9月10日(日)静岡県の富士スピードウェイでWEC世界耐久選手権第6戦富士6時間レースの決勝が行われ、8号車トヨタGR010ハイブリッドのブレンドン・ハートレーと平川亮がポール・トゥ・ウィン。姉妹車の平川亮組8号車が2位で続き、チームの『ホーム』レースでの1-2フィニッシュを達成。
小林可夢偉、マイク・コンウェイ、ホセ-マリア・ロペスの3名が駆る7号車は、ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツの6号車ポルシェ963との激しいバトルを制し、今季4勝目を挙げた。
主導権奪還で地元ラウンド完全制覇。小林可夢偉の7号車完勝でトヨタが1-2達成【WEC第6戦富士決勝レポート】
この勝利でTGRは今大会獲得可能な最大ポイントを得て、5シーズン連続、通算6度目となる世界耐久選手権のマニュファクチャラーズチャンピオンを、最終戦を待たずしてホームコースの富士スピードウェイで確定した。
セバスチャン・ブエミ、ブレンドン・ハートレー、平川亮の乗る8号車は、7号車に遅れること39.119秒差の2位で続き、終結した合計5万4700人ものモータースポーツファンの前でチームに完璧な結果をもたらした。
7号車の3名のドライバーが今季4勝目を挙げたことで、ドライバーズチャンピオン争いはさらに激しさを増し、今季最終戦となる第7戦バーレーン8時間で決まることとなる。8号車は今大会2位に入ったことで、ランキング首位の座を守ったものの、2位の7号車との差は15ポイント。最終戦の8時間レースでは最大39ポイント獲得可能であるため、最後まで激戦となることが予想される。
結果だけを見れば、TGRは完璧な予選による最前列独占からスタートを切り、決勝も1-2フィニッシュを果たしたのだが、レースの内容は決して容易なものではなった。2台のGR010ハイブリッドはスタートで順位を落とし、6時間のレースを通してライバルのフェラーリ、ポルシェらハイパーカーのライバル勢とドラマティックな接近戦を繰り広げることになった。TGRがようやく首位に立ったのは、レーススタートから4時間が経過したころのことだった。
レースのスタートでは、ポールポジションの7号車コンウェイがTGRコーナー進入時の混乱で行き場を失い3位へ、2番手スタートの8号車ブエミも同じく大混乱となったTGRコーナーでフェラーリ50号車と接触し、6位へと順位を落とすこととなった。
1周目から導入されることとなったセーフティカー(SC)走行からレースが再開されると、7号車コンウェイは2位争いのなかでコースアウトを喫し4位へと後退。一方、8号車ブエミはキャデラック2号車をかわして5位へと順位を上げた。
チャンピオンを争うTGRとフェラーリのエキサイティングなバトルは、TGRの2台が先行するかたちとなる。コンウェイとブエミはそれぞれ2台のフェラーリ499Pとバトルを繰り広げ、序盤首位に立っていたポルシェ6号車が最初にピットへ向かうと、7号車が首位に、8号車も50号車フェラーリをかわし、TGRが1-2体制となった。
TGRの2台も1時間を経過したところでピットへ向かい、首位の6号車ポルシェをTGRの2台が追う展開に。2時間を経過し、7号車はロペス、8号車は平川へとドライバーを交代すると、ロペスはその時点での最速ラップタイムをマークするハイペースで首位ポルシェとの差を詰めていき、平川も上位2台の争いに加わるべく追い上げを開始した。
レースが折り返しとなる3時間を経過するころ、各車は3回目のピットへ向かい、給油を行ったあと、ロペスと平川はそのまま2スティント目へと突入。ロペスは首位のポルシェのすぐ後まで追いつき、さらに逆転を狙うが、その後方からは平川が見事な走りで一時は20秒以上あった首位との差をじりじりと削っていき、首位争いは3台がそれぞれ1秒以内という接近戦に突入。平川は自身のスティント終盤となる4時間を迎える直前に見事なオーバーテイクを見せ、首位に浮上した。
その数分後、2位の7号車が最後のドライバーとして小林へ、翌周8号車はハートレーに交代。8号車は7号車の前でコースに復帰したが、7号車小林が猛烈な速さで追い上げ、8号車をパス。首位に立った7号車の小林は、6号車ポルシェとの間に8号車を挟む形で、さらにファステストラップを叩き出すなど、後続との差を広げていった。
残り1時間、最後のピットを終えた小林は、後続との差をコントロールしながら周回を重ね、229周でトップチェッカー。富士で行われた現行WEC10戦中の9勝目、そして、2016年以来続く連勝記録を6へと伸ばした。ハートレーの8号車は2位でチェッカーを受け、TGRは1-2フィニッシュという最高の形でホームレースを終えた。
レースウィークを通してチームに帯同したトヨタ自動車社長兼TGRヨーロッパ会長の佐藤恒治社長を中心に、富士に集結したパートナーやTGRファン、ドライバー、そしてチームが一体となり困難なレースの末に勝利を獲得した。ドライバーズランキングを決する今季最終戦は、中東バーレーンで、バーレーン8時間レースとして11月4日(土)に決勝が行われる予定だ。
TGRから第6戦の決勝を戦い抜いたドライバーらのコメントは、以下のとおりだ。
■ドライバーコメント
●小林可夢偉(チーム代表/7号車トヨタGR010ハイブリッド)
「目標だった1-2フィニッシュを達成するのは容易なことではありませんでしたが、我々のペースは素晴らしかったです。ハードワークでこの素晴らしいGR010ハイブリッドを仕上げてくれたチームと、共に支えてくれたパートナーの皆様やトヨタ関係者に感謝いたします」
「あれほど多くのTGRの旗がコース上で振られているのを見ることができて本当に嬉しいですし、力強く応援してくれたファンの皆様にも本当に感謝しています。今日はとても難しいレースでした。特にスタートで幾つかポジションを落とすこととなったのが大きかったです。このコースで他のハイパーカーを追い抜き、また周回遅れの車両をかわすのは、とても難しいのですが、なんとか上手く対処し、やるべきことをやってチームが本当にドライバーを助けてくれました」
「ホームレースでマニュファクチャラーズチャンピオンを決められたこともとても嬉しいです。今シーズン、このタイトルを獲得することは難しい挑戦でしたが、速いクルマと強力なチームがあり、そして、ドライバーもミスすることなく素晴らしい走りをしました。我々の最初の目標であるマニュファクチャラーズタイトルを勝ち取ることができたので、まずは祝いたいと思います。次のステップはドライバーズタイトル獲得で、我々7号車は追う立場ですが、最終戦バーレーンでは全力を尽くします」
●マイク・コンウェイ(7号車トヨタGR010ハイブリッド)
「チームにとって最高の一日になった。我々は1-2フィニッシュでマニュファクチャラーズタイトルを決めることを目標にここ富士へとやってきて、それを成し遂げたのだから。それは簡単なことではなく、ポジションを取り戻すためにとても苦労したが、最終的な結果には満足しているよ」
「ホセと可夢偉は素晴らしい仕事をしてくれた。我々全員にとって厳しいレースで、オーバーテイクの難しい場面もあったんだ。我々とポルシェとのペースは非常に拮抗していたので、難しい戦いになることはわかっていた。僕たちはチャンスが来るのを待ち、可夢偉が首位に立ったあとは大丈夫だった」
「この週末だけでなく、シーズンを通して我々ドライバー全員と、エンジニアも最高の仕事をしたと思う。TOYOTA GAZOO Racingの皆、マニュファクチャラーズタイトル獲得おめでとう。次はドライバーズタイトル獲得へ向けての戦いがバーレーンで待っている」
●ホセ-マリア・ロペス(7号車トヨタGR010ハイブリッド)
「富士で勝てて最高の気分だよ。7号車にとって、今季4勝目という素晴らしい結果をにすることができたからね。また、チームがマニュファクチャラーズタイトルを獲得できたことも嬉しい。今回の勝利を可能にしてくれたこのWECプロジェクトは、ここ日本の東富士、ドイツ・ケルンなど多くの仲間が支えてくれたおかげであり、みんなに祝福を贈りたい。このグループの一員であることを誇りに思うよ」
「可夢偉とマイクは素晴らしいレースを戦ってくれた。僕自身の走りにもとても満足しているが、ポルシェを追い抜くのはとても難しく、最後はフロントタイヤが摩耗して逆転は叶わなかった。しかし、あの時点で重要だったのは大きく引き離されることなくついていき、可夢偉へとバトンを渡すことだった。彼はペースも良く、首位に立ってからは振り返ることなく、後続を引き離していった。我々はまだドライバーズタイトルを争っているため、今からバーレーンでの戦いが楽しみだね」
●セバスチャン・ブエミ(8号車トヨタGR010ハイブリッド)
「チームに取って完璧な結果となった。みんなが素晴らしい仕事をした証として、マニュファクチャラーズチャンピオン獲得を祝おう。今回は非常に接近したレースで、ファンの皆には間違いなく楽しんでもらえたと思う」
「我々はスタートでポジションを落とし、他のハイパーカーのライバルをかわすのに時間がかかってしまったので、燃料をセーブしながら戦うことを選択した。そして最後に、亮が素晴らしいスティントでトップ争いに復帰させてくれたんだ。ただ、今日の7号車には敵わなかったから、彼らを祝福したい」
●ブレンドン・ハートレー(8号車トヨタGR010ハイブリッド)
「母国ファンの前でチームが1-2を成し遂げ、世界タイトルを勝ち取る、それが我々のミッションであり、それを今日は無事に達成することができた」
「2台のGR010ハイブリッドは、共に1周目でポジションを落とし、その後ポジションを取り戻すのは大変苦労したが、チームが頑張ってくれたおかげで1-2を勝ち取れたと思う。終盤の可夢偉は、我々よりも圧倒的に速くとても太刀打ちできなかったし、この理由を分析する必要があると思う。7号車は今日の勝利にふさわしく、本当に速かった」
●平川亮(8号車トヨタGR010ハイブリッド)
「今日は全力を尽くし、ホームレースで可能な限り最高の結果を勝ち取ることができました。大変な戦いで、簡単なレースではありませんでした。我々8号車にとっては、勝てなかったのでもちろん少し残念ではありますが、全体としてみれば1-2フィニッシュを果たせたのでとても満足しています」
「マニュファクチャラーズチャンピオンを獲得できたことも最高ですし、今日の結果はドライバーズタイトル争いにおいても悪くありません。シーズンはあと1レースを残すのみですが、バーレーンでも同様の結果が得られることを期待しています」
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