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開発者インタビュー SUVの“ど真ん中サイズ”はカローラで「トヨタカローラクロス」編

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開発者インタビュー SUVの“ど真ん中サイズ”はカローラで「トヨタカローラクロス」編

その細やかな観察眼では業界一、二を争うモータージャーナリストの島崎七生人さんが、話題のニューモデルの気になるポイントについて、深く、細かくインタビューする連載企画。第24回はトヨタの9番目の国内向けSUVとして登場したカローラクロスです。お話を伺ったのは前回に続き、カローラシリーズのまとめ役であるトヨタ自動車株式会社 Toyota Compact Car Company TC製品企画 ZE チーフエンジニアの上田 泰史(うえだ・やすし)さんです。

C-HRはスペシャルティ、カローラクロスはCセグの王道

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島崎:あの、今、トヨタ車のSUVモデルは今回のカローラクロスで9車種、近々新型LXが登場するレクサスを含めると13車種になりますが、そもそも、そこにカローラクロスをいれる必要はあったのですか?

上田チーフエンジニア(以下CE):いくつか背景はありますが、今、SUVのカテゴリーは、実はユニークでもスペシャルティでもなくてど真ん中になっています。グローバルでもその傾向です。その観点からすると、トヨタのラインナップでいうと、BセグのヤリスクロスとDセグのRAV4/ハリアーの間のCセグには今はC-HRがありますが、このクルマは先ほどお話しした中ではSUVのスペシャルティなんです。デザインオリエンテッドで、荷室や後席はある程度割り切ったパッケージで作ってあります。そう考えると、Cセグの王道をいくような商品が実はなかった。なので大き過ぎず小さ過ぎない真ん中のサイズで商品を導入したい、そこにお客様が必ずいらっしゃる。そう考えて、SUVのど真ん中のサイズでカローラクロスを出させていただきました。

島崎:登場後だいぶ経つC-HRに代わる、あるいは販売台数上の援護射撃的な意味で出てきたのではないのですね。

上田CE:はい。日本だけでなく世界的な流れとしてもSUVのど真ん中のパッケージだとすると、トヨタの中のブランドで多くのお客様に乗っていただくにはカローラというブランドを冠につけて、我々の思いを表現したかったのです。

島崎:単にトヨタのCセグのSUVの台数を補填するという役目だけの投入ではないのですね。

上田CE:そうですね。C-HRは当時トヨタのラインナップにまだSUVがなかった中で、トヨタのSUVの先駆けとなる少し飛んだ商品で、なおかつ欧州の商品要件から、次世代のハッチバックという思いもありました。

先にタイで発表された理由

島崎:なるほど。一方でカローラクロスは、まずタイでワールドプレミアされ、順番がきて日本市場でも発売されましたが、これは当初からの計画だったのですか?

上田CE:はい。GA-Cプラットフォームは、日本のカローラスポーツから始まり、ほぼ世界で展開が一巡しました。その中で今回のCセグSUVが欲しいという声はタイ、南米、台湾などから上がってきました。それらの地域にはヤリスクロスもRAV4も実はないんですね。日本はヤリスクロスやRAV4の計画はすでにあったので、順序としてそうなりました。北米も実は発表は早くしていますが、発売はようやく始まったくらいです。

島崎:たとえばタイにヤリスクロスやRAV4など、すでにあるクルマを持っていくという方法はとらなかったのですか?

上田CE:タイにはすでにカローラがあったので、投資からも、お客様の欲している商品という意味でも、カローラクロスを入れるのがベストだったんです。

島崎:日本のユーザーは待ち遠しかったのでは?

上田CE:そこはグローバルに展開するカローラで、それぞれの市場ごとにどう応えていくかという考え方で……。

カローラはより幅広く多くのお客様に乗っていただきたいブランド

“アーバン・アクティブ”な日本仕様

タイや北米は“アーバン・タフネス”がキーワード

島崎:日本仕様のカローラクロスはフロントマスクのデザインを始め、専用に仕立てられていますね。

上田CE:キーワードをタイや北米は“アーバン・タフネス”として逞しさを強調して、日本では洗練された上質感を出したかったので“アーバン・アクティブ”としました。日本のフロントグリル、ヘッドライトは先進性、個性を付与したデザインにしてあります。

島崎:カローラクロスという車名は最初からあったのですね。

上田CE:最初の計画からありました。

島崎:あの、販売台数として当然、カローラの数字を上乗せさせる意味もあったのですか?

上田CE:カローラは過去に何年連続1位といったこともあり、もちろんより多くのお客様に乗っていただくことは大事です。数にこだわらない訳ではなく、結果がついてくれば……というと言葉としては美しいですが、カローラはより幅広く多くのお客様に乗っていただきたいブランドとして、トヨタとしても大事にしたい、そういう使命があると考えています。

島崎:9月の販売台数は1位ヤリス、2位アクア、3位カローラ、それから4位にアルファードと、十分に使命を果たしていますね。

上田CE:ありがたいことです。

クルマを届けられない状況下ながら目標通りの受注

島崎:10月のデータはどうなるのでしょう?

上田CE:ただ、今の数字は半導体の問題なのでクルマそのものの実力ではないところもあり、我々としてもどかしさもありますが、何より1日でも早くお客様にクルマをお届けするのが目下の課題です。通常であれば発表から1~2週間でクルマが全販売店に行き渡って、お客様にクルマを見ていただけるのですが、今はいろいろとご迷惑をおかけしている状況です。

島崎:上田さんのご経験のなかでも、こういうことは今までなかったですか?

上田CE:初めてですね。新車発表の通常の一連の活動はすべてリモートですし、クルマもなかなかお届けできない。

島崎:それなら別のクルマを……といった方も出てくるのでしょうか。

上田CE:ところが今回のカローラクロスは、実は受注計画どおりなんです。目標どおりに受注をいただいていて、クルマがない中で、ありがたいことです。

広報・山岡さん:納期に関しましては、弊社のホームページで車種ごとにお伝えしておりまして、そちらで逐次お確かめいただくお願いをしています。

島崎:広報の山岡さんが登場されたということは、それとなく、そろそろ時間なのでまとめに入るように……と教えてくださったのですね。あと少しだけ伺わせていただいてもよろしいでしょうか?

上田CE:僕はまったく大丈夫ですよ。

限られたスペースの中でいかに広々と明るい室内を作るか

島崎:恐れ入ります。先日、カローラクロスのガソリン車でしたが、お借りして乗りまして、印象的だったのは、グローバルな感じのクルマといいますか、バックドアを開けるとラゲッジスペースがシンプルにドーンと深く大きかったり、分厚いリアシートをシンプルに倒すだけの仕掛けだったりと、装飾やカタログでの謳い文句的な装備よりも、上質であるけれど実直に機能重視で組み立てられたクルマだなと感じました。

上田CE:ありがとうございます。このクルマの開発当初のスタートは、まさにパッケージでした。クルマに乗る時にはいかに乗りやすくするか、降りる時にはいかに降りやすくするか、乗っていただいたらいかにゆったりと過ごしていただくか。ボディサイズは無闇に大きくできませんから、限られたスペースの中でいかに空間を有効に使って広々と明るい室内を作るか、そこは一番こだわったところでした。仰っていただいたとおり、奇をてらわず直球を投げる思いで作っています。ラゲッジフロアは、今回、トーションビームを使うことで1段下げられました。

島崎:ラゲッジスペースの床は本当に深くていいですね。昔のヨーロッパ車みたいです。

上田CE:はい。ただお客様によってはご要望がありますので、用品でリアシートを倒した時にも床がフラットにできる用意(2021年12月発売予定)をし、その用品をお使いいただくと床の下を小物入れのスペースに使えるようにしています。

島崎:カローラクロスを使いこなしたい方にも心配は無用ですね。

上田CE:ええ。実はその用品も開発当初からあった訳ではなくて、キッカケは、タイや台湾のカローラクロスのユーザーグループの方がSNSでいろいろ発信されておられて、その中で自作の棚を作られている方がいました。そこで日本で出す時には、こういうお客様にも対応しようということになり生まれたものでした。

島崎:超リーズナブルなスタート価格ということで、シンプルなあのラゲッジスペースになったということですか?

上田CE:値段とあのラゲッジスペースは直接は結びついていませんが、今回のカローラクロスは派生車ではなくて、これからのカローラの方向性を示すクルマでもあるので、値段設定も今のカローラ、カローラツーリングから飛び抜けないようにし、同じ価格帯の中でご検討いただけるようにし、その価格設定の中でクルマ作りを考えました。

SUVなら大きくしなくても、自然な前後席の間隔がとれる

島崎:ドラポジは、運転しやすいなと思いましたが、どんな設定になっていますか?

上田CE:グランドライン(地上)からドライバーのヒップポイントまでがカローラツーリングより120mmほど高い640mmほど。120mmの内訳はアクセルペダルからヒップポイントが65mm、地上から床が55mmそれぞれ高く、つまりアップライトな姿勢になっています。ですので人の位置がやや前進しており、それによりツーリングと同じホイールベースですが、前後席のスタンスが少し広くなり、その分、後席のスペースをゆったりとっています。

島崎:日本仕様よりホイールベースの長い欧州仕様のツーリングをベースにはしなかったんですか?

上田CE:はい。あえてクルマを大きくしなくても、自然な前後席の間隔がとれるのでそうしました。SUVのパッケージはその点では有利ですね。僕はカローラツーリングも担当していますから、あちらを悪く言うつもりはまったくなくて、カローラツーリングは人が低く座れるので重心が低く、運動性能では一段上です。

島崎:全幅はカローラツーリング+80mmですが、この差はどう考えればいいですか?

上田CE:大きなタイヤが外に出ており、それを強調する意味もあって、ボディサイズは決めています。ただし最小回転半径では、カローラツーリングは17インチを履くと5.3mですが、カローラクロスは5.2mです。全幅がとれるとタイヤの切れ角が大きくできるためで、ハンドルを切った時のクルマの曲がる感覚はカローラツーリングに遜色ないというか、逆に「こんなに曲がるんだ」と感じていただけるくらいだと思います。

島崎:最後に、お聞きしそびれていましたが、カローラクロスの“+α”は何ですか?

上田CE:はい、これはもう、堂々とした逞しいデザインと広く明るい室内空間、それと使い勝手の良いユーティリティです。

島崎:80点どころか、100点満点ということですね。ありがとうございました。

(写真:島崎七生人、トヨタ自動車)

※記事の内容は2021年11月時点の情報で制作しています。

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