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どこが違う? 性能差は? 知ってるようで知らないガソリンの真実

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どこが違う? 性能差は? 知ってるようで知らないガソリンの真実

 普段から給油する時に、ガソリンの善し悪しを細かく考えてみたことはありますか? ガソリンのレギュラーとハイオクの差ってどれほどあるのか、ハイオクガソリンは、ブランドごとに品質に違いはあるのか?……。

 例えば、ヒトが生活するのに必要不可欠な飲料水ならば、硬水・軟水、天然水と品物選びを考えるのに、クルマにとっていわば血液ようなガソリンを選ぶときに、品質などに無頓着でいいのか?

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 ということで、ガソリンのさまざまな「違い」の理由を探ってみた。

文/岩尾信哉


写真/ベストカーWeb編集部

■日本で販売されているガソリンはJIS規格で決められている

 まずは日本で売られているガソリンについて軽くまとめておこう。工業製品の品質を定義したJIS規格では、ハイオク・ガソリンの性能指標であるオクタン価は96.0以上、レギュラー・ガソリンのオクタン価は89.0以上と規定されている。ここでオクタン(C8H18)とはガソリンの成分のひとつで、オクタン価は燃料のノッキングのしにくさ(アンチノック性)を示し、“ハイオク”は正確には“高オクタン価”の意味で、オクタン価が高いほどノッキングを起こしにくい。

 よく見聞きするRONというのはリサーチ・オクタン価(Research Octane Number)法と呼ばれるオクタン価を評価する指標のひとつだ

 国によって販売されているガソリンに違いがあることは、欧州からの輸入車の多くがハイオク仕様となることでもわかる。欧州のレギュラー・ガソリンのオクタン価は基本的に95RON。EU市場でハイオクに当たるのが98RONのガソリンということになる。

 米国では評価法に違いがあって、モーター・オクタン価(Motor Octane Numbe)法が採用され、約87が「レギュラー」、約89が「プラス」、約92の「プレミアム」 が日本のハイオクに当たり、全般にRON値よりも10ポイントほど低くなる傾向にある。

■レギュラーガソリンは各社共通の規格品だった!

 ということで基礎知識をおさらいしたうえで、実際に日本で売られているガソリンにどういう違いがあるのか見てみよう。特にハイオクガソリンはわざわざ各石油元売り会社がブランド化して販売しているのだから、各社の製品に違いがあって当然といえる。

 レギュラーガソリンについて触れておけば、レギュラーガソリンは日本国内では元売り各社が各社共通の規格品として販売している。

 輸送コストの削減や在庫管理のために、各社のタンクローリーでの輸送を融通し合えるように、成分に違いがないよう精製して作られている。

 ということは、各社が個別に運んでいるハイオクガソリンには、レギュラーガソリンよりも余分な輸送コストがかかっていることになるから、そのぶん販売価格に上乗せが生じることも頭に入れておきたい。

■各社のハイオクガソリンを詳細解説

 それでは、石油元売り各社のガソリンラインアップを紹介しよう。

 各社が性能面で独自に主張するのは清浄性の高さだ。エンジンに優しいことで燃費やフィーリングに好影響を与える「説明」を加えているので、いくつか例を挙げてみる(順不同)。なお、「清浄性能」はエンジン内の吸排気バルブ周りなどの汚れの従来製品からの低減率などを示す。

■Shell V-Power(昭和シェル石油)

 清浄性能/燃費:非公表。ハイオクガソリンとしてピューラがあるうえに用意されたプレミアムハイオク製品。エンジンの洗浄/保護性能を謳うセリフとして「かのスクーデリア・フェラーリもその性能の改善効果を評価し、Shell V-Powerを選択しているのです」とは、インパクト強し!

 昭和シェル石油が他社のようにオクタン価の具体的な数値を公表しないのは「(他社との)情報開示の考え方の違いでしょう」(同社広報)という回答が帰ってきた。ちなみに出光興産と昭和シェル石油は経営統合されるので、数値が昭和シェル製品でも明らかになるかもしれない……。

■エネオス・ヴィーゴ(JXTGエナジー)


 清浄性能:吸気バルブの汚れを86%減(2004年調べとデータが旧い)、燃費:最大3%向上(摩擦調整剤未添加のハイオクとの比較)、加速性能:最大5%向上、出力:最大15%向上。具体的な数値を列記していることが特徴。

『環境ハイオク「ENEOSヴィーゴ」は、「国内最先端の清浄性能」、「日本でいち早くサルファー・フリー(註:ガソリンや軽油に含まれている硫黄分を取り除き、10ppm以下にまで低減)の保証」を実現した環境対応ハイオクガソリンです』と技術的な自信が覗く。

「社内試験では排出ガス中の規制排出ガス成分(一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物)が最大10~30%低減しました」と排ガスのクリーンさを主張する。

■出光スーパーゼアス(出光興産)


 清浄性能:吸気バルブの汚れをレギュラーガソリンに比べ64%減、燃費:レギュラーガソリン対比:最大2.7%向上。

■スーパーマグナム(コスモ石油)


 清浄性能:レギュラーガソリンに比べて最大約5倍、エンジン内の不純物付着率を80%もダウン。燃費:レギュラーガソリンに比べて最大2.8%も向上。

■正確なデータを一般消費者に公表しないなんて……

 ……と、各社の性能向上の主張が入り乱れているが、オクタン価については「未公表」「程度」「以上」と曖昧さが溢れていて、具体的な数値で性能を比較できないのはもどかしい。

 清浄性能の効果を比較割合で示すのは使われ方で違いが出るので致し方ないとはいえ、継続的に使用して効果を確認する方法はあるはずだ。

 自動車メーカーが得ている“はず”の正確なデータが公表されることには無理があるにしても、せめて加速性能ぐらいは同一車種でなんとかテストできないかと考えてしまう。

 テスト結果の公表によって市場に競争原理が働くことはよいことだと思うが、「消費者に混乱を招きかねない」「安定供給第一」と監督官庁の経済産業省はのたまうだろう。

■ハイオク仕様のエンジンにレギュラーガソリンを入れてもOK?

 ハイオク指定のクルマ(エンジン)にレギュラーとハイオクを入れ替えることに意味はあるのかという疑問についても触れておこう。

 まずはレギュラーとハイオクの燃料として基本となる成分に大きな違いがないことを確認しておきたい。ハイオクにはオクタン価が高めるための添加剤の効果で高出力時のノッキング防止効果が得られ、前述のようにシリンダー内のスラッジ(汚れ)発生を抑える清浄剤が加えられているから燃費向上の効果があるにしても、エンジンのパワーアップなどへの直接的な効果は期待しない方がよいだろう。

 自動車メーカーのあらゆる状況に対応するエンジン技術は素人には想像できないレベルにある。考えてみてほしい。自動車メーカーが製品を送り出す世界の地域には、欧米などに比べて清浄性の低い低品質な燃料しか使えない国が存在する。

 それでも無事に動くエンジンを仕立てなければならない義務と責任を自動車メーカーは負っている。だからこそ、ハイオクとレギュラーの差などは、ノックセンサーの装着やECU(エンジン制御ユニット)に燃焼方法のプログラムを用意して対応するなど、エンジンが動かなくなることなどまずあり得ない。

 ただし、ハイオク指定のエンジンにレギュラーを使用すれば、高圧縮比仕様や直噴エンジンの場合など、燃費や加速性能、耐久性に差が生じる可能性が高い。自分のクルマを“安全・安心”して使いたいのなら、自動車メーカーの指定に従うべきだ。

 それでも、自分のクルマに対するモラル(?)をおろそかにしてまで、継続的な“安物買い”が最終的な“銭失い”になっても後悔しないと言い切れるのなら、あえて止めはしない。

■これも知っておきたい!再編が進む石油元売り各社とシェア

 2019年4月に出光興産と昭和シェル石油が経営統合されることが2018年7月、正式に決まった。昭和シェル株を出光株に交換する方式で、今年10月に両社が臨時株主総会を開き、2019年4月に昭和シェルは出光の完全子会社となる予定だ。

 2015年7月に両社の協議が開始してから3年が経過したが、約28%の株を持つ出光の大株主である創業家の猛反対もあり、経営統合は頓挫しかけていた。しかし、ここにきて経営統合に創業家側が同意したことで急遽、決まった。2000年代に入ってから再編が進んでいた石油元売り業界は、出光&昭和シェルとJXTGホールディングスとの2強体制に入る。

 米国のエクソンモービルなどといった外資系はすでに日本市場から撤退しており、2009年のエネルギー供給構造高度化法以降、経済産業省が石油精製設備の廃止などを進めたことで再編が進んだ。

 そこで2017年4月に生まれたのがJXTGホールディングスで、国内シェアの半分を握っている。出光&昭和シェルのシェアは足して30%超といったところで、コスモ石油、太陽石油、キグナス石油で約20%となる。

※クイズの回答/一番左のビーカーに入っているグリーンが軽油です。中央がハイオクガソリン、右側がレギュラーガソリンです。ガソリンは軽油と灯油と区別するためにJIS規格で決められオレンジ色(本来は無職透明)に着色されていますが、レギュラーとハイオクの区別は付きません。意地悪な問題ですみませんでした。

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