スーパーGT第8戦もてぎのレース終盤、カメラは3番手争いにフォーカスしていた。38号車KeePer CERUMO GR Supraの大湯都史樹と、それを追う16号車ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GTの佐藤蓮が激しいバトルを展開していたのだ。
雨の予選で4番グリッドを確保した38号車KeePer CERUMOは、スタートドライバーの石浦宏明が先頭集団に食らいついていき、2番手まで浮上した。ただピックアップ(タイヤかすの付着)などもあり、思いの外ペースに苦しむようになったことから、22周で大湯にバトンタッチした。しかしながら大湯もピックアップの症状に悩まされ、トップを走る36号車au TOM'S GR Supraを追いかけるというよりは、後続からの攻撃に耐えるレースとなった。
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それでも2番手の座をキープしていた大湯だったが、53周目の3コーナーで8号車ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GTの野尻智紀に交わされ3番手に後退。最後の10周はもう1台のARTA、16号車の佐藤から追撃されることになった。
しかしながら、大湯は絶妙なブロックラインをとって前を行かせなかった。3コーナーを勝負どころと見ていた16号車ARTAの佐藤はやや難しいラインからのオーバーテイクも試みるが、結局順位は入れ替わらず、38号車が3位表彰台を獲得した。
レース後、悔しそうな表情を浮かべていた佐藤は、バトルをこう振り返った。
「8号車からは『38号車がピックアップに苦しんでいる』といった無線が入っていました。1、2コーナーがすごく苦しそうだったので、3コーナーで狙っていきたかったのですが、決めきれず。ラインをうまく潰されていました」
「野尻さんがいった(3コーナーでオーバーテイクした)こともあってか、より警戒されていた感もあって、抜ききれませんでした。チャンスのところで抜ききれなかったという反省もありますし、次に向けて勉強になりました」
当の大湯も佐藤とのバトルについて「普通なら抜かれていました。断然ペースが違ったので」と笑顔を見せる。バトル中は様々なアプローチを念頭に入れてディフェンスしていたようだ。
「3位と4位じゃ結構違うので、流石に3位は死守したいと思っていました」
「絶妙なラインを通ることと、セオリーの速い走り方ではない守りに特化したコーナリング……それを毎回やっても読まれてしまうので、そこら辺のレパートリーを増やしつつ。それにGT300の車両もいますし、(佐藤に)抜かれないような(GT300車両の)交わし方をしていました」
相方の石浦は、大湯のスティントでも自身がピックアップに苦しんだものと同じ種類のタイヤを履いたということもあり、スティント後半は苦しい展開になるかもしれないと予想していたという。その中で表彰台を守り抜いた大湯には感心していた。
「自分のスティントでも、セカンドスティントのタイヤをどうするかは悩みましたし、チームともやりとりをしていましたが、最終的には(大湯のスティントも)同じタイヤでいきました」
「大湯選手のスティントも、後半はちょっと辛くなるかもと感じていて、実際そういう展開になりましたが、なんとか最後は凌いでくれました。表彰台を獲れたのは、大湯選手の色んな技を使ったディフェンスがあったからですし、あれは上手だったなと思います」
これで38号車は直近4レースで3回目の表彰台という好調ぶり。ランキングも3番手に浮上したが、今回優勝を飾ったポイントリーダーの36号車au TOM'Sとは22点の差が開いてしまっており、逆転タイトル獲得は数字上可能性が残っているものの、かなり厳しい状況だ。
好結果が続いているとはいえ、同じGRスープラを使う36号車のパフォーマンスの高さには悔しさも覚えている石浦。最終戦鈴鹿はとにかく今季初勝利を狙っていきたいと語った。
「41kgのサクセスウエイトで表彰台に乗れたら、普通なら良いレースだったと言えると思いますが、36号車を見ると、自分たちもまだまだ足りないんだなと思わされます」
「1番ウエイトを積んでいるクルマが勝ってしまいました。36号車とのポイントを詰めたいところでしたが、それができなかった悔しさも残りつつ……。今年はまだ勝っていないので、最終戦はそこを目指していきます。22点も差があれば、そこ(タイトル)にそんなにフォーカスする必要もないと思うので、勝ちだけを狙ってチャレンジしていきます」
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