:1625mm
全高:−mm
最高速度:151km/h
0-97km/h加速:14.7秒
燃費:7.6km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1181kg
パワートレイン:直列6気筒1971cc 自然吸気・プッシュロッド
使用燃料:ガソリン
最高出力:81ps/4200rpm
最大トルク:14.6kg-m/3500rpm
トランスミッション:4速マニュアル(後輪駆動)

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