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【竹内さくらのスペイン記】ふたりの夢は『MotoGPのチャンピオン』。バレンシアで得た貴重な経験と悔し涙、そして2位に日の丸

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【竹内さくらのスペイン記】ふたりの夢は『MotoGPのチャンピオン』。バレンシアで得た貴重な経験と悔し涙、そして2位に日の丸

 11月24~26日、MotoGP最終戦バレンシアGPがリカルド・トルモ・サーキットで開催されました。その前に同地のカートコースでMotoGPへの登竜門となるFIM MiniGP World Finalが行われ、日本代表の2名が参戦。レースアナウンサーの竹内さくらさんによる現地から第2弾の情報、予選と決勝の3レースをお届けします。

  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆

【竹内さくらのスペイン記】小学6年生ふたりがMiniGP世界戦に挑戦。日本を飛び出しバレンシアへ

FIM MiniGP WORLD FINALリポート第二弾!

引き続き、レースアナウンサー竹内さくらが現地からお届けします!

「FIM MINIGPとは? 何故スペインでレースしているのか?」
簡単にご紹介している第一弾をまずはご覧ください!

それでは日本を代表してスペインの地に挑みに来た小学生ライダーふたりを改めてご紹介させて下さい。

●富樫虎太郎選手(とがし こたろう)12歳 小学6年生
FIM MiniGP JAPAN 2023シリーズチャンピオン
3歳の頃、レースの世界は知らずに父親と河川敷でミニバイクの乗り始めた富樫。ある日埼玉県の桶川スポーツランドへ見学に行き、5歳でサーキット走行をスタート。今でこそ非常に転倒の少ないライダーだが、最初はかなり多かったそう。父と共にひとつひとつの動作の精度を上げ、今の速さを手に入れました。小学5年生にして2022年にベテランライダーがひしめく関東ロードミニSP-EXPクラスでチャンピオンを獲得。今年からFIM MiniGPに参戦。安定感あるレース運びとロスのないスライドコントロールが強み。

●国立和玖選手(くにたて わく)11歳 小学6年生
FIM MiniGP JAPAN 2023シリーズ第2位
生まれる前からバイクレースを走らせようと決めていたというのは父親談。2歳の頃からまずはランバイクという足で蹴って進むペダルのない自転車のレースに参戦、ストライダーカップワールドチャンピオンシップで3歳~5歳にかけて3連勝。そして5歳からモトクロスから始め、のちにサーキットへ。実はシリーズ戦などのフル参戦はFIM MiniGPがはじめて。2022年FIM MiniGPでは優勝を獲得するレースもあり、ランキングは第3位で終了。昨年に比べると転倒は激減、伸び盛りの勢いのあるライダー。

■そんなふたりの将来の夢は「MotoGPのチャンピオン」
MotoGPライダーになるだけではなく、最高峰クラスでチャンピオンを獲る。その想いを胸にJAPANシリーズで戦い、見事その戦績で世界への参戦権を手に入れたのです。

そしてふたりの参戦をサポートするのが、JAPANシリーズでのアドバイザーでもある現役選手 尾野弘樹さん、メカニックは高倉純一さん、小出智一さん、ふたりのお父親(富樫翔平さん・国立一誓さん)、全体統括はFIM MiniGP JAPAN主催・運営代表 中込正典さん、Moto2クラス参戦中の羽田太河さんもアドバイザーとして協力してくれました!
私は今回、MiniGP JAPANのX(旧Twitter)で期間限定で発信をするPR担当です。

■いよいよ予選!
11/22(水)第一弾でもご紹介した通り、フリー走行のベストタイムによってQ3進出が決まります。富樫は6番手でQ3進出決定。国立は13番手でQ2から走行となりましたが、焦らず自分の走りでQ3進出を決めました。さあ、ここからいよいよスターティンググリッドを決めるタイムアタック! このQ3の15分間で速いLAPタイムを出した順番に前方のグリッドからスタートとなります。もちろん前方からスタートできれば少しでもレースを有利に進めることが出来ます。ここまで着実にペースを上げてきたふたり、重要な走行に力が入ります!

私も手を握りしめアタックを見守ります。14名が走り、ほとんどのライダーが早々に44秒前半へ。昨年よりも全体的に速い。ふたりとも44秒台キープで周回するも、今一歩上がらないまま時間が経過していく。特に富樫は残り5分の段階でかなり下位、明らかに思うようなアタックが出来ていません。場所取りに苦戦している模様。

でももう残り3分…… 大丈夫? とハラハラしていたらここでグッとタイムUP! 胸を撫で下ろしました。とはいえ、ライダーと日本チームが予想していたよりはふたりとも『下の順位』で予選が終了。

14名全員が44秒台、0.7秒の中に14名がいるというとんでもない僅差のタイムアタック! 世界中から勝ち上がってきたライダーたちのレベルの高さを感じます。富樫は44.476秒、8番手で3列目。国立は44.523秒、10番手で4列目グリッドが決定。ここ近年のレースで、転倒しない限りはふたりは1、2列目でしかスタートしたことはないはず。走行から戻ってきて、早速走りのフィードバックを行う国立。JAPANシリーズよりもずっとアドバイザーに相談したり報告したりするようになりました。

富樫は頭を下げ黙り続ける。尾野さんがしばらくして優しく声をかけると感情が溢れました。悔しい、こんな順位なことも、もっと出来たはずの自分の走りも。

こんなに近接したタイム差で明日は一体どんなレースを作れるのだろう。

■迎えた最終日、決勝レース
翌日、11/23(木)全ての決着がつく最終日がやってきました。今までのウイークで一番寒い朝。吐く息も白く、手もかじかむくらい。フリー走行もなく、朝9時から始まる決勝レースに私は不安な気持ちになりました。3レースを通して順位によってポイントが与えられ、スーパーファイナルはなんとダブルポイント。2倍のポイントが付与されるのでチャンスは大きいです。

SNSではふたりに数え切れないほどの応援コメントが寄せられました。もちろんスペインに来る前から、夜にも朝にも、色んな思いを巡らせ、準備をしてきたふたりです。日本チーム全員が彼らを信じ、心から応援しています。でも選手の集中の邪魔にならないよう、最低限の声かけだけで背中を叩き、拳を合わせ、祈る思いで見守ります。

●レース1
冷たい空気の中始まったレース1。グリップ感を確認をしながら徐々にペースを上げ、それぞれ順位を上げました。いいぞ! しかしどのライダーもインを閉めてブロックライン。中盤、国立の前で転倒がありヒヤッとしましたが、冷静にコントロール。しかし前方とは差が広がり単独の7番手になります。私から見るとこのコースはパッシングできるコーナーが少ないのですが、富樫は1台ずつ2コーナーでかわし、9→6→5と順位を上げていきます。

ラスト5周、4番手の富樫が3番手にUP。この3番手争いが3台のグループ、対してトップ2台は2秒前方……。真後ろに着くライダーに注意しながらレース1は第3位で終了。国立は単独の難しいポジションでもペースを維持し、第7位。

●レース2
タイヤはレース1のまま。レース1に引き続き、レース2も同じグリッドでスタート。レース1とは違い、トップ3台がバトルの展開、4番手以降の大集団も接続をしていく。富樫は早々に6番手まで順位を上げます。残り6周時点では4番手の富樫までがトップグループを形成。2コーナーでマシンをねじ込み3番手にあがり、次の周回でも同じ2コーナーで2番手へ。

トップのマレーシアの選手は小柄で立ち上がりやストレートが非常に速いです。ユーズドタイヤにもかかわらずレース後半に速さを見せたのは日本のふたり! このふたりだけが44秒フラットを記録。国立もベスト更新の走り、追い上げに期待が高まります。富樫はトップの真後ろにつけ、残り2周いくつかのコーナーでアプローチをしましたが届かず……。そして自己ベスト更新をした国立がここで転倒。思わず声が出ました。富樫はそのまま第2位入賞。このレース2の走りで富樫には優勝が見えました。やはり後方からのスタートが苦しい。

転倒のあった国立、体は大丈夫で良かった。本人いわく予兆なくフロントからの転倒だったとのこと。マシンの修復が急いで行われます。

平静を装っても何度もやってくる悔しさ。良いペースだったのに。気持ちを落としながらもセットの方向を決め、最後にはカウルの拭き上げを手伝い、次のレースに向き合います。

なんとレースの前にMotoGPの中上貴晶選手が応援に駆けつけてくれて、ふたりにエールを贈ります。

●スーパーファイナル
ついに最後のレース! ニュータイヤを履き、レース1、2の結果でグリッドが決定。国立は11番グリッドから。あとはもう前に出るだけ! 気持ちは切り替えられていました、よかった! そして富樫は2番グリッドから。やっと前方からのスタート。富樫はチャンピオンの可能性を残しています。しかしそれには優勝がマスト。実はヘルメットを被る前、緊張で震えがこみ上げてきた富樫。ハハ、と不思議そうに手を見つめていました。

私も日本チームも、握る手に力を込めて見守ります。緊張が最高潮に高まり、シグナルスタート! その瞬間富樫のフロントタイヤが浮きました。ハッと息を飲みます。どうにかロスは少なくマシンを前に運びましたが、4番手で1コーナーを通過。トップの選手が逃げる前にポジションを上げておかなければなりません。そして国立もスタートのあと予期せぬ失速があり、厳しいスタートになりました。

私は届かない声を投げることしか出来ません。スーパーファイナルは19周と今までより5周多いのでまだ希望はあります。富樫はファイナルまで大きなミスなくレースをこなしてきましたが、今回は違いました。前を走る2番手の選手を早くパスしたいのに、強烈なブロックラインと前の選手のイマイチ上がらないペースに苦戦。

富樫の走りにも焦りが見えます。一方国立は数台の集団の中。場所取りに苦労して思うように走れずオーバーランしてしまうシーンもありました。新品タイヤにもかかわらず、このスーパーファイナルの時は路面のグリップはかなり下がっていたようです。

時間はかかりましたが、ついに2番手に浮上した富樫、残り11周さらにペースを上げます。トップのマレーシアの選手との差は約2秒。ふたりはほぼ同タイムでの走行。もう厳しいか……。と思いましたが、それでも毎周0.1秒ずつトップとの差を縮めていく懸命な走り。富樫も国立も最後まで最大限のパフォーマンスを紡ぎます。頑張れ! 頑張れ!
そして19周完了でチェッカーフラッグが振られました。

富樫は2位、国立は12位。
チャンピオンは無理だったけど……、でもチャンピオンを獲れる力は間違いなく感じました。国立もグループの中で戦い、よく走りきりました。

■そして表彰式
日本チームで拍手をして表彰台で富樫を迎えます。まず尾野弘樹さんが祝福し、笑顔も見せてくれました。そして次にお父さんの翔平さんが声をかけると、耐えきれずに我慢していた悔しさで涙がこぼれました。勝てる力と速さを持っていたのに。もっと早くかわせていれば。スタートのミスがなければ。この世界戦レースで勝つ準備をしてきたのに。色んな思いが、悔しさが止まりません。そんな富樫を見て私も涙がこぼれます。そうだよね、悔しいよね。悔しいよね……。

プレゼンターを務めるヨハン・ザルコ選手にも慰められ、スペインの地で日の丸を掲げます。

これで今年のFIM MiniGPは終了。スペインの地で、初めてのサーキットで、見事走りきったふたり。

何よりJAPANシリーズの上位はこれだけ世界の選手たちと戦うことが出来るんだと。改めてレースの意義と価値を、そして日本のレベルの高さを感じさせてくれました。課題も明確になり、自信にも刺激にもなり、もう来年のシリーズやレースへと思いを馳せているふたり。

小学6年生のふたり、本当に頑張った。もちろんただ頑張るだけでは足りない。来年、きっとテッペン取ろう。日本からのたくさんの応援、本当に有難うございました!

どうか引き続き、来年も開催されるFIM MiniGP JAPANシリーズをご注目下さい!

--------------------

2023シリーズ エントリー
https://www.minigp.jp

FIM MINIGP WORLD レースアーカイブ
https://www.youtube.com/live/HDoP2L2dE_k?si=0uVAdgZJ5yqEPkHP

書き慣れないので、長すぎる文章ですみません。
以上、スペインから竹内さくらがお届けしました!
有難うございました!

MC・レースアナウンサー
竹内さくら
Twitter:https://twitter.com/sakura_kisui
Instagram:https://instagram.com/sakura_joy_design

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