もくじ
ー ほんとうに女性に優しいサービスか
ー 普通のママたちの「クルマ知らなさ度」、クルマ好き男子の想像を超越
ー J.D.パワー×オートックワン 「新車選びの新指標」はどれくらい便利?
ー 何を基準に選べばいいのか? がわからないひとたちのために必要な情報は
ー 初心者や車を知らないママたちには「提案型」の情報も必要では?
ヤナセの「あの」ステッカー 知られざる厳密なルール 貼りつけ位置、本当の理由
ほんとうに女性に優しいサービスか
世の中の女性の多くはクルマについてあまり詳しくはない。毎日運転をしていても、「ハッチバック」と「SUV」の違い、「仮ナンバー」と「外交官ナンバー」の違いを知らない女性も少なくない。
クルマ知識が豊富でクルマ意識の高いAUTOCAR読者の皆様にとっては想像を絶する世界だと思う。
5月末からサービスが開始されたJ.D.パワー×オートックワンが展開する「新車選びの新指標」は、クルマに詳しくない女性にも使いやすく優しいサイトだというが……果たして、ほんとに必要な女性目線がどこまで本気で活かされているのだろうか。
普通のママたちの「クルマ知らなさ度」、クルマ好き男子の想像を超越
大学在学中にトヨタのディーラーで納車/引き取りのバイトをはじめて30年(!)も自動車業界にいる筆者だが、子育てを通じて普通のママたちの世界も十数年経験している。
そこでは数々の新鮮な驚きと発見があった。
例えば、普段、クルマに乗っているひとなら初めての場所でも、「ナビがあれば行けるでしょ」という感覚だが、ママ友の多くは、「音声で「300m先、◯◯交差点右折です」って言われても、「300m」の感覚がわからないし、交差点名を読む余裕なんてないよ」という。
さらに、「初めての場所は駐車場がどうなっているかわからないから、週末に主人と一緒に行って下見するわ~」とも。
また、これは筆者の息子が幼稚園の頃の話だが、そこは園バスがなかったので、どの家庭もママがクルマで送迎していた。ある時、ママたちが最近転園してきたAちゃんの話をしていた。
「Aちゃんのパパは外交官らしい。クルマのナンバーが普通と違っていたから」という内容だ。しかし、その後、幼稚園に送って来た時に筆者が見たAちゃんママのクルマ(ちなみに軽1BOX)についていたナンバーは……「仮ナンバー」(臨時運行許可書番号票・通称「臨番」)だった。普通と違うナンバー=外交官ナンバーというのも想像を絶する飛躍、勘違いだ。
ちなみに、一般人が「仮ナンバー」で走行可能なのは、
・ナンバーが盗難にあって再交付を受けるとき
・車検切れで車検を受ける際に運輸局に運ぶとき
この2つに限られている。幼稚園への送迎はダメな使い方である。
J.D.パワー×オートックワン 「新車選びの新指標」はどれくらい便利?
さて、前置きが長くなったが、要するに普通のママたちは毎日車を運転していても、あまりというかほとんど(?)自分にとって重要じゃないクルマ情報には全くもって疎いということだ。
自分がクルマを選ぶ上で何を重要視するべきか? というところからわかってないかもしれない。
J.D.パワーの調査によると、女性の7割は「クルマ選びは難しい」と感じているとのこと。その理由は、「メーカーによるクルマの違いがわからない」「専門用語が多い」「買ってからの維持費がイメージできない」といったことだ。
そして、そのような経緯から「初心者や女性、主婦層にもわかりやすいクルマの選び方」を提供すべく、J.D.パワー×オートックワンがタッグを組んで5月末にスタートしたのが「ユーザー評価」を主体としたこれまでにないクルマ評価の新しいコンテンツなのである。
発表会には2人の子どもを持つママタレント藤本美貴がゲストとして登壇。子どもの習い事などの送迎でほぼ毎日運転をしているそうだが、彼女もまた「ハッチバック」というクルマのカテゴリーを知らないレベルだった。
クルマを選ぶ基準は「燃費がいいクルマ。ハイオクガソリンじゃないクルマ」を繰り返すだけだった。「街中でリッター15kmℓ、高速で20くらいだといいですね!」なんて言葉は当然出なかった。
何を基準に選べばいいのか? がわからないひとたちのために必要な情報は
そして誕生したのがこのようなサイトである。カタログトップと試乗記の間に新設された「総合評価J.D.パワー」の部分がこの度新しく追加された「新車選びの新指標」となる。
ベースとなるデータはJ.D.パワーによる最大2万人のユーザー調査だ。デザインやインテリア、燃費、走行性能、安全性、さらにはディーラーでの対応や納車時の対応、接客態度の評価まである。
確かにディーラーの情報などはこれまでにない斬新なものだ。しかし、これらは販売店によっても違うだろうし、地域性によるものもあるだろう。
「ディーラーサービス評価」が良いからこのクルマにしよう! と決める理由になるのだろうか?
また、クルマ選びの初心者、とくに子どもがいる家庭の主婦にとっても選びやすいようにということなのだが、「子ども+クルマ」のキーワードではチャイルドドシートに関わるものが第一に挙げられるべきだろう。
2008年より全席シートベルト着用が義務付けられているのだから、チャイルドシート義務期間を終えても何らかの方法で「拘束」しなくてはならない。
クルマのシートベルトが安全に使える身長140‐145cmまでの子どもはジュニアシートが必須だ。
初心者や車を知らないママたちには「提案型」の情報も必要では?
チャイルドシートは、カーナビやカップホルダーのような装備品とは違って国土交通省が型式指定を行う自動車部品であり、道路交通法でその使用が定められている。
例えば、チャイルドシートが2つ並べられるだけの後部座席幅があるか? シート形状はどうか? ISO FIX、テザーアンカーはわかりやすい位置にあるか? 助手席エアバッグのキャンセルスイッチはあるか?(日本車にはほぼ存在しないが)といった情報こそ必要なのではないかと思う。
とはいえ、初めてチャイルドシートを使うようなファミリーにとっては、このようなことが子どもを安全に乗せるために必要だということからして、ほとんど知らないだろう。
初心者や子育て世代のユーザーにとって使いやすいクルマ選びの指標を目指すなら、「子どもの安全性を第一に考えるならこんな情報が必要」「カタログのここをチェック」といった「提案型」の情報提供があっても良いと思う。
というわけで、スタートから1カ月少々経過した新車選びの新指標だが、現在の状況や成果を聞いてみたところ……
「成果としては新車見積もりフォームへの遷移率が+80%増、CVR(コンバージョン率:顧客転換率)が+20%増しています」
「また、今後検討している改修としてはチャイルドシートはもちろん、ボディタイプ(ハッチバックなどではなく、ファミリーカーで調べられるなど)なども初心者/女性目線を多く取り入れていく予定です」
「女性目線の検索フロー、やさしい言葉での検索(ボディタイプとかやりたいことから検索とか)などを予定している」(MoTA)とのことだ。
女性目線を本気で考えるなら、女性の「クルマ知らなさ度」をもっと真剣に考えてみてはどうだろうか。
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