8月31日、WEC世界耐久選手権第6戦『ローンスター・ル・マン』の公式予選がアメリカ・テキサス州オースティンのサーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)で行われ、フェラーリAFコルセの51号車フェラーリ499P(アレッサンドロ・ピエール・グイディ/ジェームス・カラド/アントニオ・ジョビナッツィ)が今季初のポールポジションを獲得した。
予選とハイパーポールを終えた土曜日のCOTAのパドックから、各種トピックスをお届けする。
純粋なオーバーテイクは「ほぼほぼ不可能」と平川亮。デグラデーションにも優位なきトヨタ、決勝は「辛抱強く」
■「予選で起きて良かった!」
フェラーリはWECで4度目、今シーズン2度目のポールポジションを獲得した。ジョビナッツィは、50号車のアントニオ・フォコ以外のフェラーリドライバーとして初のポールポジションをつかんだ。
ジョビナッツィは予選後の記者会見で、昨年のスパ・フランコルシャン6時間レースの予選でトラックリミット違反によりトップの座を失ったことに言及し、「これが2度目のポールポジション」であると説明している。
一方、イアン・ジェームスは、ハート・オブ・レーシングチームの27号車アストンマーティン・バンテージAMR GT3に初のLMGT3ポールポジションをもたらした。この英国のブランドは、昨年のLMGTEアマ時代のスパラウンド以来となる、WECでのポールポジションを獲得となった。
また、アストンマーティンは、コルベット、ポルシェ、ランボルギーニ、マクラーレンに続き、今季新たに設立された同クラスでポールポジションを獲得した5番目のブランドとなった。
サラ・ボビーはLMGT3予選の前半でトップに立ったが、ドライブするアイアン・デイムス85号車ランボルギーニ・ウラカンGT3 Evo2のパワーステアリングに問題を抱え、ハイパーポールでジェームスに0.172秒及ばなかった。
「最初のプッシュラップの終わりにパワーステアリングの干渉を感じ始め、その後完全に失った」とボビーは振り返った。
「でも、明日レースを台無しにしなくて、予選でいま起きた方が良かった!」
■「僕らにアドバンテージはない」とトヨタ小林可夢偉
小林可夢偉は、トヨタGR010ハイブリッドのベストで予選9番手に終わった後、落ち込んでいた。
「ベストを尽くしたと思うが、これが現実だ」とこの日本人ドライバーはSportscar365に語っている。
「いまの調子だから驚きはない。タイヤのデグラデーションはそれほどないと思うので、僕らにその面でのアドバンテージはないと思う」
■今季初、ハイパーポール進出ならず
チャンピオンシップをリードするポルシェ・ペンスキー・モータースポーツの6号車ポルシェ963は、ケビン・エストーレが予選で14番手のタイムを記録するにとどまり、今シーズン初めてハイパーポール進出を逃した。
エストーレは次のように語った。
「クルマに満足していなかった。運転が難しく、すべてをまとめることができなかった。いまのところ、ポルシェは今週末の(もっとも速い)クルマではないと思うけど、5号車は僕よりもずっと良い結果を残している。サンパウロでは40分後に最下位になり、その後2位に戻ってきたので、レースにはまだ大きな期待を持っているよ」
ポルシェがCOTAでフェラーリに匹敵できない理由について、エストーレは次のように付け加えている。
「レースごとに車重が重くなり、パワーが落ちている。いずれは、他のチームもそこに到達するだろう。BMWとアルピーヌは新参者だけど、いずれはマシンの扱いに慣れて僕らの前に出るはずだ。僕らはこのレースに向け、パッケージを最大限活用するだけだ」
ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツのマネージングディレクター、ジョナサン・ディウグイドは、7月のテスト後の路面再舗装により、ポルシェ963はより低い車高で走行できるようになったと語った。
「それは助けになった」とディウグイドは語った。「7月のテスト時よりも、明らかに車高が低くなっている」。
なおチーム・ペンスキーは、これまでこのサーキットでNASCARとインディカーの競技に参加してきたが、COTAではまだ優勝を果たしていない。
ディウグイドは、今週末のハイパーカークラスでは、前回のサンパウロ戦と比べてタイヤコンパウンドのミックス・アンド・マッチが少なくなると予想しており、大半のチームがミシュランのミディアム・コンパウンドを選択する可能性が高いと語った。
「ほとんどのチームがひとつのタイヤに切り替えているのを見てきたと思う。FP1では、初走行で路面温度が高かったため、何を予期していいか本当に分からず、フィールドの差はかなり大きくなっていた。しかし、全体的には、現状に満足している」
■フェラーリ好調の要因はBoPではない?
フェラーリのパフォーマンスおよびレギュレーション・マネジャーのマウロ・バルビエリは、サンパウロと比べてCOTAでフェラーリのパフォーマンスが向上したのは、BoP(性能調整)の変更よりも、トラックの特性によるものだと考えている。
「私は『あのこと』(BoP) については議論から除外する」とバルビエリは述べたうえで、「サンパウロよりもこのサーキットの方が我々のクルマに適していると思う」と語った。
アルピーヌを除くすべてのハイパーカー・メーカーが参加した7月のテストも、フェラーリにとって特に有益だったとバルビエリは付け加えた。
「テストがあれば、フリープラクティスをより良いタイミングで開始できるものだ。サンパウロではそれがなかった。そこでは1チーム (トヨタ)だけが過去の経験があり、より多くのデータを持っていたと思う」
■シューマッハーの主張と、予期せぬ侵入者
36号車アルピーヌA424のドライバー、ミック・シューマッハーは、ハイパーポール進出を逃す予選13番手に終わった後、フェラーリのドライバー、フォコとロバート・クビサがブロックしたとして非難した。
「(最速ラップでは)第3セクター全体にわたって50号車(フォコ)が前にいたと思う。そして最初のプッシュラップでは、明らかに83号車(クビサ)が前にいた。どうやらここWECでは、F1のようにブロックを気にすることは、あまりしないようだね」
シューマッハーの予選は、36号車のコックピットに予期せぬ侵入者が発生したことで、さらに複雑なものとなった。
「突然、ハチが飛び回り、コックピットの前方まで飛んできたんだ」とドイツ人は回想する。
「フロントガラスにとまっていた。そこにとまっているだけなら本当に良かったのに、その後、僕の顔に向かってきたんだ。そこでドアを開けて、そいつを顔から叩き落としたら、ドアから飛び出していった。そしたら、ドアを開けたことについて怒鳴られてしまった」
■ヒュンダイのLMDhプログラム、発表間近か
FIAのブルテンによると、今週末、各チームはサーキットにそびえ立つ『COTAタワー』に1名のスポッターを配置できる。
複数の情報筋によると、ヒュンダイは2026年のWECとIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権のダブル・プログラムに関する発表を、9月はじめに予定しているという。
Sportscar365は、ドイツのヒュンダイ・モータースポーツ社と韓国の同ブランドのグローバル・ヘッドクォーターで最近、ファクトリープログラムの内部確認が行われたが、これには将来の公道走行可能なジェネシスのバッジ付きのスポーツカーをベースにしたGT3プロジェクトも含まれる可能性があるものと理解している。
■アメリカで風洞を”間借り”するWEC
FIAの広報担当者はSportscar365に対し、スイスのザウバー社の風洞が改修中であるため、FIAは現在アメリカ・ノースカロライナ州コンコードにあるウィンドシア社の風洞を、WECのホモロゲーションに使用していることを認めた。IMSAのホモロゲーションは、すべてウィンドシアで行われている。
トヨタGR010ハイブリッドが最近ウィンドシアに向かったものと理解されているが、これはWEC向けの将来のEvoジョーカー・アップデートのためであり、このル・マン・ハイパーカー規定車両がウェザーテック選手権に出場するために必要な認証プロセスのためではない。
トヨタGAZOOレーシング・ヨーロッパのテクニカル ディレクター、デビッド・フルーリーは、GR010 ハイブリッドがウィンドシアを訪れたことについては否定しなかったが、将来のEvoジョーカーについてはまだ何も決定されていないと主張している。
「まず第一に、いかなるジョーカーもFIAとACOの承認を受ける必要がある」とフルーリーは述べた。
「だが、我々にはまだ明確な計画はない」
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