SUVセグメントへ挑戦し、見事に大成功モデルとなったアストンマーティンDBX。そのDBXに、さらなる高みを目指したハイパフォーマンス版の「DBX707」が加わった。最高出力707ps、900Nmという強烈なパワーの持ち主に早くも試乗することができた。(Motor Magazine2022年6月号より)
最高出力のモデル名採用は、アストンマーティン史上初
就任直後のトビアス・ムアースCEOが予告したとおり、DBXの高性能版が誕生した。メルセデスAMGのCEOだったムアース氏は、アンディー・パーマー氏から経営を引き継いだローレンス・ストロール会長のラブコールに応える形でアストンマーティンに移籍。
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その直後のインタビューで、パーマー前会長が立案したセカンドセンチュリープランの終焉を明らかにするとともに、今後、2023年までに10台のニューモデルを投入すると宣言した。そしてその多くが、既存モデルのバリエーション追加になると説明していたのだ。
DBX707は、DBXに搭載されていたメルセデスAMG製4L V8ツインターボエンジンのターボチャージャーを、より大型で軸受けにボールベアリングを用いたタイプに交換。これにより過給圧を0.5バール上乗せして1.7バールオーバーとすることで、標準型を157ps上回る707psのハイパワーを発生する。ちなみに、アストンマーティンがエンジンの最高出力をモデル名に用いたのは、このDBX707がブランド史上初のことという。
エンジン単体で700ps以上の最高出力を生み出すSUVは、少なくとも量産メーカーが手がける製品としては前例がない。それも、重心高の高いSUVでこのパワーを受け止めるのだから、サスペンションもさぞかし硬いに違いない。
そんな、期待というよりも、どちらかといえば心配に近い思いを抱きながら、イタリア サルディーニャ島で行われた国際試乗会に参加してきた。
パフォーマンスを解き放てば信じられない勢いで加速する
予想に反して、DBX707は滑らかに走り始めた。707psのハイパワーエンジンは低回転域でも粘り強く、レスポンスも良好なので、走り出しは実に軽快である。乗り心地にしても、路面から伝わるゴツゴツ感が軽いので、第一印象は標準型のDBXよりもいいくらいだった。
低回転域でエンジンが柔軟な反応を示したのは、ボールベアリングによってフリクションを低減したターボチャージャーが俊敏に反応するとともに、アストンマーティンのパワートレーンチームによるECUの設定が適切だったからだろう。
一方、ゴツゴツ感が軽かったのは、カーボンセラミックブレーキが採用されたことによりバネ下重量が40.5kgも低減された効果が大きかったと推測される。
もっとも、これらはあくまでも第一印象に過ぎず、高速道路で707psのパワーを解き放てば、前面投影面積が大きなSUVであることが信じられないほどの勢いで車速は伸び続け、濡れたワインディングロードではときに後輪のグリップを失わせるほどのトルクを生み出した。
これには、リアにEデフを搭載するとともに、スポーツ+モードでは思い切ってリアバイアスのトルク配分に振った設定が利いているはずだ。コーナリング中のしっかりと落ち着いた挙動からは、707psのパワーに応じて足まわりが、しっかりと固められていることがうかがわれた。
開発を指揮したアンディ・トクリー氏によれば、エアサスペンションのバネレートやダンパーの減衰率は5~30%引き上げたが、どちらもアクティブシステムを活用し、必要でないときはソフトな設定に変える一方、ステアリング入力などからコーナリングが始まることを検知すると、スプリング/ダンパーなどの設定を変更し、安定したスタンスを保つという。こうした設定が、快適性とハンドリングを両立させるうえで大きく貢献しているに違いない。
AMG出身のムアースCEOが目指すパフォーマンス志向とアストンマーティンの優雅なクルマ作り。DBX707は、ふたつの世界観が見事に融合して誕生した作品といえるだろう。(文:大谷達也/写真:アストンマーティン ジャパン)
アストンマーティン DBX707 主要諸元
●全長×全幅×全高:5039×1998×1680mm
●ホイールベース:3060mm
●車両重量:2320kg(EU準拠)
●エンジン:V8DOHCツインターボ
●総排気量:3982cc
●最高出力:520kW(707ps)/6000rpm
●最大トルク:900Nm/2600-4500rpm
●トランスミッション:9速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・87L
●WLTPモード燃費:7.0km/L(EU準拠)
●タイヤサイズ:前285/40R22、後325/35R22
[ アルバム : アストンマーティンDBX707 はオリジナルサイトでご覧ください ]
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