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新型ベントレー・フライングスパー 日本人ジャーナリストの評価 大谷達也が海外試乗

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新型ベントレー・フライングスパー 日本人ジャーナリストの評価 大谷達也が海外試乗

「ボク」から「わたし」へ(胸を張って)

text:Tatsuya Otani(大谷達也)ベントレーの真骨頂といえばグランドツアラーであり、現行ラインナップのなかでいえば2ドア・クーペのコンチネンタルGTにトドメを刺す。

【画像】フライングスパーとライバル 全82枚

これをベースに4ドア・セダンに仕立てなおしたフライングスパーは、コンチネンタルGT譲りの力強さとサルーンらしい居住性を併せ持つ佳作だが、これまではどうしてもコンチネンタルGTの影に隠れがちだった。

それが、3代目になってコンチネンタルGTの存在さえかすみかねない強烈な個性を手に入れたのである。

試乗会に帯同したシャシー・エンジニアのリチャード・ヘイコックスは新型フライングスパーの位置づけをこんな風に説明してくれた。

「これまでは(肩をすくめながら小声で)『ボク、フライングスパーです』というイメージだったけれど、新型は(堂々と胸を張って)『わたしがフライングスパーだ』と主張している感じ。わたしたちはそんな意識で新型を開発しました」

技術者たちの意識変革は、ステファン・ジラフ率いるデザイナー陣の仕事振りにも大きな影響を及ぼした。

その変化については後ほど詳しく紹介するが、これまでよりも堂々とした佇まいで、ベントレーらしい上品さを失わない範囲できらびやかさも身につけている。

3代目フライングスパーはいかに生まれ変わったのか? まずはそのハードウェアを紹介しよう。

フライングスパー 目に見えぬ場所の変化

ボディはアウターパネルだけでなく構造体にもアルミニウムを全面的に採用。このため、新型は全長が40mmほど延長されたにもかかわらず、車重は充実した装備を含めても38kg軽量に仕上がったという。

それ以上に重要なのが前輪の位置で、旧型に対して130mmも前方に移動。この結果、エンジンがほぼホイールベース内に収まるフロント・ミッドシップレイアウトになり、運動性能の抜本的な向上が期待できるようになった。

エンジンは引き続き6.0L W12ツインターボを搭載するものの、内部の熟成をはかって性能向上を図ると同時に省燃費化も実現。気筒休止機構により熱効率は15%も向上したという。

さらにギアボックスは8速トルコン式から8速デュアルクラッチへと換装。フルタイム4WDの前後トルク配分機構は従来のトルセン式から油圧多版クラッチを用いた電子制御可変式に改めることでスポーティな走りを得た。

足回りでは空気容量が大きな3チャンバー・エアサスペンションを採用するとともに、48Vシステムを用いたアクティブ・アンチロールバー機構を用意。

ここまでは基本的に新型コンチネンタルGTと同じ内容ながら、フライングスパーでは4WS機構をベントレーとして初採用し、小回り性と高速域でのスタビリティ改善を図っている。

しかし、そうしたハードウェアの変更以上にフライングスパーの個性を際立たせているのが、そのデザインである。

内装/外装を細かく観察すると……

フロングリルは3代目コンチネンタルGT同様、よりワイドな形状に置き換えられたが、フライングスパーではコンチネンタルGTより4-5cmほど背が高い。また

コンチネンタルGTとは違ってヘッドライトを垂直近くまで起き上がらせることによりモダンな雰囲気のなかにも堂々とした威厳を表現。

また、ボディサイドにパワーラインとホーンチラインという2本のキャラクターラインを設けている点は従来と同じながら、リアフェンダー付近のホーンチラインを水平的で一直線に近い形状に改めることで、ボディ全体の伸びやかさやスピード感を強調している。

さらに華麗に生まれ変わったのがインテリアで、キャビンの中央部に設けられたエアコンの吹き出し口はお馴染みのブルズアイからBの文字をかたどった四角形に近いものに変更。

さらにこの金属部分はオプションでダイヤモンドナーリングなどの凝った加工を施すことが可能で、これによりキャビンの雰囲気がより華やかになった。

レザー系ではシートにカセドラル・ウィンドウと呼ばれる新しいステッチが用意されるほか、ドアの内張などには深い凹凸を刻み込むことで光の陰影が美しく浮き上がる3Dレザーをオプションで設定。

気品がありながら現代的な世界に生まれ変わった。

市街地 コンチネンタルGTと比べると

3代目フライングスパーの運転席に収まって、国際試乗会が開かれたモンテカルロの狭い市街地を走り始める。

最初は車幅感覚が掴みにくかったが、小さくUターンするような道も含めて切り返しが必要になる場面は結果的に一度もなかった。4WSのおかげだろう。

市街を抜けて高速道路に入る。車速を上げてもエンジンノイズが聞こえないのはもちろん、ロードノイズもほとんど気にならない静けさ。

しかも、コンチネンタルGTと違って路面からのゴツゴツとした振動がほとんど伝わってこない。

前出のヘイコックスによれば、ブッシュをコンチネンタルGTより柔らかくしたほか、サスペンションストロークが長いことが乗り心地にプラスに作用しているそうだ。

正確な反応 ファン・トゥ・ドライブに

ワインディングロードでも新型フライングスパーは期待を裏切らなかった。

速度域にかかわらずターンインでシャープにノーズの向きが変わるうえ、脱出ではフルタイム4WDのメリットを生かして鋭く加速していく。

しかも、どれほどプッシュしてもハンドリング特性が変化せず、思いのままにコーナリングできるのだ。

こう聞くとフールプルーフで退屈なクルマと思われるかもしれないが、ここまで正確に反応してくれるとむしろそれ自体がファン・トゥ・ドライブに思えてくるから不思議だ。

試乗コースはタイトなブラインドコーナーの連続で、タイヤの性能を見極めるのは難しい状況だが、それにしてもかなり攻めたつもりでもハンドリング特性の変化が見られたのは下りの中速コーナーにオーバースピード気味で進入したときに軽いアンダーステアが顔を出しただけだったのには驚いた。

サルーンの乗り心地とスポーツカーのハンドリング。ここに魅惑的な内外装のデザインが加わるのだから、いままでのようにコンチネンタルGTの影に隠れるだけでなく、十分に主役を張れる存在感を手に入れたことは間違いないだろう。

ベントレー・フライングスパーのスペック

価格:16万8300ポンド(2311万円)
最高速度:333km/h
0-100km/h加速:3.7秒
燃費:-
CO2排出量:-
乾燥重量:2437kg
パワートレイン:W型12気筒5950ccツインターボ
使用燃料:ガソリン
最高出力:635ps/6000rpm
最大トルク:91.8kg-m/1350-4500rpm
ギアボックス:8速デュアルクラッチ

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