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3000万円でもリーズナブル!? ザガート製フェラーリとランチアにプレ値はつくか?

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3000万円でもリーズナブル!? ザガート製フェラーリとランチアにプレ値はつくか?

■数年前の約半値になったザガート

 世界のクラシックカー/コレクターズカー・マーケットにおける年ごとの指標は、毎年1月下旬にアメリカ・アリゾナ州スコッツデールで開催される、主にアメリカ系ハウスを中核としたオークション群と、翌2月のパリ「レトロモビル」に際して開催される欧州系ハウスによるオークション群によっておおむねの観測が見えてくるのが、現代における不文律となっている。

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 そして、依然として新型コロナ禍の収まらない2021年は、パリの「レトロモビル」も本来の2月から6月第一週に延期されることが既に決まっているものの、付随するオークションはイベント公式の仏「ARTCURIAL(アールキュリアル)」社を筆頭に複数がおこなわれ、魅力的なクルマたちが数多く出品・落札されていった。

 そんななかから、今回VAGUEが注目したのは、イタリアの老舗カロッツェリアである「ザガート(ZAGATO)」の作品たちだ。業界最大手のRMサザビーズ「PARIS」オークションに出品された新旧のザガート作品と、そのオークション結果についてレポートしよう。

●1965 ランチア「フラミニア・スーペルスポルト3C 2.8 ザガート」

 まず1台目に挙げたいザガート作品は、1965年型のランチア「フラミニア・スーペルスポルト3C 2.8」である。1957年に誕生したランチアの最高級ベルリーナ「フラミニア」をベースとする高級グラントゥリズモの最終進化形である。

 ザガート製フラミニアは3世代に分かれるが、まず1958年にデビューした「スポルト(シリーズ1)」は、ベルリーナの2870mmから2520mmまで短縮した専用フロアパンに、ザガートお得意の空力的なアルミニウム製2座席ベルリネッタ・ボディを架装した。

 2.5リッターV型6気筒エンジンは119psを発生したが、1962年にはキャブレターを3基に増設して140psにスープアップした「3C」が登場。時を同じくして、ヘッドライトを露出させたシリーズ2の「スポルト」に進化する。

 さらに1964年になると、フラミニア系全モデルがエンジンのボアを5mm拡大することで、2775ccまでスケールアップを果たす。同時にスポルトは「トゥーリング・スーペルレッジェーラ」製クーペ/スパイダー「フラミニアGT」ともども3キャブレターをスタンダード化し、150psをマーク。ボディもヘッドライトを再び流線型スタイルに戻すとともに、それまで丸みを帯びていたテールを「コーダ・トロンカ」スタイルに切り落とした「スーペルスポルト(Super Sport)」へと最終進化を果たしたのだ。

 今回出品されたスーペルスポルトは、イタリア・ローマの女性がファーストオーナーとなる個体で、1965年5月7日に「ROMA E48111」のナンバーで初登録された。その後、1970年に同じくイタリアのさる伯爵が購入し、2012年まで別荘のガレージに所蔵していたという。

 さらに、その次に入手したイタリア人の3代目オーナーが、ドイツのクラシックカー・トレードショー「テクノクラシカ・エッセン(TecnoClassica Essen)」に出品。このイベント会場で見初めたとされる現在の管理人が、2016年5月まで3年間にわたるフルレストアを敢行したとのことである。

 そののち短期間のアメリカ滞在を経て、2017年7月にドバイに輸出。その年の12月には「ガルフ・コンクール」にて「ベスト・オブ・ショー」の栄誉を受け、2019年11月には「ドバイ国際モーターショー」にも展示されている。

 フラミニア・スポルトは1967年までに総計593台、その内、スーペルスポルトは150台のみが生産されたという希少車である。しかも今回の出品車両はヒストリー/コンディションともに極上の1台であるにもかかわらず、RMサザビーズ欧州本社は22万5000-25万ユーロ(邦貨換算約2880万-3200万円)という、近年の相場からすれば少々控えめなエスティメート(推定落札価格)を設定していた。

 そして2021年2月13日におこなわれた競売では、オークションハウス側に支払われるコミッションを合わせれば24万1250ユーロ、日本円に換算すれば約3090万円という、エスティメート満額に近い落札価格を叩き出したのだ。

 しかし、ほんの数年前であれば6000万-7000万円の落札も見られたモデルだけに、今回の評定額についてはかなりリーズナブル。ある意味、お買い得とも思われよう。

■1億8000万円のザガートは落札されたのか?

 RMサザビーズ「PARIS」オークション出品車からピックアップした、もう1台のザガート製モデルは、グッと新しい1台となる。2009年型フェラーリ「599 GTBフィオラーノ(日本では「599」名で販売)」をベースとするスパイダーである。

●2009 フェラーリ「599 GTZニッビオ スパイダーby ザガート」

 この時代のザガート製フェラーリとして思い出されるのは、以前VAGUEでもオークションレビューをレポートしたフェラーリ「575 GTザガート」であろう。

 2005年に発表されたこのスペチアーレは、かつて世界トップクラスの自動車コレクターだった日本人愛好家「Y.H」氏が、グレー/シルバー2トーンの1号車と、ブラック/グレー2トーンの2号車の2台だけの条件でザガートに製作させたはずが、ザガートはもう4台の製作と販売を独断で強行。Y.H.氏を大いに立腹させたという逸話のモデルである。

 さらに2007年、「575 Mマラネロ」に代わって599 GTBフィオラーノが発売されると、気を見るに敏なザガートは599をベースとした少量生産モデルの企画を打ち出した。

 ザガートが「フェラーリ599 GTZニッビオ」と名づけたこのスペチアーレは、「ベルリネッタ」ないしは「スパイダー」いずれかのコーチワークで、新たなザガート製ボディのフェラーリを手に入れられると謳われたモデルである。スパイダー版は6台が製作され、すべての目の肥えたオーダー主のための異なるカラースキームであることから、6台すべてが並んでもひと目で識別できるという。

 その印象的なデザインは、575 GTザガートのそれとはまったく異なる。ダイナミックな意匠のノーズは、彫刻のようなサイドのキャラクターラインやシャープに尖ったテールと巧みな「マリアージュ」を披露する一方、ザガート伝統の職人技も見事に体現している。

 ザガートのアイコンである「ダブルバブル」ルーフは、当然ながらスパイダーでは失われるものの、そのデザインキューはリアデッキに与えられることになったようだ。

 ミラノのザガートによるコンバージョンを前にして、ドナーとなる599 GTBはスイス在住の現オーナーによって、ジュネーヴのフェラーリ正規ディストリビューターである「モデナ・カーズ」から購入された。この段階で事故歴はなく、コンディションは良好。走行距離は2万100kmに過ぎなかったと報告されている。

 現オーナーとザガートが選んだカラーは、この特異なスタイルを絶妙に引き立てるためにグレー・メタリックとされ、あえてブラック単色としたインテリアとともに、モノトーンの上品な雰囲気を醸し出している。

 一方、フェラーリ純正のオプションである「チャレンジ」スタイルのホイール、赤いブレーキキャリパー、黄色のタコメーター、LEDでシフトアップを促すインジケーター付きのカーボンファイバー製ステアリングホイールなども装備されるが、これはドナーカーから引き継がれた可能性が高い。

 ザガートによるカスタマイズは2020年1月に終了したばかりということなので、注文主である現オーナーは、わずか1年ほどで手放す決意をしたことになる。

 ザガートからの引き渡し後の走行距離は約800kmに過ぎず、エクステリア/インテリアともに素晴らしいコンディションを維持したままオークションに出品されることになった。

 このユニークかつレアなフェラーリ599 GTZニッビオ・スパイダーだが、2021年2月13日におこなわれた競売ではリザーヴに届かず、残念ながら流札となった。現在ではRMサザビーズ欧州本社の営業部門によって個別顧客を待つ「Still For Sale」とされ、現状での表示価格は140万ユーロ、日本円に換算すると約1億7920円で継続販売中だ。

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