自動車メーカーにとって重要な電動化や燃費向上への取り組みが進行すればするほど、スポーツモデルが徐々に姿を消す結果となっている。
スズキも環境性能に取り組み様々な技術をクルマに投入しているが、その一方でスポーツモデルもラインナップに残している。それも魅力的な価格でだ。
スイフトスポーツのライバルともいえるマーチNISMOの弱点とは?
そこで、そんなスズキの取り組みについて語ってもらった。
文/片岡英明、写真/ベストカー編集部
【画像ギャラリー】スズキのホットハッチの歴史を継承するスイフトスポーツ&アルトワークス
■長い歴史を誇るスズキのスポーツモデル
舘ひろし氏の『オレ・タチ、カルタス。』のCMでご記憶のかたも多いスズキ カルタス。写真のGT-iはモータースポーツの世界でも活躍した
世界中が脱炭素社会へと舵を切り、自動車もCO2排出量を減らすために電動化したり、エンジン本体を改良して燃費向上に努めている。当然、燃費のいいクルマを優先して開発するから、スポーツモデルは年を追うごとに減ってしまった。
また、トランスミッションも2ペダルのCVTやATが持てはやされ、マニュアルミッションは少数派となっている。クルマによってはMT車を設定していない。スポーツモデルにとっては、生きづらい時代になってしまったのだ。
だが、スズキは違う。長年にわたって刺激的な走りのホットハッチを送り出し続けている。コンパクトカークラスのホットハッチはスイフトスポーツだ。軽自動車クラスにはベビーギャングのアルトワークスを投入した。
どちらもスズキのスポーツスピリットがほとばしる名作で、ファンだけでなく口うるさいジャーナリストからも高く評価されている。
スズキは最近になってホットハッチを発売した新参者ではない。スポーツモデルに関して長い歴史を誇り、軽自動車は360ccの時代からリッター当たり100psを超えるスパルタンモデルを発売していた。1980年代にはコンパクトクラスに進出し、ホットハッチを投入している。
それがカルタスにクラス最強スペックの1.3L直列4気筒DOHC4バルブエンジンを押し込んだGT-iだ。リアサスペンションも形式を変え、冴えたハンドリングを実現した。このGT-iはモータースポーツの世界でも大活躍している。
■古くはカルタスからの系譜となるスイフトスポーツ
2003年登場のスイフトスポーツ。スイフトの一部改良とともに発売された
カルタスの海外向けモデルは「スイフト」を名乗っていた。
これは2000年2月、新しいコンセプトのコンパクトハッチ、スイフト(海外ではイグニス)へと発展。03年6月にはジュニアWRCに参戦しているイグニスをイメージした、エアロパーツ装着のスイフト1.5スポーツを送り出した。トランスミッションは5速MTだけの設定だ。
そして05年9月には第2世代のスイフトスポーツがお披露目された。エンジンは1.6LのM16A型直列4気筒DOHCで、主役は2速から5速をクロスさせた5速MT車である。7000回転まで実用になり、キレのいい加速を見せた。
ダンパーは名門のモンロー(テネコ製)をおごり、軽快な身のこなしを手に入れている。後期モデルはヨーロッパ仕様の足回りを採用したから、さらに正確なハンドリングを身につけ、運転するのが楽しい。
3代目のスイフトスポーツは、この2代目の正常進化版だ。
が、2速から5速をクロスさせた6速MTとパドルシフト付き7速MTモードのCVTを設定し、変速する楽しさを増やしている。サスペンションも基本設計は変わっていないが、ボディの剛性アップとサスペンションの改良、軽量化などによりハンドリングに磨きがかけられた。
■出力規制のきっかけとなるほどホットだったアルトワークス
1987年登場のアルトワークス。出力規制のきっかけとなるほどの性能を示した
アルトワークスも華麗なサクセスストーリーの持ち主だ。ご存知のようにアルトは、ベーシックに徹した商用車登録のボンネットバンからスタートしている。ベビーギャングのアルトワークスが誕生するのは87年だ。
心臓は550ccの排気量でありながら64ps/7500rpmの最高出力を絞り出す直列3気筒DOHC4バルブインタークーラー付きターボだ。タコメーターは1万2000回転まで刻まれ、レッドゾーンは9500回転だった。あまりにも刺激が強かったので、お役所から64psを上限とする自主規制が敷かれてしまった。
90年代になると排気量を660ccに拡大した第2世代のアルトワークスが登場する。最高出力は64psのままだが、最大トルクは8.7kg-mに増強され、ハンドリングも落ち着きを増した。3代目ワークスはオールアルミ製の直列3気筒DOHCインタークーラー付きターボになり、64ps/10.5kg-mを絞り出す。
98年秋に登場した4代目ワークスは、安全性の向上を目的にボディサイズを拡大し、ハンドリング性能にも磨きをかけている。だが、2000年12月にパワフルなターボエンジンを積むワークスは消滅した。その2年後、Keiに「ワークス」を設定したが、こちらも09年には生産を打ち切ってしまう。
スズキ軽スポーツの系譜は途切れたが、14年12月に登場した8代目アルトは「原点回帰」を図るとともに遊び心を盛り込んだ。そして15年春にはヤンチャな高性能モデルを復活させるのである。
その第1弾はターボRSだ。2ペダル5速MTのAGSとDOHCインタークーラー付きターボの組み合わせは初代ワークス並みに衝撃的なニュースだった。
2015年、およそ15年ぶりに復活したアルトワークス。レカロ製バケットシートを装備するなど、走りに関する装備をこれでもかというほど充実させている
そして12月、15年ぶりに「アルトワークス」を復活させたのである。
こちらはさらに刺激的で、5速AGSに加え、5速MTも設定した。痛快な走りを実現するためにボディの溶接をスポット増し打ちし、KYB製のスペシャルダンパーやハイグリップタイヤ、フロントスタビライザー、レカロ製バケットシートなどを装備する。走りに関する装備は、上級クラスを超える充実ぶりだ。
しかも販売価格は150万円をちょっと超えただけのバーゲンプライスである。
■走りの性能と実用性を両立
2017年登場の4代目スイフトスポーツ。トレッドを広げて安定性を高めた結果、シリーズ初の3ナンバー車となった
スイフトスポーツも最新の4代目は、スポーティ度を大幅に高めた。ワイドフェンダーを採用して初めて3ナンバー枠に踏み込み、トレッドを広げている。モンロー製ダンパーの採用と相まって意のままの気持ちいいハンドリングを実現し、乗り心地も向上した。
それでいてハイパワーターボのトルクステアも少しだけ残すなど、操る楽しさが分かりやすい味付けとしている。走り屋たちの心を知り尽くした心憎い演出も魅力の1つだ。
パワーユニットも一新され、ブースタージェットと呼ぶ1.4Lの直列4気筒DOHC直噴ターボを搭載した。最高出力は140psと平凡だが、最大トルクは23.4kg-mまで引き上げられている。
2.5Lエンジンと同等のトルクをターボの後押しによって発生するから加速は痛快だ。6速MTだけでなく専用にチューニングしたパドルシフト付きの6速ATも変速するのが楽しい。こちらも先進安全装備を盛り込みながら200万円をちょっと超えただけのバーゲンプライスを打ち出した。
スイフトスポーツとアルトワークスはスズキだからこそ送り出せた刺激に満ちたホットハッチだ。パワーユニットはパワフルだし、ボディやサスペンションもシャキッとして運転するのが楽しい。
走るたびに感動が湧くし、派遣がある。走りの実力が一級なことに加え、実用性能も高い。快適装備と安全装備は充実しているし、その気になれば4人でのドライブを余裕でこなす。中古車でスポーツモデルを、と考えている人にもオススメできる逸品だ。買い得感と満足度は驚くほど高い。
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みんなのコメント
4輪は2輪に比べ、変態度が足りない。
個人的に好きな車だけど、母親と共用するとなると母親の意見も取り入れないとね…