2018年、英国版AUTOCARはロードテストをスタートさせてから90周年の節目を迎えた。われわれは常に、クルマの持つ様々な面を判断し伝えるべく、厳しい評価を行ってきた。それには最高速度も含まれている。
1928年、昭和3年、FIA公認記録によれば、既に地上での最高速度は334km/hに達している。記録したのは米国のホワイト・トリプレックス号。30万年にも及ぶ人類史の中で、地上で最も速く移動した記録であり、ドライバーはそのスピードを体験した唯一の人間だった。ちなみに日本では、1925年にようやく国産初の乗用車オートモ号が完成した頃だ。
2018年の今なら、お金に余裕があるという条件付きだが、ベントレーのショールームでクルマを買って、1928年当時の最高速度を、誰でも体験することができる。ドライバーは労力を使うことなく、極めてラグジュアリーで信頼性や安全性も高いコンチネンタルGT W12を駆って、当時最速だった男を超えるスピードを出すことも、条件さえ許せば難しくはない。ここ90年で得た自動車の進化は、かなり大きなものだといえる。
近年になっても最高速度の更新は、止まることを知らない。今回は発売当時、予算が許せば誰でも購入することができた量産車での、最高速度の記録を振り返ってみたい。1900年から始まり、10年毎に追ってみよう。
1900年代:メルセデス・シンプレックス60HP(117km/h)
世界初の内燃機関(Internal Combustion Engines:ICE)は、非力で、信頼性も低かった。内燃機関で走行する世界初の自動車、ベンツ・パテント・モトールヴァーゲンが初めて走行した1885年から十数年間は、自動車の動力としても、専ら信頼性が高い蒸気機関が用いられている。1890年代の最も高速だった自動車も、アメリカのスタンレー自動車会社が生み出した蒸気機関を積んだクルマで、56km/hのスピードを出せた。ベンツといえば、16km/hがやっとだった。
しかし、内燃機関は急速に技術改良が進む。1903年に高級車として誕生したメルセデス・シンプレックス60HPは、9293ccの直列4気筒エンジンから、91psを発生。この強力なエンジンのおかげで、最高速度は117km/hに達する。さらに1904年、強力に改造された1台限りの特別仕様で156km/hを出し、自身の記録を破っている。
1910年代:オーストリア・ダイムラー・プリンス・ヘンリー(137km/h)
オーストリアの自動車メーカー、アウストロ・ダイムラー社のクルマには5714ccの直列4気筒エンジンが搭載され、96psを発生。このクルマを設計したのは、あの、フェルディナント・ポルシェ。彼の発想は、どこから湧き出ていたのだろうか。
1920年代:デューゼンバーグ・モデルJ(192km/h)
アメリカの自動車メーカー、デューゼンバーグ。モデルJには6900ccの直列8気筒エンジンが積まれ、最高出力は268psを誇った。さらにこのクルマには、ツインプレートクラッチや電動の機械式燃料ポンプ、油圧サーボブレーキなど、現代でも見られる様々な画期的な技術を搭載していた。約430台が製造されている。
1930年代:デューゼンバーグ・モデルSJ(225km/h)
最高速の記録に満足せず、世界恐慌の暗雲にもめげず、デューゼンバーグはモデルJの記録を、スーパーチャージャーを搭載したモデルSJで1932年に破る。エンジンは324psを発生し、2速でも167km/hに到達した。
しかし、このアメリカ製のクルマは、運命には恵まれなかった。会社の設立者であるフレッド・デューゼンバーグは、自動車事故で、SJの発表からわずか2ヶ月後に命を落としてしまう。加えて深刻な不景気によって、会社自体も1937年に倒産したのだった。
モデルSJは36台のみが製造された。全長の短いSSJと呼ばれるモデルも作られ、映画俳優のゲイリー・クーパーが所有していたクルマは、2018年のオークションで1800万ドル(20億円)という価格で落札された。これまでアメリカで製造されたクルマの中で、最も高い価格を付けたクルマとなった。
1940年代:ジャガーXK120(214km/h)
1948年のロンドン・モーターショーの花形となった、ジャガーXK。164psを発生させたXKは、第二次大戦後のジャガーの再出発を力強く後押しした。XKに続く数字は当時のマイル表示での最高速度。さらに軽く手が加えられた3441ccの直列6気筒エンジンで、1949年に214km/hの最高速度を出し、量産車の記録を塗り替えた。1953年までの間に、1万2045台が製造されている。
1950年代:メルセデス・ベンツ300SL(245km/h)
一般的に、メルセデス・ベンツ300SLが史上初のフュエル・インジェクション車だと思われがちだが、実際はあまり知られていない、ゴリアテGP700というクルマが正解だったりする。
映画スターにも愛されたガルウィング・ドアだが、それはこのクルマの素晴らしい特徴のひとつに過ぎなかった。車高が低く、華麗な流線型のボディに宝石のようなフロントグリル。ホイールアーチの上にレイアウトされたブリスターフェンダーなど、今でも目を引くスタイリングだといえる。第二次大戦で疲弊したドイツと、欧州各国にとって、300SLは復興の象徴でもあった。
ちなみに、218psを発生させる2996ccの直列6気筒エンジンのオリジナルは、戦中にまで遡る。第二次大戦のドイツの戦闘機、メッサーシュミットBf109に搭載されていた、ダイムラー・ベンツ製のV型12気筒を由来とするものなのだ。
1960年代:ランボルギーニ・ミウラ(282km/h)
内に秘めたパワーを表すかのような、ロー・アンド・ワイドなプロポーションに、引き締まった筋肉質なフォルム。ミウラの魅力は、登場から50年以上たった今でも陰ることはない。高速域でのフロント・リフトも気にしてはいけない。エアロダイナミクスに支配される前の、永遠のスーパーカーなのだから。ミドシップされたV型12気筒エンジンは349psを発生させた。
1970年代:フェラーリ512ベルリネッタ・ボクサー(302km/h)
ランボルギーニ・ミウラのヒットと、その最高速度を見せつけられたフェラーリは、デイトナに続く後継モデルに、ミドシップ・レイアウトという選択を迫られることになる。初期モデルの365GT4に続いて、1976年に登場した4942ccの水平対向12気筒エンジンを搭載する512は、339psを発生させた。
最高速度は、フェラーリの公称値では302km/hとされていたが、1978年にわれわれがテストした際は、262km/hを超えることはなかった。それでも、このフェラーリへの愛は変わらない。
1980年代:フェラーリF40(323km/h)
フェラーリ308の頃までの、グラスハウスのシルエットには繊細な美しさがあったが、F40の美しさは別の次元にある。溢れんばかりのパワーを一般道で発揮するために備えた、機能美とでもいえよう。見る角度によっては荒々しいが、またそれも魅力だと思う。2936ccのV8ツインターボをミドシップし、最高出力は477psを誇る。
1990年代:マクラーレンF1(386km/h)
税別で53万ポンド(7845万円)の価格のクルマを開発するなら、もはやスペックや仕様は思い通りともいえる。マクラーレンF1が、カーボンファイバー製のモノコックを採用することができた理由だろう。夏場でも快適に大人3人が座れるコクピットを持ち、最高速度386km/hを誇るスーパーカーは、極限まで軽量化を追求しながらも、離陸はしない。BMW製の6064ccV型12気筒エンジンは、626psを絞り出した。販売価格が4桁万円後半にもなれば、当然かもしれない。
マクラーレンは間もなく、3シーターのニューモデル、スピードテイルを発表する予定。偉大な先駆者、F1のスピリットを直接的に受け継ぐモデルとなるだろう。この新型は、1.6kmを15秒で走り切る能力があるとされている。106台の限定となるが、既にすべてオーナーは決まっているようだ。
2000年代:シェルビー・アルティメット・エアロTT(412km/h)
デューゼンバーグ社の倒産以降、最高速度記録は、ヨーローッパのメーカーが打ち立ててきた。しかし、21世紀を迎え、アメリカのシェルビー社がその流れを変えた。コルベットC5が搭載する6345ccのV8エンジンをチューニングし、1200psを発生させるモンスターマシンによって。このクルマにはABSやトラクション・コントロールの設定はなく、ドライブにはかなりの注意も求められる。
新車当時、アメリカでは55万ドル(6215万円)、英国では33万5000ポンド(4958万円)で販売されたが、現在でも中古車サイトで50万ドル(5650万円)前後出せば、探すことができる。
2010年代:ケーニグセグ・アゲーラRS(447km/h)
ブガッティ・ヴェイロンの最高速度記録を、2005年にシェルビーが塗り替えたことで、闘争心に火が付いたブガッティ。7993ccのW16気筒エンジンから1217psを繰り出す、ヴェイロン16.4スーパースポーツを発表し、2010年に431km/hの最高速度を記録した。
さらに2017年に入ると、スウェーデンのケーニグセグ・アゲーラRSが、1380psを発生させる5000ccのV8ツインターボ・エンジンで447km/hの最高速度を叩き出している。
その一方で、アメリカのヘネシー社が、史上初の300mph(482km/h)の壁を破る市販車を目指し、7.4ℓのV型8気筒ツインターボで1600ps以上を誇るヴェノムF5を開発中。残り1年と数ヶ月。2010年代の最高速度記録は破られるのだろうか。
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