1980年代には数多くの4ドアハードトップが登場した。なかでも、印象的な5台を小川フミオが選んだ。
かつて“ハードトップ”は、なによりカッコよかった。SUV全盛のいまにあって、スタイリッシュさでクルマを選んでもいいじゃないか! と、思い起こさせてくれるのが、4ドアハードトップだ。
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ハードトップとは、読んで字のごとし、硬い上屋(うわや)を意味する。上屋とはキャビンのこと。そこが金属製なのはハードトップ。ソフトトップとよばれた布製の幌屋根に対して生まれたスタイルである。
オープンモデルは陽光さんさんの米カリフォルニア州で、昔から高い人気を誇っていた。とはいえ、幌をしめっぱなしにして走っているクルマもいたわけだけれど、そういう使い方を見た自動車メーカーの側では、毎年のモデルチェンジが事実上“義務”になっていた事情もあって、簡便なニュールックづくりのために、「オープンカーが幌をかけた状態を、金属でルーフを作ればいいのでは?」と、思いついた。
1940年代終わりのことで、1950年代には米国の自動車メーカーはこぞってハードトップスタイルのクルマを送りだした。当初は2ドアハードトップで、のちに4ドアハードトップが追加されたのである。
4ドアセダンに対して4ドアハードトップ車のいいところは、もとがソフトトップのモデルであるだけに、スタイリッシュな印象を損なわずにパーソナル性もまた強く感じられる点だ。
日本でも、1973年に日産自動車が「セドリック」(230型)に4ドアハードトップを設定するや、いっきに人気を博した。4ドアセダンは法人営業車あるいは”お父さん世代”が乗るクルマ、というように、市場の意識が変わったのは、すごいなあと思う。
4ドアハードトップ車には、おおきく分けて2種類ある。日産自動車が好んだピラーレスハードトップスタイルがひとつ。もうひとつはトヨタの大型車に多かったサッシュレスドアスタイルだ。
ピラーレスハードトップ車はいわゆるBピラーをもたない。前後ドアのサイドウィンドウを下まで降ろすと、開放的な印象がうんと強い。米国でも人気のあったBピラーレスの車両では「若いひとがドアを閉めたまま窓から乗り降りするのがクール」といったスタイルまであった。おじさんはイタいからマネしないでください。
サッシュレスドアは、サイドウィンドウに窓枠をつけず、ドアを閉めたとき、Bピラーがウィンドウのガラスで隠れてしまうスタイルだ。メリットは一見開放的なスタイル。それにボディ強度である。
1990年代までは、開放感が市場で歓迎され、ピラーレスハードトップも多かった。バブル期のころはボディデザインの自由度もいま以上に高く、どんなハードトップ車をつくるか……デザイナーとしてもやりがいのある仕事だったのではないか? と、推察される。
4ドアハードトップ車のスタイリングはどんどん洗練されていった。トヨタを例にとると、1983年の7代目「クラウン」や1984年の5代目「マークII」などで頂点に達した感がある。これらのクルマはサッシュレスドア型。いっぽう日産は、1983年の6代目「セドリック(姉妹車は7代目「グロリア」)や1988年の初代「シーマ」などで奮闘した。
ピラーレスハードトップが下火になるきっかけは、はっきりおぼえている。1995年8月にNHK総合でオンエアされた番組『恐怖の側面衝突事故~日本車安全性の盲点』である。
当時『NAVI』の編集長だった、現GQ JAPANの鈴木正文編集長が出席した特番だ。番組内では、側面衝突実験のビデオを流し、鉄製のポールなどに側面からぶつかるような事故を起こしたばあい、Bピラーをもたない車体の変形度合いは大きい、とした。この番組が消費者に与えた衝撃は大きく、これを機にピラーレスハードトップは市場から姿を消していった。
常識を破るような自由さが、4ドアハードトップ車の身上だった。安全性を考慮しつつ、冒険的なスタイリングを生むことは可能だろうか。当時の4ドアハードトップに匹敵するような、あたらしいデザインが生まれることを期待している。
(1)トヨタ「クラウン」(7代目)
トヨタ・クラウンは、1979年の6代目から、フォーマル性とパーソナル性とをともに意識したボディバリエーションを作るようになった。
6代目は、後席あたりのルーフをビニールで覆ったドビルスタイルの2ドアハードトップを設定。7代目になって4ドアハードトップスタイルが誕生した。「いつかはクラウン」というキャッチコピーも、7代目で採用されたものだ。
クラウンのハードトップスタイルは、サッシュレスドア型だ。視覚的なポイントはもうひとつ。「クリスタルピラー」と名づけられた、キラキラと光を反射する素材を張ったCピラーにある。
ドアもベルトラインにちょっと”えぐり”が入っていて、それでボディに抑揚がついている。よくよく見ると、細部まで考え抜かれたデザインだ。一般のひとはそういうことをなんとなく感じて、クルマを気に入って買っていたはずだ。
Bピラーを温存したのはボディ強度などを考慮にいれたための選択だろうか。ただしトヨタとしてはピラーレスハードトップ(初代カリーナEDなど)を作っているので、それだけが理由ではないはずだ。
シャシーは先代から受け継いだ、旧態依然としたペリメーターフレームであるものの、上位車種は、6代目の固定式から独立式のセミトレーリングアームになった。エンジンもトップグレードの「2800ロイヤルサルーンG」などには2.8リッター直列6気筒ツインカムタイプを搭載している。
いま乗ると、振動をシャットアウトする機能にすぐれたペリメーターフレームと、やたらばたばたと動かない固定の4リンク式リアサスペンションによる、落ち着いた乗り味もいいものである。
そういうことは、ずっとあとになって振り返ってみたときに、見えてくるものだ。
(2)日産「セドリック」(6代目)
1983年登場の6代目セドリック(姉妹車のグロリアは7代目)は、全長4860mmと当時としては余裕あるサイズのボディを持ち、4ドアセダンと4ドアハードトップの設定だ。
本文でも触れたように、日本ではピラーレスの4ドアハードトップとは日産が先鞭をつけたジャンルだ。Bピラーを排してキャビンの広々感を出すのが命のようなデザインだ。
すっきりまとまった、いいスタイルをしている。先代にあたる5代目セドリック(1979年)のセールスが好調だったため、あえてのキープコンセプト(スタイリングコンセプトを継承すること)だった。
4代目(330型)は、さきに触れたように4ドアハードトップを最初に採用したモデルである。ただし抑揚をつけすぎたボディ、やたら面積の大きなクロームバンパー、丸型4灯式ヘッドランプなど、あとで思い返すと暑苦しいデザインだった。
そのあと出た5代目の430型はほとんど直線基調のデザインで、新鮮だった。ヘッドランプも長方形、グリルも縦バーの入った長方形。前から後ろまでやたら四角く、そこが斬新だったので市場でのセールスも好調だった。この6代目はおなじところを狙いすぎて、新鮮味がなかったのが敗因。セールスは芳しくなかったのだ。
トヨタみたいに、Cピラーに小細工を施したりすればよかったかもしれない。Y30型はあくまでピラーレスハードトップだけにこだわりを見せたのだ。この種のクルマは、やりすぎぐらいがちょうどいい、というマーケティングの反面教師になってしまった。
(3)日産「ブルーバード」(7代目)
1983年の7代目ブルーバードの大きな特徴とはなにか。前輪駆動化されたことがひとつ。もうひとつ特記すべきは、1984年にV型6気筒エンジン搭載の「マキシマ」を設定したことだろう。
初代にあたるマキシマは4ドアのピラーレスハードトップ。こちらは大型バンパーに、モールの多さなど、米国テイストを感じさせたので、Bピラーがない4ドアスタイルも違和感がない。
同時に日産自動車ではブルーバードにもピラーレスハードトップボディを用意。1.8リッターターボ搭載の「1800SSS(スリーエス)」などはどちらかというと欧州テイストを感じさせるボディであったため、4ドアハードトップボディにはいまひとつ似合わない気がしたものだ。
続く1987年の8代目「U12」にもピラーレスハードトップスタイルは継続された。とくにこのU12型はラリーへの挑戦などモータースポーツイメージも打ち出そうというクルマ。Bピラーのある4ドアセダンスタイルのほうがしっくりきたのは事実だ。
(4)三菱「ギャランΣ」(5代目)
トヨタならマークII、日産ならブルーバードといった競合を見ながら開発されたのが、1983年発表のギャランΣだ。特徴は前輪駆動化されたこと(マークIIは後輪駆動)。それに、前輪駆動のセダンとしては最大、と謳われたボディである。
1984年に追加されたのが4ドアハードトップ。車体はサッシュレスドア型で、リアクオーターピラーの色合いをボディ色とは変えたカラースキームが、いいかんじだった。
Σはモデルチェンジするたびに、デザインテーマを大きく変えた。1976年の3代目と1980年の4代目はすっきりした欧州テイストともいえるスタイリングだったものの、この5代目では米国を強く意識したものになった印象が強く残っている。
5代目は機能性を前面に押し立てたのが特徴だ。それはボディサイズのことである。全長4560mmにホイールベースは2600mm。前輪駆動化のメリットを最大限活かし、余裕ある室内空間を実現したことを喧伝していた。
サッシュレスドア型によるエレガントな雰囲気を持ついっぽう、2リッターのターボモデルは速かった。そのあと4WD、4WSなどハイテクをこれでもかとばかり詰め込んだスーパーセダン「ギャラン」にモデルチェンジする。それはそれでいいけれど、5代目の適度にほっそりした印象は記憶に残るものだ。
(5)マツダ「ルーチェ」(4代目)
個性的なスタイリングの4代目ルーチェ。いま乗っていたら、かなり目立ちそう。1981年10月に4ドアハードトップ、4ドアサルーンが登場した。当時から独自のデザイン感覚が目についたモデルだ。
このルーチェ以上に兄弟車である「コスモ」はユニークだった。4灯式の格納式ヘッドランプを持ち、わざわざ2本のBピラーを立てた独特の雰囲気のクーペが、とくに知られている(街ではあまり見かけなかったような……)。
対するセダンは6ライト(リアクオーターピラーにも窓を開けたスタイル)の、超がつくほど退屈な、いや落ち着いたスタイリングだった。
ルーチェの4ドアハードトップは、クーペを4ドア化したようなイメージのデザインだ。固定式ヘッドランプに、Aピラーをブラックアウトしたスタイルで躍動感を生んでいた。サッシュレスドアのスタイルをうまく活かしていていると思う。
エンジンは12A型ロータリーターボを搭載。「全域・全速ターボ」と謳われた。当初はノンターボの12A型で、ファンをガッカリさせたものだ。結局、160psのターボ版が搭載され、マツダファンを安心させた。
文・小川フミオ
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みんなのコメント
マツダのペルソナ(ユーノス300)あたりが最後だったのかなと思います。
ラップラウンドされたラウンジソファーのようなリアシートに座って
眺める外の景色が、やはりBピラーがないこともあってなかなか
開放的で良かったなぁと思います。