「エアコン」、「パワーステアリング」、「パワーウィンドウ」の3点セットが「フル装備」と呼ばれた、日本の自動車文化の黄金時代。生まれては消えていった様々な自動車の便利装備があった。人々の価値観が多様化したいま、改めてその価値を再評価したい便利装備を振り返ってみたい。
文/藤井順一、写真/スバル、トヨタ、日産、ホンダ、Tesla, Inc.、写真AC
リトラクタブルライトの復活もありえるかも!? いまこそ復活してほしい装備5選
利便性だけではなく一家団欒にも貢献!? 「フロントベンチシート」
前後センターシートをV字型に配し、3×2(スリー バイ ツー)の革新的パッケージを誇ったエディックス。センターシートに幅460mm以内の幼児用(チャイルド)シートおよび学童用(ジュニア)シートが使用可能だった
前列に独立した座席が3つ並び、前席に3人が乗車できる前席3人掛けのシート。現在ミニバンの主流となっている3列シート(2×2~3×3の7~8人乗り)とは異なる2列シート(3×3)で、多人数乗車を可能にする方式だ。
ステアリングの根元に配置した「コラムシフト」などを採用することで、前列シートを簡素でフラットなベンチ型のシートとすることができ、運転席から助手席への移動がスムーズとなり、手荷物を手の届く範囲に置ける、独立したシート形状よりも乗員との距離感が近いことなど、その利点はさまざまだ。
それもあってか、ミニバン勢が隆盛を誇った2000年前後に、前席3人掛けシートを持つクルマが国内メーカーから相次いでリリースされた。
代表的なのは1998年に発売された日産の「ティーノ」と2004年に発売されたホンダ「エディックス」だ(ティーノは前席2+1×後席3の6人乗り、エディックスは前席1+1+1×後席3の6人乗り)。
しかし、2列5人乗り、3列6~7人乗りまでが可能なコンパクトカーが相次いで発売されると、その存在価値が失われて失速。販売台数は伸び悩み、残念ながらその血筋は両者ともに1代で途絶えてしまった。
移動時に前席で家族団らんが叶う前席3人掛けのシートは、少子化対策の一助になる!? といったら、大げさかもしれないが、いまデビューしていたら、違う結果になっていたのではと感じるのは自分だけではないだろう。
これぞ究極にサステナブルな空調システム「三角窓」
回転して開閉し、開く角度を調節することで走行風を利用して車内に外気を取り込み、空調や換気機能を果たした
それなりに年齢を重ねた諸先輩方には懐かしく、Z世代の若者には新鮮に映るであろう、換気効果も抜群な天然の空調システム「三角窓」は、コロナ禍を経て、地球温暖化も叫ばれる現代において、見直されるべき自動車装備の歴史的アーカイブの一つだろう。
この三角窓は、クルマの走行中に走行風を室内に取り込むことができ、空調や換気として活用するしくみで、1950年代には多くのクルマに採用されていた。
一時代を築いた三角窓だったが、1960年代に入り、車両内に空気を取り込む「ベンチレーション」が普及したことのほか、安全性の問題、悪天候時の使いづらさ、風切り音の発生、車上荒らしの被害につながりやすいといったデメリットが指摘されるようになり、1970年代にはほぼ廃止されてしまった。
現在では懐かし装備の一つになり下がってしまったものの、走行風を活用したシンプルかつ経済的で、電力消費や二酸化炭素の排出もゼロの天然エアコンは、画期的なシステムといえなくもない。
また、冷房やエアコンが苦手な層が一定数存在している。エアコンで体調を崩す(寒暖差アレルギー)ような人にとっては、こうした選択肢が装備としてあったら喜ばれるかもしれない。
“マイベスト”のカセット編集を不要にした画期的発明「CDチェンジャー」
2002年式のスバル・「レガシー」に採用されていたMDプレーヤー&6連奏CDチェンジャー。スロットイン方式で6枚のCDを視聴できた
カーオーディオの主要な音楽ソースがカセットテープからCDへと移り変わった頃、それまで、1枚聴き終えたら、別の音源をセットするのが当たり前だった時代に、革命をもたらしたのが「CDチェンジャー」だった。
トランクに設置した直方体の黒いデッキに、複数枚のCDをまとめたマガジンをセットすることで、運転中に音源を差し替える必要のあった従来のカーオーディオとは異なり、複数枚のお気に入りのCDから気分で好きな曲を視聴することが可能に。
そんなCDチェンジャーはまさに別次元の視聴体験だった。
かつて、バブル前後に青春を謳歌した世代にとって、愛車でのデートは「MY BEST」なるタイトルを付けた恋愛ソングを編集した“ハイポジ”カセットテープとともにあったハズだが、このCDチェンジャーの登場とともに、そうした“仕込み”の作業は不要になった。
当初は複数のCDを収めるという性質上、スペースに余裕のあるトランクへの設置が基本となっていたが、最盛期には小型化が進み、グローブボックスや1DIN、2DINスペースに収まるものが開発されたほか、最終的は50連奏+1枚(!?)という圧巻の連続視聴を可能とする製品も誕生した。
その後、カーオーディオにおける音楽ソースの覇権はCDから、MiniDiskなどを経て、手軽さやサイズ、容量、経済性などにおいて勝るMP3などのオーディオファイルを記録したUSBメモリやSDカード、iPod、スマートフォンでの音楽配信サービスの普及でその役割を終えたことはご承知の通り。
物理的な音飛びの問題もあるが、車内で自身所有の音源を好きなアレンジで聞けること、懐かしのジュークボックスのような郷愁、地方の山岳地帯など電波の届きにくい場所でも聞けるなど、CDチェンジャーには現代にも通用するメリットがある。
旧車から受け継ぐ自動車装備の“生ける化石”「フェンダーミラー」
国産唯一のタクシー仕様車「ジャパンタクシー」は現行車では唯一、標準仕様でフェンダーミラーを装着している
左右の後方を確認するミラーは、現在のようなドアミラーが採用される以前はボンネット前方に設置する「フェンダーミラー」が一般的だった。
フェンダーミラーにはドアミラーに比べて、視線移動が少ないという安全面でのメリットがある。目線の移動が少ないことは疲労感の軽減にもつながる。また、ミラーに映る範囲が広くなるために視界も広めに確保でき、車幅の感覚をつかみやすいなどの利点もある。
さらにドアミラーより車体からのはみ出しが少なくなるため、狭い道での取り回しにおいても優れ、空力特性的にも有利とされる。
一方で、ドアミラーよりも鏡面が小さいためにミラーに写る鏡像が小さくなってしまう、電動調整がない場合、角度調整が面倒、雨天時には水滴で視界が悪くなりやすいというのが難点。
そしてフェンダーミラー絶滅の大きな要因が、歩行者と接触した際に与えるダメージが大きいという安全性の問題だ。
このように清濁あわせ持つフェンダーミラーだが、タクシーやハイヤー、公用車の一部ではいまだ採用が続いている。
だが、これには先に挙げたメリットとは別の理由があるらしい。それはドライバーが助手席側後部座席に座る要人や乗客を確認する際、助手席側のミラー越しに後席の乗客とドライバーの目線が合ってしまうことを避けるため。
フェンダーミラーなら目線を移す程度ですむが、ドアミラーは目線だけでなく顔を助手席側へいくらか向ける必要があり、この所作が後部座席の人の目に「ドライバーが聞き耳をたてている」と映ってしまわないようにという配慮があるらしい。
つまり、フェンダーミラーとは、“察しと思いやり”という実に日本的な思想に溢れた装備であり、いわゆる“ショーファードリブン(お抱えの運転手が運転するためのクルマ)”においては、世界に誇るおもてなし装備なのである。
「ガルウイング」といえば、スーパーカーという常識を覆したニッポンのクルマ
ルーフ中央付近にヒンジがあり、グラスエリアが大きいわりに、開閉できるガラス部分が小さい「チケットウィンドウ」なるウィンドウを持っていたマツダの「AZ-1」
ガルウイングのガルはカモメ、ウイングは翼。ドアを開いたときの形状が、カモメが翼を広げて滑空している様に似ているこつが名づけられた。ただし、長らくスーパーカーのための装備というイメージだった。
そんな常識を覆したのがマツダから1992年に発売されたミドシップの軽スポーツ「AZ-1」や翌年にトヨタから発売された「セラ」だ。
ただし「セラ」は斜め上にドアを開いたときの様がチョウが羽根を広げているように見えることから、正確にはバタフライドアと呼ばれるが、一般的にはそうした類のドアもひっくるめてガルウイングと呼ばれることが多い。
デザイン性重視のように思われがちなガルウイングだが、実は、ボディ剛性を上げるための苦肉の策。
車両のボディ剛性を上げるためには、サイドシルを高く、ワイドにする必要があったが、一般的なヒンジ型のドアでは乗り込みづらく、その解決策としてガルウイングが採用されることになったのだ。
また、ドアを全開にしたときでも横にハミ出す量が少なく、一般的なドアよりも開口部を広くでき乗降しやすくできるというメリットもある。
その反面、ドアを開ける際には、屋内の駐車スペースで高さに注意が必要だったり、ドアを開けた状態にキープするために強力なダンパーがついているため座った状態でドアを閉める際には力がいる、横転事故の際に脱出しづらいなどのデメリットがある。
いずれにせよ、セールス的にイマイチだったことから、国産車でガルウイングを採用するクルマは皆無に……。それでもおやじ世代にとっては、ガルウイングはロマンたっぷりの魅惑の装備であることは間違いない。
歴史的な価値とともに普遍性も備えた自動車装備の復権
天井高はともかく、狭い駐車スペースでの乗降性を考えて作られたガルウイングが印象的なテスラのモデルX。正式名称は「ファルコンウィングドア」
BEVのトップブランドであるテスラの「モデルX」の後席ドアにガルウイングが採用され、某国民的オープンスポーツの次世代車にはリトラクタブルライトが復活するなんて噂も耳にする。
時代とともに姿を消した自動車装備のなかには、改めて価値が見直され、現代的な進化を加えた上で採用されているものも少なくない。暮らしに対する価値観や自動車に求められる性能が激変したいま、絶滅した装備を復活させる取り組みは、いちクルマ好きとして大いに歓迎したい。
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みんなのコメント
昔は8ウエイシートとかシートの機能を売りにしている車が多かった。
セリカに乗っていたが、シートに手動のランバーサポートがついてて、
長距離とか運転したとき、ランバーサポートを動かすと腰が楽だった。