「最後」という感じがないまま進んだレースウイーク
MotoGPクラスにフル参戦する唯一の日本人ライダー、中上貴晶選手(イデミツ・ホンダLCR)は、2024年シーズン最終戦のソリダリティGP・オブ・バルセロナを、フル参戦ライダー最後のレースとして迎えました。既報の通り、2024年シーズンをもってフル参戦ライダーを引退し、2025年からはホンダの開発ライダーを担います。
【画像】MotoGPフル参戦ライダーとして最後のレースに臨む中上選手を見る(7枚)
レースウイークの木曜日に話を聞いたとき、中上選手は「今のところそんなに変化はなく、今まで通りです」と答えていました。もちろん最後のレースとは言っても、同時にMotoGPライダーとして「いつもと同じ」週末を送らなければなりません。けれど、中上選手には、そんなレースウイークに向けた意識的な集中といったものはなく、言葉の通り、「今までと変わらない」様子でした。
「チームとのミーティングなども含めて、変化は無いです。逆に変な感じですけどね。ただ、日曜日が終わったら、違う感情になると思います」
その背景には、「これがMotoGPのレースを走る、MotoGPマシンを走らせる最後ではない」ということもあったようです。2025年からはホンダの開発ライダーとなり、環境は異なるとはいえ、MotoGPマシンを走らせ、ワイルドカードや代役でのレース参戦もあるでしょう。
「日曜日が終わったら、もうMotoGPマシンに乗らない、という話ではないですから。それが変化が無い理由なのかもしれませんね。レースからは離れてしまいますけど、それ以外ではホンダの一員ということも同じですし、大きな変化は無いので」
金曜日のセッションを終えても、やはり中上選手の表情に変化はありませんでした。5月に同じくバルセロナ-カタルーニャ・サーキットで行なわれたカタルーニャGPよりも厳しい路面グリップ、リアのスピニングに苦しみながら、午前中のフリープラクティス1ではトップタイムを記録しています。
セッションでのトップタイムは、2022年の第15戦アラゴンGPウオームアップ以来のことです。予選Q2へのダイレクト進出を決める午後のプラクティスでは12番手に終わりましたが、トップ10までは0.289秒差でした。
今回、中上選手のマシンの1台には、チームメイトのヨハン・ザルコ選手(カストロール・ホンダLCR)と同じシャシー、ライド・ハイト・デバイスが投入されていたということです。
「フリープラクティス1とは言っても長い間“P1”を見ていなかったし、ましてや“P1”でセッションを終えるのも、思い出せないくらい過去のこと。素直に嬉しかったです。“このタイミングかい”とは思いましたけどね(笑)。でも、良いスタートを切れたな、というのは正直な気持ちでした」
「すごく速いタイムというわけではなかったので、これは“ひとつのセッション”として考えていました。でも、午後も苦戦したわりには、トップ10からかけ離れている、という状況ではなかったです。“トップ10いけるかな”とも思ったんですけど、ちょっと足りなかったですね」
20番手からスタートした最後のスプリントレースは17位でした。「予選まではほとんど無かったリアの挙動が、スプリントレースをスタートして出ていました。原因がわからないので、明日に向けて心配ですね」と語っていました。
コメントからもわかるように、土曜日までの中上選手は、いつもと同じレースウイークを過ごしていたようです。この日も翌日のラストレースに向けて心境を尋ねられたものの、意識はむしろ、「スプリントレースで起こったリアの症状」に向いていました。
「全く(心境の変化が)無いというわけじゃないんです。でも、今はそれ以上に、今抱えている問題の方が心配です。自分の最後、ということを考えるのに加えて、いろいろなものを考えないといけない。こうしたい、というのがいっぱいあるから、あまりゆっくり考える自分の時間がないんです」
「よく聞かれるんですけど、期待されているようなことが言えない」とも言い、中上選手は笑いました。
「(質問の意図は)わかるんですけど、言えないんです。その感情がないから(笑)! “最後なんですよ……”と、どーんとくるものがね、無い……」
そうして迎えた日曜日の決勝レースで、中上選手はどんな表情を浮かべたのでしょうか。
グリッド上で流れた涙
日曜日の決勝レースは、よく晴れた空の下で行なわれました。
この日、中上選手には2つの「感情的になったシーン」がありました。スタート前、お母さんとお姉さんがグリッドに来たとき、中上選手の目から涙があふれたのです。家族をグリッドに招いたことは、これまで「いつものレースウイーク」を過ごしていた中上選手のなかで、「いつもとは違っていたこと」のひとつでした。
「最後のレースなので、(チームマネージャーのルーチョ・)チェッキネロさんに“スタート前に家族で一緒に過ごしたい”と相談して、初めて家族をグリッドに招きました。泣くだろうな、とは思っていたけど、母に“ありがとう”と言われた瞬間に、きましたね。とくに母には“これまでありがとう”という気持ちがありました。母も泣いていました。ずっと、同じような思いで来たから。数分だけど、いい時間を共有できました」
その数分後には激しいレースを戦わなければなりませんでしたが、中上選手は感情の渦に身を置いたのち、すぐに切り替えることができたそうです。
「感情が揺らいだままスタートしてしまうのではないかと、ちょっと心配だったんですけど、意外に切り替えることができました。(家族との時間のあと)すぐに準備をして、意外にすっと集中できました。だからこそ、グリッドに家族を呼べてよかったと思います」
中上選手はソリダリティGP・オブ・バルセロナの決勝レース24周を完走し、17位でゴールしました。
もうひとつの「感情的になったシーン」は、チームが待つピットに戻ったときに訪れました。2018年から最高峰クラスに参戦し続けて7シーズン。中上選手はずっとLCRチームに所属し、共に戦い続けてきました。そのチームが、「タカ ありがとう」と書かれた揃いのTシャツを着て、「懸命の尽力と喜び、情熱、そして楽しさに満ちた7シーズンをありがとう。寂しくなるよ、タカ!」と英語で書かれたボードで、レースを終えた中上選手を迎えたのです。
「7シーズン、ルーチョさんも含めて、ライダーとしてもそうだけど、人間として、成長もできたし、それ以上に、いろいろな経験を共有できました。何も悔いは無いですね。みんながああいう風に温かく迎えて、終われたから」
最高峰クラスで7シーズン、ロードレース世界選手権としては通算15シーズン戦い終えた中上選手に、「フル参戦ライダーとして最後のレースを終えた自分に、どんな言葉をかけたいですか?」と尋ねました。
「一言では難しいですね。お疲れ様、という気持ちが一番かな」
けれど、やっぱりこう付け加えるのです。
「でも、これで終わりではないので。だから、難しいですね(笑)」
その表情は、とてもとても、すっきりとしていました。
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