2021年、F1に日本人ドライバーが帰ってくる。角田裕毅である。角田は2014年の小林可夢偉(当時ケータハム)以来、日本人として実に7年ぶりのF1参戦ということになる。
日本人ドライバーが初めてF1世界選手権のレースにエントリーしたのは、1975年イギリスGPのこと。鮒子田寛がマキF101Cに乗り、F1の世界に挑んだのだ。しかし予選落ちに終わり決勝出走は叶わず、その後オランダGPにも挑んだが、やはり予選落ちだった。
■何事にも動じぬ驚異のメンタル。角田裕毅、勝負の1年は「誰よりも速く走るだけ」
日本人が決勝に出走したのは、鮒子田の挑戦から1年後、F1日本初開催となったF1世界選手権イン・ジャパン(富士スピードウェイ)でのことだった。このレースには4人の日本人ドライバーがスポット参戦し、うち高原敬武(サーティース)、星野一義(ティレル/ヒーローズ)、長谷見昌弘(コジマ)の3人が決勝に駒を進めた。このうち高原が9位、長谷見が11位と完走しているが、3人はいずれもウエットコンディションの中、海外のレギュラードライバーたちの度肝を抜く走りを披露してみせたのだった。
翌年同じく富士で行なわれた日本GPにも、星野と高原に加えて高橋国光(ティレル/メイリツ)が挑んだが、それを最後にしばらくの間、日本人ドライバーのF1挑戦が実現することはなかった。
しかし1987年、ひとりの日本人ドライバーがF1のレギュラーシートを手にした。中嶋悟は前年まで全日本F2選手権を3連覇。さらに1986年には国際F3000に全日本F2と並行してフル参戦し、1年目ながらランキング10位となった。この成績により、F1のシートを手にしたわけだ。
中嶋が加入したのは、ロータス。しかもチームメイトは、当時新進気鋭のアイルトン・セナだった。
メインスポンサーであるキャメルのカラーである黄色を纏った同年の愛車ロータス99Tには、当時ウイリアムズにも搭載されていたホンダV6ターボが積まれ、最新技術であるアクティブサスペンションも採用されていた。
ただそのアクティブサスペンションは、まだまだ熟成前の段階。当時使われていたコンピュータでは計算処理が追いつかないということもあり、トラブルが相次いだ。しかしマシンには速さがあり、セナは2勝を含む8回の表彰台を獲得。中嶋も表彰台獲得こそ叶わなかったが、イギリスGPの4位を含む4回の入賞を果たした。開幕戦ブラジルGPの7位は、日本人ドライバーのデビュー戦としては最上位である。また、中嶋が4位に入ったイギリスGPは、ホンダ勢が1-2-3-4位を独占したレースとして、あまりにも有名である。
ただこの年限りでロータスは、アクティブサスペンションの使用を一旦断念。翌1988年にはパッシブサスペンションの100Tを投入する。中嶋のチームメイトは、セナに代わり1987年王者のネルソン・ピケになった。しかしそのピケを持ってしてもシーズンを通して苦戦し、3位表彰台3回を記録するのが精一杯。中嶋も開幕戦の6位のみの、入賞1回に終わった(とはいえ10位までが入賞という現在の条件に置き換えれば、入賞7回/33ポイント獲得という形にはなる)。同じホンダV6ターボを使い、16戦15勝という大記録を達成したマクラーレンMP4/4とは対照的な結果だった。
話を1987年に戻せば、日本人ドライバーのデビューイヤーでいえば、最も成功したシーズンだったと言えるだろう。中嶋はF1を目指した理由を「自動車の運転の理想を試す場所」だったからだと以前語っていた。そして当時の日本の”F1バブル”とも言える時代を牽引する一員として、1991年まで活躍した。
そして今季、角田がF1デビューを迎える。角田は、中嶋が校長を務めていた鈴鹿サーキット・レーシングスクール(SRS)の卒業生。そして「僕には誰よりも速く走りたいという思いがある」と語っていたことがある。その言葉は、中嶋が「運転の理想」と語ったことと、相通ずるようにも感じられる。
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みんなのコメント
97年から鈴鹿で予選・レースを10年以上生で見た中で美しいなとイメージがあるのは、
Benetton B188、B189 March 881かCG891あたりかな、非力なNAエンジンで頑張ってました。
イギリスGPもウィリアムズが早すぎてロータスの2台は周回遅れだったし。