2021年1~9月に日本国内で販売された小型/普通車の内、52%をトヨタが占めた(レクサスを含む)。登録台数を見ても、日産やホンダの5倍以上が販売されている。
トヨタのシェアが多い理由は、売れ行きを伸ばせる車種を豊富に用意しているからだ。小型/普通車登録台数ランキングの上位には、ヤリス、ヤリスクロス、アクア、アルファードなどのトヨタ車が数多く並ぶ。車種が多く、なおかつそれぞれが好調に売れるため、小型/普通車のシェアも50%を超えた。
時代に媚びない挑戦者…だったのに…ホンダスピリットを感じずにいられない名車列伝
販売が好調な理由はさまざまだが、買い得度も大切な要素になる。機能や装備を充実させて、価格を割安に抑えれば、魅力も高まって売れ行きが伸びる。
そこで、中身と価格を見て、どう見ても安いトヨタの販売が好調な買い得車と、それに対抗できる他メーカーの注目車を取り上げたい。
文/渡辺陽一郎
写真/トヨタ、日産、ホンダ
[gallink]
■コンパクトSUV/1:どう見ても安いトヨタカローラクロス
ハイブリッド車の価格が259万円スタートと、お買い得感の強いカローラクロス。ガソリン車とハイブリッド車の価格差は35万円と低めに抑えられている
設計の新しいトヨタ車で、買い得度の特に強い車種はカローラクロスだ。パワーユニットは、直列4気筒1.8Lのノーマルタイプとハイブリッドを選択できる。ガソリンエンジンのG・Xは、衝突被害軽減ブレーキなどの安全装備を標準装着した上で、199万9000円の低価格を実現させた。
また一般的にハイブリッドの価格は、ノーマルエンジンに比べて40~60万円高いが、カローラクロスは35万円に抑えた。購入時に納める税額は、Z同士で比べてハイブリッドが約8万円安いため、実質価格差は27万円に縮まる。レギュラーガソリン価格が1L当たり150~160円なら、実質価格差を5~6万kmの走行で取り戻せる。
カローラクロスは、内装の質や前後席の居住性も満足できる。特に後席を使っている状態の荷室は、全長が4500mm以下のSUVとしては、広い部類に入る。SUVとしての実用性も高く、買い得グレードになるSの価格は、ガソリンエンジンが240万円、ハイブリッドでも275万円だから割安だ。
リアシートはリクライニング機能を備えた6:4分割式。最上級グレードはコンビレザーシートとなる
■コンパクトSUV/2:一見すると高く見えるが実はお買い得なホンダヴェゼルのe:HEV
後発のカローラクロスとガチンコで競合するホンダヴェゼル。内外装の質感の高さと後席の快適性に優れている。e:HEVの価格は265万8700円~
トヨタカローラクロスのライバル車はホンダヴェゼルだ。機能や装備の割に価格を安く抑えた。前述のようにカローラクロスが買い得度を強めた背景にも、ヴェゼルへの対抗がある。
ヴェゼルのパワーユニットは、直列4気筒1.5Lのガソリンエンジンとハイブリッドのe:HEVだ。後者では、エンジンは主に発電を行い、その電気を使って駆動用モーターを作動させる。モーター駆動だから瞬発力が優れ、加速も滑らかだ。
後席の足元空間は先代から35mm拡大された。身長170cmの大人が座った場合で握りコブシ2つ半ほどの余裕がある
内装も上質で、後席の足元空間はカローラクロス以上に広い。Lサイズセダンに匹敵するので、4名乗車時でも快適だ。その代わり荷室長(荷室の奥行寸法)はカローラクロスを下まわるが、ヴェゼルは燃料タンクを前席の下に搭載したから、後席をコンパクトに格納できる。シートアレンジは多彩で実用的だ。
e:HEV・Zは、リアゲートの電動開閉機能や18インチアルミホイールなどを標準装着して価格は289万8500円になる。価格だけをみれば高く見えてしまう。それは199万円からと見出しをよくみかけるカローラクロスが頭にあるからかもしれない。あの価格はガソリン車の最安値。カローラクロスのハイブリッドはGが259万円、Sが275万円、Zが299万円。こうしてみると、289万8500円のホンダヴェゼルe:HEV・Zは、実用性や質感を高め、装備も充実させながらこの価格は割安だ。
■コンパクトカー/1:身内のヤリスHVより高いアクアだが中身はお値段以上
ホイールベースを先代から+50mm延長して後席空間を拡大し、ハイブリッドシステムの出力を向上したことで、上位車種のプリウスから乗り換えても違和感のないクルマに仕上がっている
アクアはコンパクトなハイブリッド専用車で、1ヵ月の月販目標台数を9800台に設定した。ヤリス(ヤリスクロスとGRヤリスを除く)は、ハイブリッドのほかに2種類のガソリンエンジンも用意して7800台だから、アクアはハイブリッド専用車なのに販売目標はヤリスの1.3倍に達する。
それだけに高機能で価格は割安だ。ヤリスに比べるとホイールベース(前輪と後輪の間隔)を50mm拡大して後席の足元空間を広げ、4名乗車時の快適性を向上させた。インパネ周辺の質感も高めている。またヤリスよりも走行安定性や乗り心地のバランスも優れ、機能とデザインを幅広く向上させた。
新型アクアのダッシュボード中央には10.5インチの大型ディスプレイオーディオが配置される。ボックスティッシュが入る助手席アッパーボックスや電子式シフトノブ下のスライド式スマホトレイなど、便利な収納スペースが満載
アクアの価格は最上級のZ(2WD)が240万円で、衝突被害軽減ブレーキ、運転支援機能、災害時にも役立つ100V・1500Wの電源コンセント、バイビームLEDヘッドランプ、アルミホイール、10.5インチのディスプレイオーディオなどを標準装着している。
アクアZの価格はヤリスハイブリッドZに比べて7万6000円高いが、ヤリスにアクアが標準装着するアルミホイールと100V・1500Wの電源コンセントをオプション装着すると、12万6500円が上乗せされる。
そうなると合計価格は、アクアZが5万500円安くなるのだ。さらにアクアは、前述の通り後席の居住性、内装の質感、乗り心地なども上まわるから、販売の好調なヤリスハイブリッド以上に買い得感を強めた。
■コンパクトカー/2:約200万円でこんなに楽しいクルマが買える幸せがあるスズキスイフトスポーツ
970kgの軽量ボディに140psの1.4Lターボエンジンを組み合わせる。6速MT車は201万7400円から販売されており、若者にも手が届きやすい価格設定が魅力的だ
アクアは1ヵ月に約1万台という大量な販売を目的に、買い得なコンパクトハイブリッドに仕上げた。これに対抗できるコンパクトカーは、なかなか見当たらない。
そこで取り上げたのが価値観の大きく異なるスイフトスポーツだ。コンパクトカーのスイフトをベースに、直列4気筒1.4Lターボを搭載して、動力性能は2.3Lのノーマルエンジンに匹敵する。実用回転域の駆動力も高く運転しやすい。
サスペンションも強化され、ショックアブソーバーなどには、名門とされるモンロー・ブランドのパーツも使う。カーブを曲がる時には4輪の接地性が高く、外側の前輪に過度な負担が加わるのを抑えたから、峠道を走る時でも旋回軌跡を拡大させにくい。走行安定性が優れている。
6速MTのシフトフィールは小気味よく決まる。初心者にも扱いやすい操作性がスイスポの魅力だ
スイフトスポーツは、ベース車となるスイフトの素性を生かして、上質なコンパクトスポーツモデルに仕上げた。しかも価格は6速MT仕様が201万7400円、6速AT仕様が208万8900円。
1.4Lターボを搭載するスポーティカーだが、ハイブリッドのアクアZよりも約40万円安い。そのために人気も高く、スイフト全体に占めるスイフトスポーツの販売比率は44%に達する。
■コンパクトミニバン/1:多彩な機能を持つトヨタシエンタはコスパが高い
全長4260mmのコンパクトなボディに3列シートを配置したシエンタ。薄型燃料タンクのおかげで床が低く乗り降りがしやすい
全長を4260mmに抑えたコンパクトミニバンで、全高も1700mm以下だが、室内は広い。その秘訣は後部の床下に搭載される薄型燃料タンクだ。
この効果で車内の後方まで床が低く抑えられ、3列目シートに座っても、膝の持ち上がる窮屈な姿勢にならない。床が低いために、3列目を2列目の下側に格納することも可能で、4名で乗車した時には張り出しを抑えた広い荷室が得られる。
しかも価格が割安だ。中級のGは、衝突被害軽減ブレーキ、運転支援機能、バイビームLEDヘッドランプ、両側スライドドアの電動機能などを標準装着して、1.5Lガソリンエンジン車が210万7000円、ハイブリッドでも247万3000円に収まる。多彩なミニバンの機能を備えながら、価格を安く設定している。
■コンパクトミニバン/2:ちょうどいいサイズでミニバンらしさ全開のホンダフリード
シエンタと同じく全長を4300mm以下に収まるフリード。2021年1~6月の累計販売台数は35,551台と、登録車販売台数ランキングで9位にランクインした
2-2-2名の6人乗りレイアウトを採用。3列目シートを跳ね上げれば、2列目キャプテンシートの隙間に26インチの自転車を立てて積むこともできる
全長が4300mm以下のコンパクトミニバンは、車種の数も限られ、実質的にシエンタとフリードの対決だ。フリードは全高が1700mmを上まわり、シエンタに比べるとデザイン面からも車内の広さが強調されている。
2列目シートは、座り心地の良いセパレートタイプが基本で、3列目は左右に跳ね上げて格納する。つまりステップワゴンのようなミドルサイズミニバンと同様の機能やデザインをコンパクトなボディに詰め込んだ。外観がワゴン風のシエンタとは違う魅力を備える。
価格はGホンダセンシングのガソリンエンジンが216万400円、ハイブリッドはLEDヘッドランプも加えて256万1900円だ。装備と価格のバランスでは、シエンタほど割安ではないが、ミニバンらしさが濃厚だから販売は好調に推移している。
■コスパの良くないコンパクトカー/1:販売好調だが基本的な機能はいま一歩のトヨタルーミー
ヤリスシリーズに次いで好調な販売台数を記録するルーミーだが、後席の快適性や動力性能は競合のスズキソリオに軍配が上がる
最後にトヨタのコンパクトカーにも、コスパの良くない車種はあるので紹介しておこう。それがルーミーだ。Xの価格は155万6500円、Gは174万3500円だから、価格自体は高くないが車両の造りに不満を感じる。
プラットフォームはパッソ&ブーンと共通だから、車両重量が1100kg前後、全高が1735mmのボディを組み合わせると、走行安定性に不満が生じる。高速道路で横風にあおられた時などは、進路を乱されやすい。乗り心地にも粗さが伴う。
エンジンは直列3気筒1Lだからパワー不足が感じられ、ターボはノイズが気になる。収納設備とシートアレンジは多彩だが、後席は座面の柔軟性が乏しく、足を前方へ投げ出す座り方になりやすい。衝突被害軽減ブレーキは、ヤリスやアクアと違って自転車を検知できない。
以上のようにルーミーは、広い室内とスライドドアを備えるものの、後席の座り心地、動力性能、乗り心地といった基本的な機能はいま一歩だ。
販売は好調ながら、推奨度はあまり高くない。購入する時は、販売店の試乗車を使って、ライバル車のスズキソリオなどと乗り比べてから結論を出したい。
■コスパの良くないコンパクトカー/2:プロパイロットを装備すると高い日産ノート
ノートのプロパイロットは液晶ルームミラー、NissanConnectナビゲーションシステムとセットでオプション設定される。メーカーオプションの価格は44万2200円~
ハイブリッドのe-POWERを搭載しながら、売れ筋になるノートXの価格を218万6800円に抑えた。ただし運転支援機能のプロパイロットとLEDヘッドランプはオプション設定になる。
プロパイロットは、液晶ルームミラーや機能を連携するカーナビとセットでオプション装着されるため、セット価格が44万2200円と高い。LEDヘッドランプも、アダプティブ機能を備えるためにオプション価格は9万9000円だ。これをノートXの価格と合計すると、装備が充実する代わりに272万8000円に達する。
一方、上級のノートオーラGは、LEDヘッドランプなどを標準装着して261万300円だ。プロパイロットを含んだセットオプションを加えると301万1800円になる。ノートXの合計価格に比べて28万3800円高いが、この中にはBOSEパーソナルプラスサウンドシステムなども含まれる。
なおかつノートオーラGでは、ノートに比べて内外装の質感、シートの座り心地、動力性能、走行安定性などが幅広く向上する。従ってプロパイロットを装着したい上級指向のユーザーにとっては、ノートよりもノートオーラのほうが満足度が大きく、28万3800円の価格差を考えても買い得だ。
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みんなのコメント
意味ねー
スイスポを求める人は、アクアはどの角度からもターゲットにならないだろう。
そういうのは比較とは言わない。