■国道名の呼び名には様々な法則がある
私たちの生活と密接に関わっている国道には「国道00号」などの数字が割り振られていますが、この数字をもじって、例えば国道246号なら「ニーヨンロク」と呼んだりするのは一般的です。
しかし埼玉県を中心に関東地方を縦走する国道122号だけは「ワンツーツー」と称されているようです。なぜ英語読みされているのでしょうか。
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日本全国の津々浦々に459路線が走る国道は、正式には「一般国道」と呼ばれ、その総延長は約5万キロに及びます。
それぞれ番号が割り振られており、1号から507号まで存在しています。路線数459に対して48も数が多いのは、59号から100号、109号から111号、214号から216号が欠番になっているためです。
欠番の理由は、1927年以降の国道には「一級国道」と「二級国道」があった名残です。
当初は一級国道に1号から40号、二級国道には101号から240号が充てられていたのですが、1956年から1963年にかけて、41号から57号、245号から271号が追加されています
1963年にはさらに、二級国道の一部が一級国道に格上げされたのですが、前述の48号分はそのまま欠番となったため、現在も該当する国道番号がない状態が続いています。
その後1965年に一級国道・二級国道は一般国道へ1本化されましたが、以降も、国道の追加指定は数回に分けて実施され、1993年以降は、現在の本数で推移しています。
そんな国道の多くが、地域で「通称」名を持っています。
もっとも一般的に知られているのは、歴史的な街道を国道がトレースしている場合に、そのまま通称名とされるケースです。
国道1号(東京都中央区から大阪府大阪市)なら「東海道」、国道20号(東京都中央区から長野県塩尻市)では「甲州街道」といった例が全国で広く見られます。
このほかにも“三三七拍子”と国道337号(北海道千歳市から小樽市)をかけた「手拍手街道」、国道なのに一部が階段(!)で構成されている国道339号(青森県弘前市から東津軽郡外ヶ浜町)「階段国道」など、変わった理由からつけられた通称もあります。
その一方で、国道の数字の読み方や語呂合わせをそのまま通称にするパターンも数多くみられます。
例えば国道1号では「イチコク」「コクイチ」(地域によって呼び方に違いあり)、一部区間が「青山通り」として知られる国道246号(東京都千代田区から静岡県沼津市)なら「ニーヨンロク」。
「湾岸道路(東京湾岸道路)」とも呼ばれている国道357号(千葉県千葉市から神奈川県横須賀市)は「サンゴーナナ」、国道36号(北海道札幌市から室蘭市)は「サブロク」、国道171号(京都府京都市南区から神戸市中央区)は「イナイチ」などと呼ばれます。
特に3桁国道の場合、「ニヒャクヨンジュウロク」とそのまま読むと長いため、いつからか略号のように使われるようになったと想像されます。
また国道175号(兵庫県明石市から京都府舞鶴市)が「イナゴ」、国道156号(岐阜県岐阜市から富山県高岡市)は「イチコロ」、「酷道」として有名な国道439号(徳島県徳島市から高知県四万十市)が「ヨサク(与作)」など、語呂合わせから生まれた楽しい通称もあります。
さらに、海上区間もあるめずらしい国道197号(高知県高知市から大分県大分市)は、かつて道路状態が良くなかったため、四国の一部区間で「イクナ(行くな)」と呼ばれていたこともありました。
■なぜ国道122号だけ英語読み「ワンツーツー」なの?
そのなかでも極めて特徴的な呼び方が、国道122号の「ワンツーツー」です。
呼んで字のごとく“122”を英数字に置き換えたものなのですが、他の通称がいずれも日本語なのに対し、英語読みなのが変わっています。
国道122号は、栃木県日光市を起点とし、足尾地方を経たのち群馬県桐生市・埼玉県加須市・さいたま市などを通って東京都豊島区に至る、総延長163.5kmの一般国道です。
埼玉県東部を縦走することから、沿線自治体にとって馴染みが深い国道で、場所によって銅街道(あかがねかいどう)、岩槻街道、北本通り(きたほんどおり)などの通称も持っています。
なお余談ですが、東京都内を始点とせず終点にしている国道は、この122号と139号(静岡県富士市から東京都西多摩郡奥多摩町)のみです。
しかしこの「ワンツーツー」も、主に国道122号沿いの埼玉県・群馬県・栃木県のみで普及しており、特に群馬県・埼玉県ではごく普通の通称になっています。
そのため122号を「ワンツーツー」と呼ぶか呼ばないかで、埼玉県民かどうかがわかる、という例え話もあります。
実はこれ以外にも英語読みは存在し、同じく埼玉県を通り、122号とも交差する国道125号(千葉県香取市から埼玉県熊谷市)も「ワンツーファイブ」と称することもあるようです。
これら「ワンツーツー」「ワンツーファイブ」など「国道数字の英語読み」の由来にはいくつかあるようですが、トラックドライバーが無線で使っていた様々な暗号(スラング)のひとつだったのではないか、という説が有力なように筆者(遠藤イヅル)は考えます。
しかしいずれにせよ自然発生的な呼び名だったようで、ルーツがどこから来ているのかはもはや探りようがなく、しかも他の国道ではあまり類例を見ないのも不思議なところです。
※ ※ ※
日本人は、いろいろな言葉を短くて親しみやすい通称や愛称に置き換えることが得意です。
たしかに国道254号(東京都文京区から長野県松本市)を例にとれば、「ニヒャクゴジュウヨン」よりも、「ツーファイブフォー」より、「ニーゴーヨン」が読みやすいのは確かです。
国道122号に関しても、「ヒャクニジュウニ」「イチニーニ」よりも、誰かが呼び始めた「ワンツーツー」のほうが響きも良く、多くの人が使うようになったのではないでしょうか。
なおトラックドライバーの間では、国道23号(愛知県豊橋市から三重県伊勢市、一部区間で「名四国道」とも呼ばれる)を「ツースリー」と称することがあるのだとか。
みなさんに馴染みがある国道は、どのような通称で呼ばれているでしょうか。
[編集部注記:2023年5月13日、誤記を修正しました]
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