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“不死鳥”ウィケンス、IMSAのGTDクラスに参戦! インディカーでのクラッシュで下半身不随もレースへの情熱は燃え続ける

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“不死鳥”ウィケンス、IMSAのGTDクラスに参戦! インディカーでのクラッシュで下半身不随もレースへの情熱は燃え続ける

 ロバート・ウィケンスが2025年、IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権のGTDクラスにDXDTレーシングから参戦。36号車シボレー・コルベットZ06 GT3.Rのステアリングを握ってスプリントラウンド5戦を戦う。

 ウィケンスは、2018年にインディカーデビューを果たすと、開幕戦のセントピーターズバーグでいきなりポールポジションを獲得。2戦目のフェニックスで優勝争いを演じ2位となるなど、その印象的なパフォーマンスがファンを魅了した。

■障害があっても諦めない! ロバート・ウィケンス、脊髄損傷のハンデ乗り越えインディ500参戦目指す。ただ実現に向け課題は多い?

 しかし第14戦ポコノで悲劇が起こる。7周目に3番手を争う中で他車と接触。他のマシンに乗り上げる形となったウィケンスのマシンは宙を舞い、コース外側のデブリキャッチフェンスに激突した。

 ウィケンスはこのクラッシュで脊髄損傷、肺挫傷、頚椎・胸部脊椎・両足脛骨・腓骨・両手、右前腕・肘・肋骨の骨折という重症を負い、下半身不随となってしまった。

 それでもウィケンスはレースへの情熱を失わず、事故から約3年後、IMSAのミシュラン・パイロット・チャレンジでレース活動に復帰。ブライアン・ハータ・オートスポート(BHA)のマシンに、ハンド・コントロールシステムを搭載し、レースを戦った。

 そして2022年6月のワトキンスグレン2時間レースで、ヒョンデ『エラントラN』を駆り、ウィケンスはTCRクラスでレース復帰後初優勝を遂げた。

 昨年には、未勝利ながらハリー・ゴッツァッカーとともに7回の表彰台を獲得し、IMSAパイロット・チャレンジTCRのタイトルを獲得したウィケンス。2025年はステップアップを果たし、IMSAのGTDクラスに参戦。彼がドライブするコルベットには、新しい電子ハンドブレーキ制御システムが特別に装備されている。

 このシステムはゼネラルモーターズ、プラット・ミラー、ボッシュの3社で開発されたフルブレーキ・バイ・ワイヤの電子ブレーキシステムとなっている。

 現在35歳のウィケンスは、IMSAのシートを獲得し、特注のブレーキシステムを設計するうえで「OEMやチーム・オーナーを説得するのは常に難しいコミュニケーションだった」と明かした。

参入を阻む最大の障壁は、技術の利用可能性なのか、それともチームからの予算的な懸念なのかという質問に対し、ウィケンスは「それは”鶏が先か、卵が先か”という話だと思う。たいていのことは、どちらか一方が欠けても成り立たないものだからね」と説明した。

「ボッシュとパートナーシップを結ぶ前に、多くの人と話をした。ブレーキ・バイ・ワイヤーはもうそれほど近代的なテクノロジーではない」

「テクノロジーが存在することを知っていても、それをどのように実装するのかなど、その他諸々は常に困難な課題だった」

「レーシングチームはどこも効率的な運営を行なっているが、そのために既存のプロジェクトから外して、存在しないブレーキシステムを開発する仕事に回せるような余剰人員はない」

「そこで、ボッシュが僕と提携してくれたんだ。それによってそういう要素はすべて排除されたんだ」

 ウィケンスの最大の望みは、「様々なレースシートで普通のドライバーとして評価されること」であり、「もしその仕事を得るのに十分な速さがあれば、できればその仕事を得たい」と考えていたが、そのような評価の機会を得るのは難しいことがわかっていたという。

「それは難しいことだということは分かっていた。例えば、あなたと会話をして、あなたが僕をテストで走らせることに興味を持つかもしれない。それから『ええと、どうやって我々は彼をクルマに乗せるんだ?』となる。最初のチャンスを得るために、何ヵ月も計画や開発、その他諸々を費やすことになる」

「ボッシュのシステムを使えば、問題の大部分は解決され、あとは一緒に走るレースカーにどうシステムを適合させるかだ」

「だから、ひとつだけ言うとすれば、最大の制約は常に予算だった。モータースポーツでは何事にも予算的な制約がつきまとうものだけど、ありがたいことに、DXDT、ゼネラルモーターズ、ボッシュ、そして他のみんなと、素晴らしいサポートが僕を支えてくれているんだ」

 ウイケンスは、コルベットに搭載するシステムはすでにレースでも使ったことがあるが、マシンに搭載するための改造は現在進行中だという。

「ゼロに近い状態からのスタートだから、開発を見るのは本当にクールだよ。(マシンを製造する)プラット&ミラー社にはもう行った。ステアリングホイールやハンドコントロールの3Dプリント、ラピッドプロダクションのコンセプト、そして微調整のようなものを見たんだ」

「最終的にはオーダーメイドなんだ。ユニークな状況だよ。スロットルもブレーキも、すべて自分の思い通りにできるドライバーなんて、F1とかでない限り、そうそういないからね!」

 ウィケンスは、TCRで使われている油圧のコンポーネントから離れることで、他のカテゴリーに参戦する道がスムーズになると語り、プロトタイプカーを走らせるIMSAのGTPクラスの名前も興味の対象として挙げた。

 しかし彼はIMSAのビッグイベントで総合優勝を争う機会を模索することに興味があると示唆する一方で、GTDクラスのレギュラードライバーになることを喜び、2026年にはフルタイム参戦も視野に入れていると語った。

「絶対はないよ、そうだよね?」

「僕にとって、そして僕の人生において、GTDでゼネラルモーターズと10年のキャリアを築けば、幸せな引退を迎えられると思うね」

 ウィケンスはハンド・コントロールの使用に適応し続ける中で、2018年並みのパフォーマンスを発揮するためには「まだやるべきことがある」と考えているが、TCRでは前輪駆動だったマシンが、後輪駆動のコルベットに変わることで「もう少し自分のドライビング・スタイルに合うだろう」と予想している。

「ロングビーチ(4月の第3戦)に着く頃には誰にもペースを譲ることなく、ポールポジション、優勝、ファステストラップ、そのすべてを獲得するのが夢だ」と彼は付け加えた。

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みんなのコメント

1件
  • エガちゃんねらー
    俺みたいな半端もんの走り屋風情と
    プロレーサーが決定的に違うのが鋼のメンタル
    以前軽いクラッシュを喰らったコーナーで
    未だにアクセルを踏み切れないでいる
    ところがレーサーは怪我をした後でも
    本気で攻めていくんだよな
    ま、悪く言うと頭のネジが飛んでるんだが
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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