<エンジンを廃止するホンダにとってF1休止は必然>
ホンダにとって最後の凱旋となるはずだった日本グランプリも中止となり、ホンダがF1活動を休止するまで残りあとわずかになってきました。
ホンダが環境問題を理由にF1を撤退するのは宗一郎の時代からの伝統だった!?
第16戦終了時での成績は、ドライバー部門でレッドブル・ホンダを駆るマックス・フェルスタッペン選手がトップ、コンストラクター部門でレッドブルはメルセデスに次ぐ2位と、ホンダのパワーユニットは世界一を争えるレベルにあります。
そんなタイミングでの参戦休止には「なぜ?」という疑問がつきまとうわけですが、ホンダは2040年にグローバルで内燃機関を搭載した新車販売を止める(!)と発表済み。ハイブリッドパワートレインを使うF1は“走る実験室”としての役割も終わり、合理的な判断という見方もあるでしょう。
<ホンダF1が勝てるようになった5つの技術ポイント>
2018年からホンダF1活動を引っ張ってきた、本田技術研究所のセンター長 兼 F1プロジェクト LPLの浅木泰昭さんによれば、彼がプロジェクトを率いた3年間におけるホンダF1パワーユニットの進化ポイントは以下の5点です。
・高速燃焼技術の確立
・コンパクトな新骨格エンジン
・ホンダジェットの技術を活用したF1ターボ
・耐ノック性に優れるF1専用燃料
・出力密度に優れたバッテリー
一番の注目はやはり高速燃焼技術。ノッキング(異常燃焼)が起きそうなシリンダーの周辺部を“点火の力で燃やす”という考え方は、マツダのSPCCI(火花点火制御圧縮着火)にも通じるものを感じますが、浅木さんは「燃焼を暴れさせておいて抑え込む」という荒々しい表現で、ギリギリの制御を確立したことを強調します。
新骨格エンジンはエンジン自体がコンパクトになっただけでなく、バルブ挟み角を挟角化して燃焼室をコンパクトにすることで熱エネルギーを最大限に利用できるような設計となっているのがポイント。
F1用ターボチャージャーの開発過程では、成功を収めた航空機・ホンダジェットの技術が活用されました。浅木さんは、量産ターボとF1はまるで異なる技術のため、量産での経験は活かせず、ホンダジェットのシミュレーション技術を活用することで戦闘力のあるF1用ターボチャージャーを生み出すことができたといいます。
高速燃焼、コンパクトなエンジン、超大流量ターボチャージャーといった技術がホンダF1パワーユニットの躍進につながったわけですが、これらはいずれもエンジン=内燃機関を進化させるものであって、脱エンジンを目指すホンダの将来に資する技術とはいえない面があります。
一方、高速燃焼に合わせて開発された耐ノック性に優れた燃料は、バイオマスや水素などから作ることができる再生可能燃料なので、カーボンニュートラルでのモータースポーツや航空機の燃料として市販技術につながる可能性がありそうです。
また、F1のハイブリッドシステム用にホンダが内製で開発した高性能バッテリーも、市販車への活用も十分に考慮した技術。電極にカーボンナノチューブ採用し、現在のハイブリッドカーなどで使われているバッテリーとは比べ物にならないほどコンパクトで高出力だといいます。
<開発中のeVTOLが積むエンジンや電池にもF1技術>
ところで、ホンダが開発中の電動垂直離着陸機「eVTOL(イー・ブイトール)」は、バッテリーのエネルギー密度の限界からフル電動化は難しいため、F1の高回転技術も採り入れたガスタービンエンジンで発電するシリーズハイブリッド方式になると発表されています。そして、そのハイブリッドに組み合わせるバッテリーに前出のF1用高性能バッテリー技術が応用されるかもしれません。
そのため敢えて、「モータースポーツ用の技術なのに(手の内がわかってしまう)特許を出願しています。小型軽量バッテリーは電動化時代に役立つからです」と浅木さん。「eVTOLや再生可能燃料といった点では、F1は走る実験室足りえる」と、F1活動終了を残念に思う気持ちを表現していました。
というわけで、今後もホンダのF1活動で鍛えられたエンジニアたちは、ゼロエミッション&カーボンニュートラル社会の実現に向けて立ちはだかる難問を、F1の経験を活かして解決していくのではないでしょうか?
そう考えると、ホンダのF1活動をその成績によって評価するのではなく、より本質的な視点…つまりどれだけ「世の中とつながる技術を生み出す」ことができたかで総括すべきなのかもしれません。
文:山本晋也(自動車コミュニケータ・コラムニスト)
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みんなのコメント
色々な状況を考えると内燃機関は絶対無くならないと思うけどね。
ドローン配送、完全自動運転、5G(sub-6じゃなくミリ波)も当初の実用化予定の年を過ぎても
全然実用化出来てないからね。
これらと同じになると思う。