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“ハードル”高まるなか『5年目の挑戦』に慎重姿勢。Dステーション・レーシング、2025年継続参戦は「50:50」

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“ハードル”高まるなか『5年目の挑戦』に慎重姿勢。Dステーション・レーシング、2025年継続参戦は「50:50」

 まもなくバーレーンで2024年シーズンの終幕を迎えるWEC世界耐久選手権。ハイパーカークラスのタイトル争いが最大の見どころであることは間違いないが、水面下ですでに始まっている来季に向けた動きも、そろそろ気になってくるタイミングだ。

 その中で注目したいのは、2021年からWECのGTカテゴリーに参戦を続けてきたDステーション・レーシングの動向だ。ハイパーカーのトヨタGAZOO Racingを除けば唯一の日本籍チームとなる同陣営だが、来季の参戦継続に疑問符がつく、といった内容の報道が一部でされている。

【動画】Dステーション・レーシング星野敏の最後のル・マン24時間挑戦の裏側

 昨年までWECでのドライバーを務め、今季はマネージング・ディレクターとしてチームを指揮する藤井誠暢に、現状と来季に向けたプランを聞いた。

■WECの参戦コストは「スーパーGT年間予算の7~8台分」

 もともとDステーション・レーシングはオーナードライバーである星野敏を擁して、ポルシェ・カレラカップ、スーパー耐久などに参戦してきたが、その活動が本格化したのは2017年のスーパーGT・GT300クラスのプログラムだった。そしてその当時からチームとしても、星野個人としても「いつかは世界選手権」という目標を設定していたこともあり、ドライバーとマネジメントを事実上兼任していた藤井が中心となって、WECのエントリー枠獲得に奔走することになる。

 富士、ル・マンへの星野のスポット参戦、そしてチームとしてはアジアン・ル・マン・シリーズへエントリーするなど、ACO(フランス西部自動車クラブ)との地道な関係構築、さらにアストンマーティンとの交渉などを経て、いよいよ2021年シーズンのWEC参戦枠を獲得。「スーパーGTの活動は休止し、世界選手権にフルフォーカスしました」と藤井は当時を振り返る。

「モンツァで表彰台に立って、ル・マンも6位。WECで表彰台に乗ることと、ル・マンで入賞することが本当の目標だったのですが、初年度でいきなりそれを達成してしまいました。ただ、星野さんもまだまだ乗れましたし、自分としても世界のワークスドライバーたちと競えて、すごく楽しかった。そういった中で、チームとしても世界でのチャレンジを続けたかったこともあり、2022年も活動を続けることにしたのです」

 その2022年は、地元・富士で表彰台を獲得。チームとしてさらに存在感を増していったが、LMGTEカテゴリーの最終年である2023年限りで、WECでの活動には一区切りをつけるつもりだったという。藤井、そしてオーナーの星野ともに、参戦当初から『3年』をひとつのピリオドとするつもりだったことも、背景にはあった。実際、星野は2023年の富士戦後に自らシートを退く意向を表明し、最終戦には別のドライバーが出走していた。

 オーナー・星野が乗らないことが確定的となったWECの2024年シーズンに向け、Dステーション・レーシングは大きな転換点を迎えることとなった。そこには当初予定の『3年』を終えたことに加え、いくつかの外的要因もあった。

 ひとつは、WECのGTカテゴリーがLMGTEからLMGT3へと切り替わるタイミングとあり、マニュファクチャラーとしてのアストンマーティンが、参戦枠を確保できるかどうか不確かだったこと。

 もうひとつには、チームとしてはこの2023年後半のタイミングで、翌年からのスーパーGT・GT300クラスへの復帰を模索していたが、それが叶いそうだったこと。

 結果的には、上記のいずれもが実現する形となったわけだが、WECチームの運営方針は一変。星野のみならず、藤井もWECのドライバーから退き、『ビジネス』としてチームをマネジメントすることに集中する形となった。

 星野に代わるブロンズドライバー、そしてシルバードライバー、アストンマーティンから派遣されるワークスドライバーというラインアップの編成に加え、スポンサーから資金を集めて活動費を賄わなくてはならない。なお、「最後のル・マンを完走して終えましょう」という藤井の呼びかけにより、星野はル・マン24時間のみスポット参戦したが、これは1戦分(といってもル・マンは年間予算の3割程度を占めるようだが)の“シート”を星野が負担したような形だったという。

 このように、2024年はスーパーGTをドライバーとして戦いながらWECチームをマネジメントしてきた藤井だったが、近年のWECの参戦コスト高騰は著しく、「自社メンテにおける運営費として考えた場合、スーパーGTの年間予算の7~8台分くらい」の費用がかかるという。

■コスト面以外のネックも

 そのような状況のなか、2025年の活動に向けては今年6月のル・マン頃からドライバー/スポンサーとの打ち合わせを継続しているというが、現時点での参戦可否は「50:50」であると藤井は言う。

「必要な予算の7~8割を集めることはできています。ですが、それが『10割』にならなければ、GOは出せません」と、あくまでリスクを避け、堅実に運営を進めたい姿勢を見せる。星野が乗らなくなった以上、藤井としてはNEXUS(星野が取締役代表執行役員を務める)からのスポンサー費用に依存する考えはない。

 2024年に向けては、苦労して確保したエントリー枠であり、熾烈なLMGT3参戦枠獲得競争に勝ち残りたいという「意地もあって」参戦を目指した。だが2025年、そして将来に向けては、レース数増加などさらなるコスト増加への懸念、またスーパーGTの活動を続けながらWECの現場をコントロールする面の負担などもあり、これまでとは違う状況に置かれている。現在チームとしてのプライオリティはスーパーGT。WECの活動は、あくまでも『ビジネスとして成立するかどうか』が2025年に向けた判断基準になっていると、藤井は繰り返し強調した。

 なお、単に金銭面だけがWECにおけるネックではないという。

「バジェット(予算)だけで言うなら、昨年もWECの年間予算をポンと出せるくらいのブロンズやシルバーのドライバーはいましたし、しょっちゅう連絡は来ていました。そういった人たちは世界中にいくらでもいるのですが、いまのWECはそれだけではなくて、速いブロンズ、速いシルバーをそろえると同時に巨額の予算が必要なのです」

 一部で『プロ・ブロンズ』と揶揄されるようなドライバーが速さを発揮し、彼/彼女らのポテンシャルがリザルトを左右する現在のLMGT3では、予選と速さの両面で優れた“戦える”パッケージを用意しなければ、マニュファクチャラーからの協力も得られにくい様子。参戦体制を作り上げるハードルは、年々高まっているのだ。

 現時点でDステーション・レーシングは、2025年に参戦を継続するとも、取りやめるとも言い難い状況で、その結果の『50:50』だという。タイムリミットが日に日に迫りつつあるなか、チームは今週末、2024年最終戦に臨む。

「バーレーンは、昨年トップ争いができたサーキット。今年は開幕戦のカタールでもポディウムフィニッシュができましたし、最終戦も表彰台で締めくくりたい」と語る藤井は、遠く日本のモビリティリゾートもてぎからチームの指揮を執ることになる。ゼッケン777のアストンマーティン・バンテージAMR GT3は、果たしてどんな形で2024年を締めくくることになるのだろうか。来季の動向とともに、注目したい。

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みんなのコメント

1件
  • yuu********
    パチンコ業界が斜陽産業だということですね。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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