マクラーレンP1の人気は今後もさらに高まる傾向
2024年5月31日~6月1日にRMサザビーズがカナダ・トロントで開催したオークションにおいてマクラーレン「P1」が出品されました。375台限定で2013年から2015年にわたって生産されたP1ですが、この個体はシリアルナンバーに「108」が打刻された2015年式のモデルでした。
約3億円と新車価格の3倍になったマクラーレン「P1」は、フェラーリ「デイトナ」と同じパターンのシートなどオプション満載でした
カーボンモノコックの重量は90.7キロ!
マクラーレンにとって、歴史の分岐点となる1台と表現してもよいニューモデルだった。2011年のパリ・サロンでプロトタイプが公開。そして2013年のジュネーブ・ショーでプロダクションモデルが発表されたのが「P1」だった。P12の社内コードで開発が進められたこのモデルは、同じくP11を掲げたMP4-12Cで自社ブランドのスーパースポーツを市場に投じることに復活を遂げたマクラーレンにとって究極の、のちにアルティメットと呼ばれるシリーズの第一弾となったことでも知られている。
P1というネーミングには、さまざまな意味が込められている。パフォーマンス、ポール・ポジション、そしてF1GPの世界においてつねにマクラーレン・レーシングがその最も高い位置を目指してきたポディウム(表彰台)。実際にP1で実現されたメカニズムやパフォーマンスを再考してみても、それは現在においてもマクラーレンの地位を堂々と再認識させるマシンであり、また現在の最新ハイパーカーと比較しても、その存在感は変わらず大きい。
そのルーツに忠実なマクラーレンは、このP1においても重量と機能を極限まで追求することに努めてきた。その核となるカーボンモノコックは重量がわずかに90.7kg。ボディデザインはエアロダイナミクスを最適化した結果誕生した造形。そのデザインを担当したフランク・ステファンソン独自の理論であるシュリンクド・ラップ、すなわち機能をできるだけ小さなパッケージで包み込むという手法で、見た目にも流麗な高性能なエアロダイナミクスを想像させるボディが完成された。
F1由来のダウンフォース・リダクション・システムを採用
リアに備わる可変式のウイングは、オンロード・モードでの120mmからレース・モードでの300mmまで高さが変化する。ダウンフォースの最大値は257km/h走行時に発揮され、その数字は600kgと、これもまた魅力的なスペックだ。高速域でこのダウンフォースによる抵抗を低減するためのF1由来のDRS(ダウンフォース・リダクション・システム)を備えることもP1の技術的特徴のひとつ。ドライバーはステアリングホイール上に備わるスイッチで、自由にこのDRSを作動させることができる。
ミッドに搭載されるパワーユニットは、3.8Lのフラットプレーン型V型8気筒ツインターボにエレクトリックモーターを組み合わせたもの。エンジン本体の最高出力は737psとされ、さらに179psを発揮するエレクトリックモーターがこれをサポートする。システム全体の最高出力は916psに達した。マクラーレンがIPAS(インスタント・パワー・アシスト・システム)と呼ぶこのハイブリッドシステムもまた、F1マシンに採用されていたKERSを進化させたもので、0-100km/h加速で2.8秒、最高速では350km/hという驚くべきハイパフォーマンスの一方、最高速では150km/h、距離にして約10kmのEV走行も可能にするPHEVとしての機能も持ち合わせていた。
走行距離は3061kmと少ない
マクラーレンはこのP1を375台の限定で2013年から2015年にわたって生産するが、今回その中の1台、シリアルナンバーで「108」が打刻された2015年式のモデルが、RMサザビーズがカナダのトロントで開催したオークション、「デア・トゥ・ドリーム・コレクション」に登場した。現在までの走行距離はわずかに1913マイル(約3061km)。MSOによるビスポーク・プログラムに10万ドル以上を投じ、ボディをガルフカラーで彩るなど、さまざまな特徴を持つアメリカ仕様のP1。
それは当然のことながらこのオークションで大きな話題となった1台であった。気になるエスティメート(推定落札価格)は、175万ドル~225万ドル(約2億5314万円~3億2547万円)と掲げられ、結果的に209万5000ドル(邦貨換算約3億307万円)での落札となった。マクラーレンP1の人気は今後もさらに高まる傾向にあることは間違いのないところだ。
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