ボルボ EX30ってどんなクルマ?
ここのところ、試乗のチャンスをもらえる輸入車は、圧倒的にEVが多い。しかも感心するのは、出来がよく、かつ最近では、日本の交通事情にもよく合いそうなモデルが出てきたこと。ボルボが2023年8月に発表したコンパクトSUV型の「EX30」は、そのいい例。全長が4235mm。トヨタ車でいうと、ヤリスクロスと、カローラスポーツの中間なのです。私がEX30っておもしろい!と思ったのは、モデルラインナップです。簡単にいうと、目的別に選べるようになっています。バッテリーは2種類用意され、比較的安価で、でも走行距離がやや短めでもいい(通勤中心に使うとか)というユーザーにはLFP(リチウム鉄リン酸塩)、走行距離が長いほうがいいひとにNMC(ニッケルマンガンコバルト)が選択できます。さらに、高速などで速いペースで走りたいっていうひとは、NMCバッテリーにツインモーターを組み合わせた仕様を選べるようになっています。日本には、24年初旬にNMCバッテリーにモーター1基の「シングルモーター・エクステンデッドレンジ」が導入され、追って前後にモーターを搭載した「ツインモーター」が入ってくる予定です。私は、23年10月にバルセロナで、この2台を試乗しました。前者の車名の由来になっている「エクステンデッドレンジ」とは、延長された走行距離という意味で、LFPの「シングルモーター」が344km(WLTPモード)なのに対して、462km(日本で採用されているWLTCモードだと560km!)に達することを意味しています。
ロータリーEVの走りは? 音は? マツダの新型「MX-30 ロータリーEV」に試乗。
後輪駆動で運転が楽しい!
テストドライブの地として選ばれたのは、バルセロナの市街地と近郊の丘陵地帯で、高速道路を含めて2つのモデルに乗りました。結論的にいうと、どちらもスムーズで快適。ボルボは、動力性能の基準として「ハンドル操作に対する動きの予測性の高さ(つまり、思いどおりに走れること)」「機能性」それに「操縦性の高さ」を挙げています。ボルボでは以前から、上記3つのポリシーを守ってクルマづくりをしてきたとのことで、「安全性も快適性もこれらと密接につながっています」と、動的性能を長年担当してきたエグベルト・バッカー氏は説明してくれました。実際、街中ではコンパクトな車体と、電気モーターによる俊敏な動きでもって、小気味よく走り、高速道路では安定して高速巡航が出来ました。ツインモーター車は、一時的にパワーを上げるブースター機能もあって、その気になれば静止から時速100kmまでをわずか3.6秒と、スポーツカー並みの加速力を持っています。私が運転したとき、道路の混みぐあいを勘案して、試すのはやめておきました。そこまでとはいわずとも、フツウに運転して十分に速い。後輪駆動がベースで、フロントに追加されたモーターが車体をぐんぐんと引っ張ってくれる感じです。それに対して、シングルモーターは多少ジェントルです。でも、普段使いには十分すぎるパワー感。「リアにモーターを配置し後輪駆動にしているのは、大きなパワーに対応しているため」と先のバッカー氏の言葉にも納得の力強い走りが味わえます。
シンプルすぎる!? EX30のインテリア
もうひとつの魅力は、デザイン。外観も内装もシンプルに仕立ています。エンジン車のフロントグリルの開口部とは違って、目立たせない処理が施されており、すぐEVとわかります。いっぽうで、ボルボのアイコンである「アイアンマーク」と「トールハンマー型ヘッドランプ」は継承されています。インテリアもかなりシンプル。従来のようなドライバーの前方に計器盤はなく、エンジンをかけるときスターターもありません。カードキーを室内の置いて、コラムから生えているギアセレクターをDの位置に入れればシステムが始動します。リサイクル材を可能な限り使用したとボルボのデザイナーが言う室内は、リサイクルという言葉につきまとうプアな印象は皆無。むしろシートの表皮なんて、本革より感触がいいぐらいです。EX30はスウェーデンデザインですが、ドイツのブラウンという電気製品メーカーが1960年代から70年代にかけて手がけていた、シンプルで美しい家電の数々を連想させます。オーナーになったら、乗っていて、使う喜びを与えてくれそうなプロダクトだと、私は思いました。SPECIFICATIONSボルボ EX30 シングルモーター・エクステンデッドレンジ|Volvo EX30 Single Motor Extended Range全長×全幅×全高:4235×1835×1550mmホイールベース:2650mm車重:1790kg電気モーター1基 :後輪駆動最高出力:200kW最大トルク:343Nmバッテリー:リチウムイオン(69kWh)巡航距離:560km(WLTC)価格:559万円~
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