日本ではEVシフトが下降気味
日本国内における最直近の8月のEV販売動向が判明しました。とくにテスラのEV販売台数が大幅増加する一方、日本メーカー勢は深刻なEV販売低迷が続いています。2025年末以降の日本国内EVシフトの展望を含めて解説します。
「2025年にBEVの新車販売比率を50パーセントに」EX30で切り開いていくボルボ・カー・ジャパン不動社長のビジョンとは
まずこのグラフは、2018年以降のBEVとPHEVの月間販売台数を示したものです。2025年8月の販売台数は約6500台弱と、前年同月比でマイナス成長に留まりました。ただしこの直近月は商用軽EVである日産クリッパーEVとホンダN-Van e:の販売台数は含まれていないため、この2車種を含めると、概ね前年と同等水準のEV普及台数に留まる見通しです。
とはいえ、今回着目するべきは全体需要という観点です。じつはこの8月は自動車販売全体が大きく沈んでしまった月であり、とくに乗用車セグメントは前年比-11.4%という落ち込みです。軽自動車セグメントも前年比-4.3%と同様に下落。それを含めると、8月は前年と同等のEV販売台数を達成見込みであり、全体としてはEVシフトがわずかに進んだと見ることもできそうです。ちなみに普通車セグメントに限ると、トヨタは前年比-13.9%、ホンダも前年比-12.9%、日産は前年比-28.4%と壊滅的な販売台数減少です。
次に、新車販売全体に占めるBEVとPHEVの販売台数の合計比率について、直近の8月は速報値で2.36%と、前年同月に記録した2.49%と比較してシェア率は横ばいとなりました。確定バージョンであれば前年比はわずかにプラス成長となる見込みであり、やはり2024年のEV減速のトレンドが底を打ち始めている様子が見て取れます。
さらにBEV単体の販売動向を詳細に確認しましょう。普通車セグメントの日本メーカーと輸入車メーカー、さらに軽自動車セグメントにわけてみると、輸入EVは2356台と、前年同月比+23.4%と販売増加を記録している一方で、日本メーカーの普通車セグメントのBEV販売台数はたったの293台と、前年同月比-62.1%という壊滅的な状況です。この293台という数値は2代目リーフのモデルチェンジ直前の2017年9月以来の少なさと同等。まさに、日本国内で日本メーカーの普通車セグメントのEVが、まるで売れていない様子が見て取れます。
また、年間ベースにおけるBEVとPHEV販売台数、およびそれぞれのシェア率の変遷を確認すると、データが確定した2025年7カ月間でのBEVシェア率は1.49%と、2023年以降のBEVシェア率後退トレンドに歯止めがかかっていません。下半期に挽回して、2025年シーズン通しで前年越えを達成できるのかが注目ポイントでしょう。
それでは、日本国内でどのようなEVが人気であるのかを確認しましょう。まず初めに、2025年累計での主要自動車メーカー別のBEV販売台数の変遷を見てみると、やはり日産が頭ひとつ抜けた存在感を見せています。また2位にはテスラがつけています。
日産は2025年8カ月間で1.44万台強を発売したものの、2025年シーズンは2月から7カ月連続で前年比マイナスです。新型リーフの納車は2026年初冬が濃厚で、2025年のEV反転攻勢にはあまり期待できない状況です。いずれにしても、新型リーフが日本国内でどれほどの値段設定で発売されるのかは、2026年の日本のEVシフトを占う上で最重要動向のひとつといえるでしょう。
海外勢で成功してるのはテスラのみ
次に注目していきたいのがテスラの存在です。8月はおおよそ983台を達成し、前年同月比2倍以上という大幅成長を実現しています。
やはりこれは、4月から始まった新型モデルYの納車スタート、さらに新車などに対するゼロ金利キャンペーン、さらに高崎や名古屋則武、沖縄、東京錦糸町などをはじめとする、新規オフラインストア開業による、日本人とテスラの物理的接点が大幅に増えていることなどが追い風になっていることが考えられます。
※テスラ独自の急速充電ネットワーク「スーパーチャージャー」は、8月末時点で累計136カ所が稼働中。8月中は成田空港と山口に新設。
次にトヨタのEV販売動向について。8月の販売台数はたった16台に留まりました。これが、bZ4Xとソルテラ、およびRZも含めて行われるモデルチェンジに伴う一時的な需要減少が主な要因でしょう。一部報道でもあるとおり、モデルチェンジ後の新型bZ4Xは50kWh級のバッテリーが搭載されたエントリーグレードが追加されることで、エントリー価格が現時点の550万円からさらに引き下がる見通しです。
とくに400万円台を実現し、その上でCEV補助金90万円を適用できると、実質300万円台で購入できる可能性があります。これは新型リーフと同等レベルの値段設定となる勢いであり、その場合、新型bZ4Xの販売台数がどこまで伸びるのかは気になります。
さらに中国BYDについては、8月で239台を販売することに成功したものの、前年同月比-19.8%とマイナス成長に留まりました。そこでBYDは9月中に車両登録を完了すると、最大117万円のBYD補助金を適用できるという販売プロモーションを実施中です。はたしてBYD補助金によって、9月単体でどれだけ販売台数を増やすことができるのか注目です。また年末以降に投入予定のPHEVモデル、2026年後半に投入予定の軽EVなどの新型モデルの動向にも目が離せません。
またヒョンデについては8月単体で75台と、前年比で増加はしているものの、このうち61台は新型モデルのインスターでした。なので、IONIQ5とコナはたったの14台しか売れていないという厳しい状況とも見て取れます。とくにIONIQ5は2025年初頭にモデルチェンジしていることを踏まえると、不発に終わっているといわざるを得ません。
最後に注目するべきはホンダの商用軽EVであるN-VAN e:の存在です。8月の販売台数は不明ながら、7月はじつに500台越えを達成しました。ただ、他方で7月のガソリン車も含めたN-VAN全体に占めるN-VAN e:のシェア率は20%前半と、EVバージョンのシェアが伸びていない様子も見て取れます。N-ONEe:がN-ONE全体のどれほどのシェアを獲得できるのかには注目でしょう。
いずれにしても、日本国内の最新EVシフト動向はEVシフト停滞の底にあるものの、新型リーフ、N-ONE e:、スズキe VITARAという日本メーカーの新型EVを中心として、さらに好調のテスラ、値下げ余力を有するBYD、およびEVのライアップが多い輸入車メーカー勢の存在によって、2025年末にかけて、EVシフト低迷からどこまで浮上することができるのかに期待していきたいと思います。
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