短縮決着となった前戦に続き、ふたたび雨絡みで月曜順延となった2023年NASCARカップシリーズ第20戦『クレヨン301』は、恒例の301周中254周でリードラップを刻んだマーティン・トゥルーエクスJr.(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリ)が、圧巻の走りでシーズン3勝目を手にした。
ニューハンプシャー州ロウドンに位置する“マジック・マイル”での週末は、土曜公式練習こそマイケル・マクドウェル(フロントロウ・モータースポーツ/フォード・マスタング)が最速を記録するも、続く予選では“スーパースピードウェイ向き”のトヨタ陣営が1マイルでも強さを見せ、前年度覇者クリストファー・ベル(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリ)がポールウイナーに。その隣には僚友トゥルーエクスJr.が並ぶ構図となった。
ウィル・ブラウンが選手権首位浮上。DJRアントン・デ・パスカーレが待望の復活劇/RSC第6戦
「なんだか大変だったね。4月にここでタイヤテストを行った際はかなり涼しく、マシンのグリップ力が非常に高かった。ここで低ダウンフォース・パッケージを使用するのは今回が初めてだったけど、グリップ力の高さに驚いたよ」と、同地初、キャリア通算5回目のポールを獲得したベル。
「昨年の7月から今年の7月にかけて、あらゆるものが狂ったような勢いで変化した。おかげでドライブするのは悪夢のようなクレイジーさだったよ。だからこそ、この場所で走るのはいつだって楽しいし、この20号車のクルー全員の仕事ぶりを誇りに思っている」
そのままフロントロウ独占の勢いで決勝に挑みたかったJGR勢だが、NASCARのスチュワードはまとまった降雨と落雷接近の予報を受けレースの順延を決定。勝負は月曜午後に持ち越される格好となった。
するとこの決定が2台のカムリの命運を分け、主導権はポールシッターでなく2番手発進だったトゥルーエクスJr.へと移ることに。グリーンフラッグ直後の2周目に早くも首位浮上を果たした19号車は、午後を通してほとんど首位の座を脅かされることなく、そのまま両ステージを席巻していく。
一方の20号車ベルは、ルーティンピットから3番手で復帰したにもかかわらず、チームから「ホイールがしっかりハマっているか確信がない」との通達を受け、ステージ1終盤で2回のピットストップを強いられる苦しい展開に。
この結果レースの大半を後方集団内で過ごしたベルは、ステージ2ではトップ10、最終ステージでは一時5番手まで挽回する奮闘を見せるも、残り14周で8番手を走行中にターン3で突如姿勢を乱し右リヤをヒット。リザルト上で29位という不本意な結末となってしまった。
■トップ5フィニッシュを争うドライバーたちが続々脱落
そのベル以外にもウォールの餌食となるドライバーが多発し、序盤のターン1で「新しいラインに挑戦中」だったカイル・ブッシュ(リチャード・チルドレス・レーシング/シボレー・カマロ)らに続き、169周目のリスタートで首位にいたアリック・アルミローラ(スチュワート・ハース・レーシング/フォード・マスタング)は、右リヤホイールが「突然、ルーズに」なりクラッシュ。トップ5を走り続けた月曜が、タイヤの脱落という無念のトラブルで台無しとなってしまう。
さらに、上位を伺っていたウイリアム・バイロン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)やライアン・ブレイニー(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)らは、ピットレーンで他車との接触や装備品(ガンホース)を轢いたことでペナルティを受けるなど、トップ5フィニッシュを争うチャンスが次々に消滅していく。
これで楽になった首位トゥルーエクスJr.は、残り22周でアレックス・ボウマン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)やタイ・ギブス(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリ)らが絡んだバックストレッチでの事故や、ベルを起因としたコーションも乗り越えキャリア通算30勝に到達。ジョーイ・ロガーノ(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)らを抑え切り、ここニューハンプシャー・モーター・スピードウェイ(NHMS)での自身初優勝を飾ってみせた。
「ここ何年にもわたって、僕らがここで成し遂げてきたことは非常に驚くべきことであり、勝てなかったことには本当にフラストレーションを感じていた」と、ようやくのNHMS制覇を達成し安堵の表情を見せたトゥルーエクスJr.。
「そのことに関し、レース前にはクリストファー(・ベル)とも話をしていたんだ。ヤツ曰く『なんだ、君は僕がカップ全体のレースでしたよりも多くの周回をここでリードしてきたよね?』なんてね(笑)。今日は素晴らしいレースカーだったし、チーム全体を誇りに思う。ピットストップも完璧だった」
併催されたNASCARエクスフィニティ・シリーズ第18戦『アンベター・ヘルス200』は、前週アトランタに続いて快勝を飾ったジョン-ハンター・ネメチェク(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタGRスープラ)が、自身初の連勝を記録してシーズン4勝目を獲得。次世代スター候補と目される26歳が、今季シリーズ最多勝ドライバーとしてチャンピオンシップをリードしている。
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