オンでもオフでも、初心者からエキスパートまで楽しめる二刀流
ホンダの最初のオフロードバイクは、1962年に発売された「ドリームCL72スクランブラー」です。エンジンは排気量247ccの4ストローク2気筒で、車体は専用設計ながら全体的にはロード車をベースに悪路走行に配慮したものでした。
【画像】カッコいい! ホンダ「XL250」(1975年型)の詳細を画像で見る(11枚)
先鋭化していた2ストローク車に比べると、舗装路も悪路も快適に走れるタフな旅バイクという雰囲気です(現在ではそこが魅力というファンも多い)。
10年後の1972年にはホンダ初のオン/オフロード車として専用設計された「SL250S」がデビューします。「SL250S」はSOHC4バルブの新型単気筒エンジンを採用しましたが、車体の方はまだまだ進化の途中でした。
当時はオフロード車の進化が著しい時代で、ホンダは2ストロークエンジンでモトクロスバイクの開発に着手し、1973年には「エルシノアMT250」を発売します。
本格的なオフロード専用車の設計ノウハウを手にしたホンダは、1975年に一段とオフロード走行性能を向上させた「XL250」を発売します。
少し紛らわしいのは、前型の「SL250S」が「XL250」という車名で輸出されており、現在のホンダ「XL750トランザルプ」へつながる「XL」シリーズの名称はそこから始まっています。
さて、国内版の「XL250」は、「SL250S」のSOHC4バルブエンジンをベースに、シリンダーヘッドなどを新設計しています。
インレットポートをシリンダーヘッドの中央に設置し、2本の吸気バルブに対して混合気がスムーズに流れるようになりました。これより燃焼効率は向上し、低回転では扱いやすく、高回転では伸びのあるエンジンとなりました。
またバイクでは初となるエアチャンバーをシート下に設けています。容量の大きな湿式ウレタン入りエアクリーナーとともに吸入効率を上げ、オフロード走行時に必要な、シャープなレスポンスと燃費向上を両立し、さらに発進加速時に発生しがちな息つき現象を防止しています。
エキゾーストパイプは現代的なフレーム中通しタイプとなりました。「SL250S」ではライダーの膝部分にあったマフラーは、2本のリアサスペンションを挟むオムスビ形と筒形の2分割となり、パワーを損なうことなくスリムな車体を構成しています。
一方、フレームのメインパイプは「SL250S」のバックボーン形状から、燃料タンク内側で左右へ別れてスイングアームピボットを外から挟む構造に変更されました。この「エルシノアMT250」と同タイプの新型のセミダブルクレードルは高剛性かつ軽量で、現代のオフロードバイクに近いフレーム形状です。
フレーム形状の変更に伴い、エキゾーストパイプの中通しやキャブレターを車体中央部分に配置することができました。これらはスリムで乗りやすいライディングポジションにも寄与します。
サスペンションストロークはフロントが181mm、リアが105mmと長めです。これにより最低地上高は245mmが確保されています。
バネ下重量軽減も考慮されており、現在のオフロード車同様にアルミリムを採用し、悪路での走破性が向上しています。
フロントフェンダーはシリンダーヘッドへの冷却風が通りやすい、タイヤに沿ったダウンタイプとなっています。オプションでアップフェンダーも選べました。
オフロード走行への機能的配慮は細部にも及び、エンジンが水面下に浸かってもエンジンブリーザー室に水が侵入しにくい、新しいブリーザー機構を採用しています。
こうしてオフロード車としての性能を高めながら、舗装路での快適さも同時に向上させた「XL250」は、4ストロークのオン/オフ車ならではのユーザーフレンドリーなキャラクターとなりました。
「XL」シリーズは、その後「XL250S」や「XL250R」、「XLR250」と大ヒットを重ね、林道ツーリングブームの主役となっていきます。
ホンダ「XL250」(1975年)の当時の販売価格は25万8000円です。
■ホンダ「XL250」(1975年型)主要諸元エンジン種類:空冷4ストローク単気筒SOHC4バルブ総排気量:248cc最高出力:20PS/8000rpm最大トルク:19kg-m/6500rpm全長×全幅×全高:2175×880×1130mm始動方式:キック式車両重量:148kg燃料タンク容量:9.5Lフレーム形式:セミダブルクレードル式タイヤサイズ(F):3.00 21-4PRタイヤサイズ(R):4.00 18-4PR
【取材協力】ホンダコレクションホール(栃木県/モビリティリゾートもてぎ内)※2023年12月以前に撮影
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