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【一生モノの貴重な体験】アストン マーティン V12ヴァンキッシュ 英国版中古車ガイド

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【一生モノの貴重な体験】アストン マーティン V12ヴァンキッシュ 英国版中古車ガイド

生産台数はわずか2600台

text:John Evans(ジョン・エバンス)

【画像】初代と2代目 アストン マーティン・ヴァンキッシュ 後継モデルのDBS 全122枚

translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)


V12ヴァンキッシュのキーが、初めてオーナーの手へ渡ってから早いもので20年が過ぎた。オプションなしでのクーペの価格は、15万8000ポンドもした。2+2のレイアウトも選択可能だった。

2004年にパワフルなヴァンキッシュSも追加となるが、英国ニューポート・パグネルのアストン マーティン工場を旅立った初代ヴァンキッシュの数は、2007年までで2600台。この希少さが、中古車の堅調な価格を支えている。

英国市場を見ると、安くても6万ポンド(924万円)の値段が付いている。ベストといえる状態のV12ヴァンキッシュSなら、12万ポンド(1848万円)くらいは覚悟したい。

モンスターと呼びたくなる、5.9LのV型12気筒エンジンは、標準モデルで466psを発生。Sなら、527psを叩き出す。二度見するほどの燃費の悪さと、目を背けたくなるメンテナンス費用を知れば、お金持ちの週末用モデルに過ぎない、と想像するだろう。

だが実際は、売りに出ているヴァンキッシュの多くが8万km近い走行距離を重ねている。2003年式で、15万1200kmという例もあった。ちなみに売値は5万5000ポンド(847万円)だ。

その2003年式のオーナーによれば、過去15年ほど所有しているとのこと。アストン マーティンだと思わせる故障は何度かあったらしいが、どれも深刻ではなかったという。

「ヴァンキッシュのようなクルマは、定期的に走らせる必要があります。わたしのクルマが、それを証明しています」。と彼はコメントしている。アストン マーティンの専門ショップを営む人物も、同様のことを話していた。

ボディもエンジンも職人による手作り

ヴァンキッシュは信頼性が高く、厳しい条件下での日常的な利用にも充分耐えられるらしい。例え渋滞に巻かれて、クラッチ操作を連続しても。

V12ヴァンキッシュはアストン マーティンの歴史に新たな章を刻んだといってもいい。接着剤で組まれたアルミニウム製シャシーに、カーボンファイバー製のトランスミッション・トンネルが取り付けられた、モダンなスポーツカーだった。

アルミ製のボディパネルは、ブランドの伝統ともいえる、職人による手技。エンジンも丁寧に組み上げられ、担当した職人の名前が記されたプレートがあしらわれている。

手作りということは、まったく同じヴァンキッシュは2台とないということ。高い製造品質を保つため、非常に手間のかかった検査を受けて工場を旅立っている。

もし職人の仕事の結果に納得できないなら、一度アストン マーティンの専門ショップで検査を受けた方が良い。何らかの問題を抱えているのだろう。

V12ヴァンキッシュは、セミ・オートマティックを介して後輪を駆動した。このトランスミッションは、生産初期でギアのポジションセンサーに不具合が出ることが多かったものの、メカニズムとしては堅牢。

一方で英国では少なくない数のオーナーが、MTへの換装を専門ショップやアストン マーティン・ワークス社へ依頼している。喜んで作業を引き受けたらしい。

一生モノのドライビング体験

この記事の執筆時点では、英国に流通している中古のヴァンキッシュの約半数はMTになっている様子。人気の高さが伺える。だが標準のセミオートマの方が、価値としては望ましいだろう。

標準のヴァンキッシュとSとの違いは、フロントスカートやフロントグリル、レザー張りのセンターコンソールなど。スポーツダイナミック・パッケージが2003年に標準モデルへオプション設定され、Sでは標準装備になった。

サスペンションやブレーキがアップデートされ、探す価値はあるオプションだ。リン社製のサウンドシステムも良いオプション。シートレイアウトは2+2の方が希少で、価格も高い。

V12ヴァンキッシュは、特別な塗装とインテリアが与えられたSアルティメット・エディションで最後を迎えた。50台の限定だった。しかし、どのV12ヴァンキッシュを選んでも、一生モノのドライビング体験が得られることは間違いない。

知っておくべきこと

英国では、アストン マーティンは2種類の延長保証サービスを提供している。プレミアム保証は初回登録から20年目のクルマまで。350ポンド(5万4000円)で初回の検査を受けた後、1年間の保証を3810ポンド(59万円)で付けられる。

クラシック保証は、20年より古いクルマが対象。初回検査は同等だが、保証内容は包括的なものではなくなり、年間費用が2017ポンド(31万円)に安くなる。

不具合を起こしやすいポイント

エンジン

点火プラグやコイルの劣化による、ミスファイアに注意。交換費用は安くない。エンジン内のオイルラインは容量が大きく、油量管理は重要。オイル不足はバルブガイドやビッグエンド・ベアリングの摩耗にもつながる。

トランスミッション

初期のヴァンキッシュでは、ギアのポジションセンサーに不具合が起きやすかった。モデル後期には改善されたセンサーが採用されており、初期のクルマにも装着可能。

クラッチは通常なら6万4000kmくらいは使える。中心部のスピゴットシャフト・ベアリングの摩耗で、異音が出ることがある。フルード漏れにも気をつけたい。

ブレーキとサスペンション

ディスクやパッドの寿命は、3万2000km前後。強力なブレーキのSの方が寿命は短い。ハンドリングに違和感がある場合、リアのトー・コントロールアームの劣化が原因かも。

サスペンションのボトムアームなど、ブッシュはアームと一体型。アッセンブリーでの交換となり、費用は少々かさむ。

ボディとシャシー

サブフレームの腐食に注意。ボディはアルミニウム製だが、修理が不十分だったり、塗装にダメージがあると腐食することがある。左右のサイドシルの後端に、小さな鉄製のブラケットがある。その周辺も腐食しやすいポイント。

電気系統

エンジンの始動性が悪い場合、スターターモーターのケーブルが腐食していることがある。初期のクルマでは、バルクヘッド下部のワイヤーが振動で摩耗し、電気系の問題を生じることがあった。

インテリア

ドアのスピーカー・パネルやステアリングコラムなど、ソフトタッチ加工された部分の状態は確かめたい。ベタベタと溶けやすい。

専門家の意見を聞いてみる

テリー・カウゼンズ:ヴァンテージ・エンジニアリング社代表

「ヴァンキッシュは見た目も素晴らしく、とてもアグレッシブ。生々しいクルマです。トラクション・コントロールは付いていますが、初期のシステムなので、現代のモノほど知的にクルマを制御してはくれません」

「自分のドライビングスキルを試すことも可能ですが、注意しないとコントロールを失いかねません。それも、スリリングな楽しみの1つではありますが」

「購入する際に確認したい点は、ボディやシャシーの腐食の兆候。トランスミッションの動きや、エンジンのミスファイアなどにも気をつけたいですね」

英国ではいくら払うべき?

5万5000ポンド(975万円)~6万9999ポンド(1011万円)

2004年式くらいまでのヴァンキッシュが英国では見つかる。走行距離は15万kmを超えるものも。

7万ポンド(1012万円)~7万9999ポンド(1049万円)

年式は古めだが、走行距離は少し短めになる。

8万ポンド(1050万円)~8万9999ポンド(1089万円)

年式が新しいクルマが混ざる。2005年式で走行距離5万6000kmというヴァンキッシュSを英国で見つけた。

9万ポンド(1050万円)~10万9999ポンド(1089万円)

走行距離が短めの、通常のヴァンキッシュとSとが選べるようになる。中には最終年式となる、2007年のクルマも。

11万ポンド(1088万円)以上

モデル末期で走行距離が短い、ベストコンディションのヴァンキッシュSを英国では探せる。

英国で掘り出し物を発見

アストン マーティン・ヴァンキッシュ 登録:2004年 走行:5万7900km 価格:6万9950ポンド(1077万円)

ヴァンキッシュの中古車は安くはない。下手に安いクルマへ手を出すより、正規モノとしてアストン マーティン・ワークスが販売する1台をご紹介したい。

ブランドの名に恥じないよう、徹底的に整備されている。妥協することなく、安心してアストン マーティンを楽しめるはずだ。

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みんなのコメント

1件
  • シャシーはDB7(すなわちジャグァーXJ-S)、エンジンはフォードモンデオ用デュラテックエンジンを2基組み合わせたモノ。当初「プロジェクト·ヴァンテージ」として開発が進められたが、完成度はイマイチ。伝統のV8エンジンは廃止の憂き目にあい、アストン自社製エンジンは終焉を迎えた。
    またボディも伝統の「スーパーレッジェーラ工法」ではなく、モノコック構造。救いはDB7のボディはスチール製だったがアルミを採用したことが唯一の救いだろう。
    ヴァンキッシュSでようやくアストンらしさを取り戻した頃には、すでに現在の本社工場で最新の「VHプラットホーム」を採用したDB9が生産を開始。
    ヴァンキッシュの生産終了と同時にニューポートパグネルはレストア専門部門になってしまった。
    アストンの過渡期を象徴するモデルだが、性能的には疑問が残る。
    イアン・カラムがアストン最後の仕事になったが、さすがにボディデザインは素晴らしい。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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