現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 発売が50年早すぎた!? 今こそわかる「バモスホンダ」の先進性とは? じつは究極のホビーカーでした

ここから本文です

発売が50年早すぎた!? 今こそわかる「バモスホンダ」の先進性とは? じつは究極のホビーカーでした

掲載 9
発売が50年早すぎた!? 今こそわかる「バモスホンダ」の先進性とは? じつは究極のホビーカーでした

当時は受け入れられず不人気モデルだった

 昔、ビートで幌を畳んでドライブしていたときに助手席にいた娘が「クルマは動く個室っていうけど、ビートって個室じゃなくて、半分アウトドアだよね」と言ったことがありました。それを今では「ビートは半分アウトドアだったけど、ほとんどアウトドアのクルマもあるんだよ」と付け加えればよかった、と思い返しています。その“ほとんどアウトドア”なクルマが今回の主人公。ホンダが1970年にリリースしたバモスホンダです。

スズキ「ジムニー」を山より海が似合う仕様に! ビーチスタイルにカスタムしたオーナーに訊いた北米仕様「サムライ」の魅力とは

それまでの常識を超越して理解不能で“型破り”なクルマ

 軽トラックのT360とスポーツカーのS500で自動車メーカーとしての名乗りを挙げたホンダは、1967年の3月にリリースした軽乗用車、N360で4輪マーケットに本格参入しています。すでに軽乗用車としてトップセラーとなっていたスバル360などライバルは少なくありませんでしたが、高いパフォーマンスと廉価な価格設定で、発売開始早々にスバルなどのライバルをかわして軽乗用車のトップセラーとなっています。

 高いパフォーマンスは搭載するエンジンの出自からも明らかです。N360が搭載していたエンジン=N360Eは、当時ホンダの2輪で最高峰に位置付けられていたCB450用の空冷並列2気筒ツインカム・エンジンに倣ったもので、シングルカムにコンバートされていましたが354cc(ボア×ストローク=62.5mmφ×57.8mm)から31psを絞り出していました。

 ライバルは20ps程度でしたから、そのパフォーマンスは圧倒的でした。一方廉価な価格設定は31万3000円(狭山工場渡し)とされ、40万円前後だったライバルの多くを圧倒していました。その後ホンダはN360のバリエーションとして、3カ月後の1967年6月にはライトバン(商用車)のLN360を、さらにその5カ月後の1967年11月にはキャブオーバー・スタイルのトラックのTN360をリリースしています。

 このTN360はN360のエンジンをベースにしたTN360Eを、リヤアクスルの直前に、シリンダーブロックがほぼ水平になるように搭載していました。エンジン排気量はN360Eと同じく354ccで、最高出力は若干引き下げられて30psとなっていました。

 そんなTN360をベースに開発されたモデルが、1970年の10月に発売されたバモスホンダです。メーカーが新車発売などに際してはリリースと呼ばれる案内文を発表します。しかし、その際には新たに販売するクルマが、例えば乗用車であるのか商用車であるのか、あるいは乗用車ならセダンなのかクーペなのか、あるいはハッチバック車であるのかなども発表されるのが一般的ですが、バモスホンダの発売リリースには「あらゆる用途に巾広く機動性を発揮する、画期的なくるま」とありました。

 また「乗る人のアイデアによって、用途の範囲が無限に拡がる車」で「特に警備用、建設現場用、工場内運搬用、電気工事用、農山林管理用、牧場用、その他移動を ともなう屋外作業、配達など機動性を特に必要とする仕事にピッタリの車」とされていました。

 つまりバモスホンダを、どうカテゴライズすべきかホンダ自身にも明確で確固たる方針がなかったのでしょう。もっとも、バモスホンダが発売された1970年当時、カジュアルなハードトップやクーペも存在していましたが、乗用車と言えば大半が3ボックスのセダンでした。

 また商用車と言えばバンやトラックと明確にカテゴライズされていました。ただし軽自動車に限って言うなら1970年の4月にはスズキが本格的なクロスカントリー車「ジムニー」を発売し、ダイハツからもビーチカーとでも呼ぶべき「フェロー・バギー」が台数限定で発売されています。

 そうした状況で登場したバモスホンダは、ジムニーのようにクロスカントリーとしての走破性を持っているわけでもなく、また映画のヒットなどで知られるようになったデューンバギーとルックスが似ているフェロー・バギーとも違って、何とも形容し難いスタイリングの持ち主。なかなか市場で認知されることがありませんでした。

 生産計画としては輸出も含めて月産2000台と謳っていましたが、実際には苦戦することになってしまいました。N360も型破りでしたが、それでもライバルを圧倒する高いパフォーマンスと廉価な価格設定と、セールスポイントが十分に理解されて、好調な販売実績に繋がりましたが、バモスホンダの場合は理解されなかったのです。

フラットな荷台にフロントパネルとシートを取り付けたユニークなスタイリング

 それではバモスホンダのメカニズムを紹介していきましょう。ベースとなったのはキャブオーバー・トラックのTN360(より正確に言うなら1970年の1月に大幅なマイナーチェンジを受けて登場したTNIII360)がベースです。トラックには珍しくモノコックフレームを持っていて、そのモノコックにサブフレームを介してエンジンやトランスアクスル式のトランスミッション&デフ、さらにはサスペンションなどを搭載するパッケージングとなっていました。

 バモスホンダは、このモノコックを一新しフラットな(丈の低い箱形の)モノコックにフロントパネルを追加し、さらに1列2座ないし2列4座のシートを取り付けたものとなっています。フロントサスペンションはTN360、ひいてはN360とも同様のマクファーソン・ストラット式の独立懸架でしたが、リヤに関してはトランスアクスル式のデフからドライブシャフトが出ているためにド・ディオン・アクスル式を採用。これをリーフスプリングで吊るスタイルとなっていました。

 搭載されたエンジンはTN360から流用されたTN360E型で、30psの最高出力も同等でした。バリエーションは2シーターのバモスホンダ-2と4シーターのバモスホンダ-4、そしてバモスホンダ-4の幌をボディ最後端まで延長したバモスホンダ-フルホロの3タイプ。

 幌はルーフ部分とバックパネル部分を覆っていましたがドアはなく、代りに乗員の重心位置よりも高い位置に保護用ガードパイプが取り付けられていました。バモスホンダが発売された時点の法令では運転席のみシートベルト装備が義務付けられていましたが、バモスホンダは全席にシートベルトを装備。

 またフロントシートのシートバックに沿ってロールオーバーバーが装着され、転倒した際の乗員保護にも配慮されていました。さらにフロントパネルにスペアタイヤが取り付けられており、これも対衝突では衝撃吸収効果があったのです。

 個人的にはバモスホンダを所有したことはないのですが、30数年前に知人に頼まれてわが家に留め置いていたことがありました。本来の駐車場には旗艦であるアコード・ワゴンを停めていたので、件のバモスホンダと初代ライフ4ドアのAT仕様、全くの“趣味グルマ”が2台、テラスハウスと呼ばれる2軒長屋の軒先に止まっていたシーンそのものが、堅気ではなかったと今では苦笑いするしかないのですが、それでもバモスホンダに関しては理解不能な1台だったと記憶しています。

 しかしクルマの趣味が多様化した今では、バモスホンダの存在意義も充分に理解できるようになりました。それは2022年1月に開催された東京オートサロンでのこと。フォレスト・オート・ファクトリーのブースに出展されていたFAFビーチクルーザーを見て「そうか、こういうテがあったか」と目から鱗でした。

 社会もモータリゼーションも充分に成熟していたら、バモスホンダの存在意義も理解できていたろうと思うと、バモスホンダもまた登場が早過ぎた1台だったということでしょう。もっとも今登場したとしても六十路坂を駆け降りている身には、やはり縁がなかったと思います。悔しいけれど。

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

ホンダ斬新「オデッセイSUV!?」 13年ぶりに車名復活の“最上級クーペSUV”! 「大排気量V6」&“ワゴンボディ”から進化したド迫力顔の「アヴァンシア」に注目!
ホンダ斬新「オデッセイSUV!?」 13年ぶりに車名復活の“最上級クーペSUV”! 「大排気量V6」&“ワゴンボディ”から進化したド迫力顔の「アヴァンシア」に注目!
くるまのニュース
けんちん汁にそばを入れて? ご当地カップ麺「茨城けんちんそば」登場 その味は?
けんちん汁にそばを入れて? ご当地カップ麺「茨城けんちんそば」登場 その味は?
バイクのニュース
スズキの新型コンパクトSUV「フロンクス」は走りも一級品! 激戦のコンパクトSUV市場で個性を放つ。【試乗レビュー】
スズキの新型コンパクトSUV「フロンクス」は走りも一級品! 激戦のコンパクトSUV市場で個性を放つ。【試乗レビュー】
くるくら
トヨタのトップに相応しいクルマは[プリウス]!? 先代を覆す[実力]って?
トヨタのトップに相応しいクルマは[プリウス]!? 先代を覆す[実力]って?
ベストカーWeb
ブガッティ新型「トゥールビヨン」についてクリストフ・ピオション社長が語る…鳥肌が立ったというワールドプレミアの様子を動画でチェックしよう
ブガッティ新型「トゥールビヨン」についてクリストフ・ピオション社長が語る…鳥肌が立ったというワールドプレミアの様子を動画でチェックしよう
Auto Messe Web
都心の高速道路「KK線」ついに「2025年4月上旬」廃止へ! ビル街抜ける「無料高速」あと5か月で消滅へ 「60年間ありがとうございました」
都心の高速道路「KK線」ついに「2025年4月上旬」廃止へ! ビル街抜ける「無料高速」あと5か月で消滅へ 「60年間ありがとうございました」
くるまのニュース
普及する「布製タイヤチェーン」に“軽専用”登場! 樹脂製チェーンも作る国内メーカーが電撃参入!?
普及する「布製タイヤチェーン」に“軽専用”登場! 樹脂製チェーンも作る国内メーカーが電撃参入!?
乗りものニュース
オペルの小型SUV『モッカ』に改良新型、48Vハイブリッドシステム搭載…内装を一新
オペルの小型SUV『モッカ』に改良新型、48Vハイブリッドシステム搭載…内装を一新
レスポンス
TOKYO CRAFTS の「グラフアーム/エレバート シェルフ」予約販売が11/15スタート!
TOKYO CRAFTS の「グラフアーム/エレバート シェルフ」予約販売が11/15スタート!
バイクブロス
【ホンダ】バイク用水素エンジン搭載のラリーカー「HySE-X2」がダカール2025に参戦
【ホンダ】バイク用水素エンジン搭載のラリーカー「HySE-X2」がダカール2025に参戦
バイクブロス
アプリリア、中排気量ネイキッドスポーツの新規モデル『Tuono457』をミラノショーで初公開
アプリリア、中排気量ネイキッドスポーツの新規モデル『Tuono457』をミラノショーで初公開
AUTOSPORT web
まさかの「“トヨタ”ノポルシェ」登場!? アンダー350万円で買える「MRスポーツカー」に反響多数! “カレラGT ”…じゃない!「高クオリティマシン」に「見てみたい」の声
まさかの「“トヨタ”ノポルシェ」登場!? アンダー350万円で買える「MRスポーツカー」に反響多数! “カレラGT ”…じゃない!「高クオリティマシン」に「見てみたい」の声
くるまのニュース
サーキットと公道の二刀流!? スポーツ走行もツーリングもこなす守備範囲の広い「ミドルスーパースポーツ」バイク3選
サーキットと公道の二刀流!? スポーツ走行もツーリングもこなす守備範囲の広い「ミドルスーパースポーツ」バイク3選
VAGUE
仮面ライダー女優の愛車はなんとジムニーとレクサスRC300Fスポーツ!! 女優・モデル 奥仲麻琴
仮面ライダー女優の愛車はなんとジムニーとレクサスRC300Fスポーツ!! 女優・モデル 奥仲麻琴
ベストカーWeb
ヒョンデにキアだけじゃない! 韓国には「ルノーコリア」なる注目メーカーが存在する
ヒョンデにキアだけじゃない! 韓国には「ルノーコリア」なる注目メーカーが存在する
WEB CARTOP
コンチネンタル、高性能スーパーモトタイヤ「ContiAttack SM 2」発表…EICMA2024
コンチネンタル、高性能スーパーモトタイヤ「ContiAttack SM 2」発表…EICMA2024
レスポンス
スズキが「新型セダン」発表! サンルーフも装備した「上級モデル」誕生! スポーティな「スイフト」ベースで“5速MT”も搭載!? 7年ぶり全面刷新の「新型ディザイア」印国発売
スズキが「新型セダン」発表! サンルーフも装備した「上級モデル」誕生! スポーティな「スイフト」ベースで“5速MT”も搭載!? 7年ぶり全面刷新の「新型ディザイア」印国発売
くるまのニュース
車中泊は車をどこに停める? 何を持っていくといい?…経験者に聞いた
車中泊は車をどこに停める? 何を持っていくといい?…経験者に聞いた
レスポンス

みんなのコメント

9件
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村