4年ぶりの新作スタッドレス「X-ICE SNOW」
「今度のミシュランは雪に強い!」
ミシュランX-ICE SNOWのサイズラインアップはこちらより
何しろ従来品のX-ICE3+と比べ、明らかに強く路面を蹴り出して力強く加速してくれるのだ。なんでこんなに違うの?と不思議に思うくらいの差がある。
ミシュランから4年ぶりにスタッドレスタイヤのニューモデルが登場した。その名も「ミシュランX-ICE SNOW」。新たにエバー・ウインター・グリップ・コンパウンドを開発。これはX-ICE3+で採用されていたMチップコンパウンドを進化させたものと考えていいだろう。
新開発のエバー・ウインター・グリップ・コンパウンドには、剛性の高いポリマー系(≒ゴム)の配合物がコンパウンドに練り込まれており、走行中これが路面に露出すると取れてトレッド面に細かな凹凸を作ることになる。これが氷上では吸水効果を発揮し、雪上では踏み固め蹴り出す力(雪柱せん断力)を生み出すのだという。
また今回、X-ICE SNOWのトレッドゴムはモノコンパウンドとなっている。X-ICE3+はウィンターコンパウンドと剛性の高いコンパウンドを使った2層構造としておりブロックの剛性を高めていたが、X-ICE SNOWはエバーウインター・ブリップ・コンパウンドの1層なのだ。ブロック剛性も十分足りているという。剛性の高いポリマーベースの配合剤がコンパウンドの変形を抑える役割を果たしているのだろう。
トレッドデザインも新たに設計された。Vシェイプデザインは同じだが、センターの主溝がなくなり、Vシェイプもやや立った角度になっているのが特徴だ。
トレッド中央の縦溝はなくなっているが、Vシェイプの溝を太くすることで、ボイドレシオ(トレッド面に対する溝の比率)を増加。溝面積を増やしてシャーベット路面やウエット路面での排雪・排水性を高めている。この性能を高めるためVシェイプの角度にも微妙な手直しが施されているようだ。
トレッドブロックに施されるサイプも、主溝と同じ深さまで刻まれたフルデプスサイプ。センター部とショルダー部には、吸水性や雪踏み効果が期待できるVTSサイプが、セカンドブロックには3DのNEWクロスZサイプが施されている。
従来品との差は「明確」
冒頭にも書いたが、走り出した瞬間から明らかにトラクション性能のよさが実感できる。しっかり雪の路面をとらえ、力強く蹴り出してグイグイ加速するのだ。
試乗会ではX-ICE3+と比較試乗することができたのだが、誰が乗ってもその差がわかるほど明確な違いがあった。
トラクションの違いは、雪の路面へのコンタクトの強さの違いなので、ハンドルの手応えがしっかりしていたり、走っていている時のどっしり感に違いが出る。
モノコンパウンドになったことによるブロック剛性(感)も、試乗した限りではネガティブな要素は感じられなかった。具体的にはブロックのグニャ感は感じられず、応答の遅れも感じなかった。
氷の性能もよくなっているのが確認できた。屋外氷盤路ではμが低くなりすぎてわかりにくかったが、それでも車速5km/h以下になってタイヤがロックする状態になると、氷の路面にタイヤがこすれている摩擦感が強く感じられた。アイスドームを使った計測テストではX-ICE3+と比べ1mの制動距離の差が出たのには驚かされた。
一般道では不思議に思うほど
テストコースではこんな具合にかなり明確な性能差が感じ取れたわけだが、一般道、つまりリアルワールドではどんな風に体感できるのだろう…というわけで北海道士別市内に試乗に出てみることにした。
印象としては、手応えのよさがまず上げられる。テストコースから士別市内に向かう峠道や士別周辺の郊外路では除雪が進み氷の路面が露出したところもあったが、どんな場面でも手応えがしっかりしているので、不安を感じずに走ることができた。また市内の除雪の行き届いていない交差点での発進・停止の容易さも実感。
ドライバー視点の感覚では、前のクルマがなぜそんなに発進や停止に苦労しているのだろうと、不思議に思えるような場面に何度も出くわす。
あたかもまわりのクルマの性能が低いかのように感じられるのだ。つまりそれはX-ICE SNOWがそうした場面でも不安を感じず、走れているということ。絶対的な性能もさることながら、グリップの縦横バランス、手応えの明瞭さなどからくるインフォメーション性のよさがちゃんとチューニングされているのだ。その意味でミシュランらしいタイヤに進化したといえると思う。
ちなみに、X-ICE SNOW SUVもラインナップしており、同時に試乗することができたが、基本的に印象は変わらなかった。SUVのほうが若干ケース剛性が高いかなという感触違いはあったが、雪上でのトラクション性のよさや、インフォメーション性のよさは同様と考えていいと思う。
〈文=斎藤 聡〉
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