6月22~25日にアフリカ、ケニアで開催された『第70回サファリ・ラリー・ケニア』は既報のとおり、TOYOTA GAZOO Racingワールドラリーチーム(TGR-WRT)のセバスチャン・オジエ(トヨタGRヤリス・ラリー1)以下4名のトヨタドライバーがトップ4を独占し、TGR-WRTが2年連続となる“1-2-3-4フィニッシュ”を飾る結果となった。文字どおりライバルに付け入る隙を与えない完勝ぶりだったが、総合4位で同イベントを終えた勝田貴元はラリー後のオンライン取材会の中で、トヨタ陣営に「大きな問題」が起きていたことを明かした。
前戦のラリー・イタリア・サルディニアと同様に、4台の『トヨタGRヤリス・ラリー1』でWRC世界ラリー選手権の2023年シーズン折り返しとなる第7戦ケニアに臨んだTGR-WRT。サファリ・ラリーが19年ぶりにWRCカレンダーに復帰した2021年と昨季2022年の両方を制しているトヨタチームは、復活3年目となる今大会でも序盤から強さを見せ、23日(金)のデイ2からオジエとカッレ・ロバンペラ、エルフィン・エバンスによってワン・ツー・スリー体制を築く。
勝田貴元、過酷なサファリ・ラリーで今季ベストの4位完走。トップ4独占の一角を担う/WRCケニア
さらに、24日(土)にはエサペッカ・ラッピ(ヒョンデi20 Nラリー1)のデイリタイアによって、一時順位を下げていたエバンスが3番手に復帰。チームメイトと表彰台を争う格好となった勝田が4番手につけ、2年連続1-2-3-4達成の快挙に向けて万全とも思えるリザルトを形成した。
迎えた25日(日)の競技最終日はオープニングのSS14でエバンスがミスを犯しリヤウイングにダメージを負ったが、影響は最小限に留められ順位に変動はなかった。また、SS15では首位オジエがテールゲートごとリヤウイングを失うものの、こちらはあろうことか最速タイムを記録し、世界中のラリーファンを驚かせた。
勝田の言う“大きな問題”が発生したのは午後の再走ステージ2本目、最後から2本目のSSだ。前日から変わらぬオーダーで同ステージに入ったTGR-WRTの全4台は、SS18“オセリアン2”でエンジンがオーバーヒートする問題に直面した。このときの状況や原因について、勝田は次のように説明している。
「“フェシュフェシュ”というケニア特有の非常に柔らかく細かい砂を含んだセクションがあり、そこでラジエーターの間に砂が詰まってしまい冷却系に大きな問題をきたしてしまいました」
「2年前(の2021年大会で)も同じような状況だったのですが、今回も僕を含め4人全員の(クルマの)エンジンがオーバーヒートしてしまい、ペースダウンをせざるを得なくなりました」
■教訓を活かして得たステージウイン
なお、勝田はこのSS18で大会2度目のベストタイムを記録している。そこには2年前の経験を活かし、あえてラインを外すなどフェシュフェシュ攻略策を実践した勝田の技があった。
「今のクルマはフロントのバンパーがすごく前に突き出しているので、ブレーキングしたときに(リップスポイラーが)スコップのような感じで砂を(掘って)巻き上げてしまうんです」と勝田。
「その影響で(巻き上げられた砂が)ラジエーターやエンジンルーム内にどんどん侵入してしまうのですけど、僕は2年前に同じような状況を経験していたので、なるべくそうならないようにしていました」
「具体的には、ブレーキングをあまり激しくしないようにしたりとか、あえてラインを外したりとか、そういった走り方をした結果オーバーヒートはしていたのですが、他の選手よりも温度上昇の割合が少なく済みました。その影響もあってなんとかこのステージでも大きくペースダウンせず、最終的にトップタイムでクリアできました」
■サファリは簡単には終わらせてくれない
勝田はこのSS18で、ステージ2番手となった僚友エバンスよりも11秒速いタイムをマーク。総合3番手を争うチームメイトとのギャップを縮めたが、日曜午前中に発生したハイブリッドトラブルの影響で遅れを取っていたこともあり、この時点で22秒差がついていた。そのため勝田は事実上、表彰台獲得を諦めSS19に向けては「最後まで無事にクルマを運ぶ方向に切り替えていた」という。
ところが、『一難去ってまた一難』という言葉があるように、勝田のGRヤリス・ラリー1はふたたび試練に襲われ、トヨタの1-2-3-4フィニッシュ達成に危険信号が灯る。
結果から言えば、勝田がドライブする18号車はトップから9.4秒差のステージ6番手タイム(編注:ヒョンデのティエリー・ヌービルが失格となる以前は10.4秒の7番手タイム)でパワーステージを走破し、総合4位のリザルトを持ち帰ることに成功した。その裏で起こっていたアクシデントはラジエーターの損傷だった。
「やっぱりサファリは簡単には終わらなくて……最終ステージの非常に深い轍が刻まれている区間、ラスト3キロぐらいのところだったと思いますが、とても大きな岩がライン上にあったんです。その岩を乗り越えたときにラジエーターにダメージを受けてしまいました」と勝田は状況を説明した。
「最後の1kmくらいから冷却水がどんどん抜けて行ってしまって、ステージを終えるときにはラジエーターの方に水がほとんどないような状態でした。その後すぐにラジエーターを修理したので、結果の方には大きな問題はありませんでした」
危機的状況に陥りながらも“クルマを最後まで運びきる”というミッションを完遂し、WRC史上初の同一大会3度目のトップ4独占の一翼を担った勝田は、「どんなに注意深く走っても何かが起こるのがこのサファリなんだな、と。そういったかたちで、本当に最初から最後まで波乱続きのラリーで終わりました」と今大会を振り返った。
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みんなのコメント
クルマはもちろんドライバーやナビの方が具合悪くなりリタイヤ…なんて普通にあった