スーパー耐久シリーズやTGR GR86/BRZ Cupなど、さまざまなレースで活躍してきた久保凜太郎が、3月31日~4月1日に開催されたニュルブルクリンク耐久シリーズ(NLS)第2戦に参戦した。SP3クラスから284号車トヨタ86を蘇武喜和と三觜真人とともにドライブしたが、初めてのニュルブルクリンクの経験と今後の狙いについて聞いた。
──これまで日本ではGR86/BRZ Cupなどで活躍されてきた久保選手ですが、今回のNLS参戦の経緯を教えてください。
久保凜太郎(以下RK):ニュルブルクリンク24時間レースは、スバルやSTIにとって非常に大きな意味を持っているプロジェクトです。振り返ると、2018年に東京オートサロンのスバルブースでトークショーに出演したのですが、プロジェクトの総監督をされてる辰己英治さんに『ニュルに行きたいです!』とお話ししたところ、『コースを覚えてるのか?』と聞かれ、準備もできていないことに気がつき、グランツーリスモで練習を始めました。僕自身がスバルさんに長くお世話になっている立場なので、ニュル24時間レースのプロジェクトのドライバーとして参加したいと願っています。ただ、僕がいくら願ったとしても、スバルとしてニュルのライセンスを取得するまでのサポートは難しいと思い、思い切って自費でライセンスを取得し、スバル/STIのドライバーとしてお声をかけて頂ける準備をしようと思ったのが最初の一歩です。
Team Takutyが井口と久保の2台体制で東京スバル、千葉スバルとTGR GR86/BRZ Cupに挑戦
──日本国内の活動が忙しい中で、ニュルへ来る時間を捻出するのは大変ではありませんでしたか?
RK:昨年と今年は国内レースに出場する機会が以前より減り、ちょうど時間に余裕ができたことで、『思い切っていまトライしてみよう』とニュルへ来ました。渡航制限もずいぶんと緩和されてきたので、ドイツへの渡航もコロナ禍ほどは難しくなくなったというのもありますね。またNOVELさん、HALスプリングさんのサポートもあって今回の参戦が実現しました。
──ニュルを走行されたのは今回が初めてですか?
RK:ここを訪れたのも、走行したのも初めての経験です。
──初めてニュルを走った感想は?
RK:ニュルへ到着して初日にサーキット専用のレンタカーを借りて、ツーリスト走行枠で走りました。ドライコンディションだったのですが、レーシングドライバーとして初めてコースに対して『怖い』という感情がわきました。以前にラリーにも参戦していたので、さまざまなコンディションを多く経験してきましたが、ラリーとも比べものにならない『衝撃』を覚えました。事前にグランツーリスモでコースは覚えてきたつもりでしたが、想像以上の狭さとアップダウンでした。
──ライセンス取得の講習会やNLSのレースは低気温のウエットで、いきなり“ニュルウェザー”の洗礼を受けられた感じですね。
RK:講習会の日は特に土砂降りで『Green hel(緑の地獄)とはこのことか!』と思いましたが、実際にドライとウエットの両方のコンディションを自ら走ってみて、さまざまなメーカーがこの地で開発テストをする意味がやっと理解できました。コースの厳しさがクルマにどれだけ影響を与えるのか垣間見え、今回思い切ってニュルに来て良かったな……と実感しました。
路面の補修がされてる場所、されてない場所によってもグリップが変わるので
そういった場所を覚えることも重要でした。
──NLSは数多くのクラスがあり、参加台数が非常に多く、NLS2では140台以上の参加がありましたが、実際にレースを走ってみていかがでしたか?
RK:スーパーGTの参戦経験や、スーパー耐久では速い車両から遅い車両のクラスまでさまざまなマシンをドライブしていた経験があるので、ニュルではその経験を活かすことができたと思います。僕の経験上、速いクルマをドライブするドライバーたちの気持ちが分かる分、彼らをどこでどう先に行かせるかのタイミングを見ながら走っていますし、プロ同士の呼吸は理解できますので、混走は問題ではありませんでした。
今回クラス優勝した86とセクタータイムで比べても遜色ないタイムでは走れていたので攻め方は合っているのかなと自信にもなりました。
──今後の久保選手のキャリアの計画はどのようにお考えですか?
RK:今年の24時間レースに参戦できる条件である『パーミットB』のライセンスの取得はできたので、GT4までのクラスのマシンでの参戦はできると思います。STIが参戦するSP4Tクラスにはこのライセンスで出場できるのか分かりませんが、『僕はもう24時間レースを戦える準備はできています』と今の時点ではまだ言うつもりはありません。『パーミットA』を取得した方がよりチャンスに繋げることが出来ると思いますし、今季のNLSに出場して経験を積み、パーミットA取得を目標にすることはもちろんのことですが、将来的に国内レースだけではなく『グリーン・ヘル』でも戦えるドライバーとして、ニュル24時間レースへの参戦を目標としていきたいと思います。
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