F1マシンと同等の速さ
レッドブルRB17は、F1マシンよりも速いラップを刻むドラマチックなサーキット専用ハイパーカーだと、生みの親であるエイドリアン・ニューウェイ氏は言う。
【画像】レッドブルF1のノウハウ満載! 50台限定ハイパーカー【レッドブルRB17を写真で見る】 全6枚
英国に本拠地を置くレーシングコンストラクター、レッドブル・レーシングが7月12日、新型ハイパーカー「RB17」を披露した。デザイン界のレジェンドであるニューウェイ氏がレッドブルに残した最後の作品であり、限定50台が生産される予定だ。
RB17はコスワース製V10自然吸気エンジンをベースとする合計出力1200psのハイブリッドシステムを搭載し、最高速度350km/hを超える。開発プロジェクトは3年前に始動し、今夏にダイナモでの試運転を行った後、来年夏のサーキットテストで初めて走行する予定だ。
レッドブル・レーシングのクリスチャン・ホーナー代表は、このマシンを開発した動機としてレギュレーションやF1のコスト上限に縛られないことを挙げ、「クソ高いんだ(f**king expensive)」と話した。
RB17はアストン マーティン・ヴァルキリーの後継車のようなものだ。今はなきアストンとレッドブルの提携時代に、ニューウェイ氏が開発に深く関わったロードカーである。しかし、ヴァルキリーが公道走行を前提に設計されていたのに対し、RB17はレッドブル・アドバンスト・テクノロジーズの約120人のエンジニアからなるチームによって生み出された純粋なサーキット用マシンである。
そのスペックはまるでニューウェイ氏のベストアルバムのようだ。マクラーレン、ウィリアムズ、レッドブルなどのチームで活躍し、F1界で最も偉大なデザイナーとして広く知られる彼が開拓してきたアクティブ・エアロダイナミクスとサスペンション・システムを搭載している。
ニューウェイ氏はAUTOCARの取材に対し、このプロジェクトには3つの基本目標があると語っている。
第1に見た目を良くすること。「このレベルでは、クルマは芸術品と考えるべき」
第2に音を良くすること。
第3に、F1ドライバーに限らず「すべての人が外に出て、楽しみ、上達できる」ようにすること。
膨大な数のテクノロジーが搭載され、あらゆるシステムで高度なアジャスタビリティを実現している。驚異的なパフォーマンスを発揮する一方で、経験の浅いドライバーにとっても扱いやすく、活用しやすいものを目指した。
「それなりのサーキット経験さえあれば、最初から楽しめるクルマです。しかし、究極のパフォーマンス・レベルであれば、F1並のラップタイムも可能です」とニューウェイ氏は言う。
サーキット専用のV10ハイブリッド
当初の計画では、V8ツインターボエンジンで後輪を、電気モーターで前輪を駆動する四輪駆動にする予定だった。しかし、最終的にはコスワースが開発したV10自然吸気エンジンが採用され、よりオーソドックスなハイブリッドシステムが組み合わされる。
V10単体で最高出力1000psを発生し、最大回転数は1万5000rpmに達する。カーボンファイバー製トランスミッションに200psの電気モーターが組み合わされ、モーターは発進加速をアシストするだけでなく、スターターモーターやリバースギアの役割も果たす。
車両重量は、エアコンやフロントガラスなどを除いた最も軽い状態でわずか805kg。全長約5m、全幅約2mである。
今回英国で公開された実寸大モデルは、昨年8月にデザインされたものである。ニューウェイ氏によると、その後の開発作業によって「少し小さくなっている」という。
タイヤは3種類から選べる。いずれもRB17用にミシュランと共同開発されたもので、マシンのポテンシャルを最大限に引き出すスリックタイヤも含まれる。
公道走行はできないが、ニューウェイ氏によれば顧客の希望次第で公道向けに改造することも可能なようだ。工場出荷時はサーキット専用車であるため、排出ガスや安全性に関する法規制には拘束されないが、LMHのモータースポーツ安全規制に準拠しているという。
RB17に既存のレースシリーズに参戦する資格はないが、レッドブルが顧客向けにサーキット走行体験を提供する。
今後、フェルスタッペン選手らF1ドライバーが開発を支援する一方で、より幅広いドライバーたちも招待されてテストに参加し、扱いやすいマシンへと仕上げていく。
レッドブルは2年間で50台を自社生産する。エンジンがホンダ製ではなくコスワース製であることを除けば、F1マシンと同じサプライヤーを使用する。
伝説的技術者の最後の仕事
以下、レッドブル・テクノロジー・グループ、チーフ・テクニカル・オフィサーのエイドリアン・ニューウェイ氏とのQ&A。
――なぜレッドブルはこのマシンを作ろうと決めたのですか?
「レッドブルは常に最高レベルのことを行い、新たなランドマークを作りたいと考えています。少し傲慢に聞こえるかもしれませんが、RB17はランドマーク的なクルマとして語り継がれると思います」
「サーキットに到着してヘルメットをかぶり、キーを回してピットレーンを走り去り、F1のラップタイムを出すことができるクルマです。これはまったくユニークなことだと思います」
――アストン マーティン・ヴァルキリーとの違いは?
「実のところ、両車はまったく異なるプロジェクトです。ヴァルキリーは、レッドブル・アドバンスト・テクノロジーズが2014年に手掛けた最初のプロジェクトでした。非常に若くて経験の浅いチームで、そのようなプロジェクトはやったことがありませんでした。チームはそれ以来ずっと一緒に行動し、経験も人数も大きく成長しました。研究段階でより多くの時間を割いたことも相まって、より多くの宿題をこなし、ファウンドリーを行う機会を得ました」
「このクルマには、ヴァルキリーにはないものがたくさんあります。室内には収納スペースがあり、ヘルメット2個とバッグ2個が入るラゲッジスペースがある。エンジンはソリッドマウントではなくラバーマウントを採用し、キャビンの騒音レベルを下げています。その結果、重量が10kg重くなりましたが、これはバランスのとれた製品を生み出すための解決策です。キャビンにいると燃焼音が聞こえてきます」
――V8からV10に変更した理由は?
V8ツインターボからスタートしたのは、内燃機関から約1000psが必要だったからです。目標としていたエンジン重量(150kg)でそれを達成するにはターボしかありませんでした。それからパワートレイン部門と協力し、自然吸気エンジンからパワーを引き出すにはどうすればいいかを検討し始めました。答えは回転数でしたが、どうすれば高回転を実現できるのか? それはバルブスプリングではなく空気圧バルブにすることで実現できました」
「重さ150kg、1万5000rpmで1000psを発揮する自然吸気V10を実現するために、耐久性向上のための作業を続けているところです」
――スタイリングにも携わったのですか?
「(F1では)ストップウォッチが支配者なので、エアロは見た目よりもパフォーマンスを重視しなければなりません。とはいえ、エレガントに美しく見えることもよくあると思います。スピットファイア、コンコルド、ブルーバードがそのわかりやすい例でしょう。わたし達は絵を描くとき、見栄えもよくエレガントなソリューションを考え出そうと意識しています」
――ドライビング・エクスペリエンスはどのようなものですか?
「ドライビング・エクスペリエンスとしてはアナログ的なもので、特にコーナーでのバランスやスピードに関しては、すべてノブやスイッチで調整できます。ノートパソコンを使わなくても、クルマに乗ってノブやスイッチを操作するだけでチューニングできるようなクルマにしたい。現実には、スイッチと操作機構の間で何が起こるかは電子制御されることになります」
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