日に日に日照時間が短くなってきていることを実感する、ドイツの秋。首都ベルリンにおける10月半ばの日没時間は18時半前後で、21時でも明るかった真夏と比べると、ずいぶんと日の出ている時間が短くなってきました。長く暗い冬が目前に迫っていることをよく知っていて、かつカブリオレやロードスターに乗っているドイツの人々は、雨が降っていなければ積極的に屋根を開け放ってドライブしています。
今回ご紹介するのは、幌を閉じた状態ではありましたが、現在でも日本人のみならずドイツ人にとっても憧れのフルオープン・スポーツカー、ポルシェ911カレラ3.2 カブリオレです。
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古くは356の時代から
ポルシェのオープンエア・ドライブについてのこだわりは相当なもので、2018年10月現在のラインナップを見てもそれは明らかです。718ボクスターはもちろん、911にいたってはカレラ、カレラS、カレラ4、カレラ4S、カレラGTS、カレラ4 GTS、ターボ、ターボSにカブリオレ・モデルを設定。また、タルガ・モデルとしてタルガ4、タルガ4S、タルガ4 GTSが用意されています。他のメーカーとは比べものにならないほど、オープンエアを楽しむための選択肢が数多く用意されているのです。
歴史をたどると、ポルシェ最初の市販車・356にも比較的初期からオープントップ・モデルが用意されていました。プリAと呼ばれる1950年代半ばから、カブリオレやスピードスターといったモデルをラインナップ。その後もコンバーチブルDを発表、のちにロードスターにバトンタッチします。結局、356は1965年に生産を終了するまで、オープントップ・モデルをラインナップから外すことはありませんでした。ところが、1964年に登場した後継車・911には、しばらくオープントップ・モデルの設定はありませんでした。1967年にタルガ・モデルは発表されるものの、カブリオレに関しては1983年の復活まで、およそ20年という長い時間を待たなければならなかったのです。
およそ20年の時を経て復活したカブリオレ
今回撮影した911カレラ3.2 カブリオレは、リアのトランクリッド上のロゴが「Carrera」となっていることや、すでに「Hナンバー」を取得していることから、1984年から1988年の間に生産された個体と考えられます。本国仕様で231hpを発生する3.2リッター水平対向6気筒エンジンは、もちろんリアに搭載。ドイツで見かける古いポルシェは、総じてコンディション良好な個体が多いですが、この個体も例に漏れず非常に良い状態を保っていました。
カブリオレの復活を待ち望んでいたのは、ポルシェ・ファンだけではなく、ポルシェの社内にも数多くいたのかもしれません。ポルシェ356の設計者であり、フェルディナント・ポルシェの長男であるフェリー・ポルシェも、911カレラ3.2 カブリオレのスポルトマチック(セミオートマチック)仕様をプライベートで愛用していた、と伝えられています。1988年には、ついに911ターボにもタルガとカブリオレが選択できるようになりました。そして、後継車・タイプ964にバトンタッチする直前の1988~1989年に、スピードスターが2,102台のみ限定生産され(台数については諸説あり)、タイプ930はその歴史に幕を下ろすことになるのです。
生産総数の70パーセント以上が今も現役
空冷911の価格高騰が伝えられて久しいですが、2018年現在、ドイツにおける930型(自然吸気エンジンモデル)の価格はおよそ5万~8万ユーロ(650万~1,040万円)で推移しています。ドイツの中古車検索サイトを見る限り、登録車数もかなり多く、現在も活発な取引が行われているようです。優れた走行性能と高い実用性を兼ね備え、ムダのない美しいエクステリアと愛嬌のある顔立ちを持つ911は、ドイツの人々にとってスポーツカーの歴史的アイコンであり、今後もそれは変わっていくことはないでしょう。
2017年に累計生産台数100万台を達成し、さらに生産総数の70パーセント以上が走行可能な状態で現存していると言われるポルシェ911。次期型の登場も間近と言われていますが、古いモデルについてもこれからも変わらず、長く愛されていくに違いありません。
[ライター・カメラ/守屋健]
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