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新型インサイトで実感、電気式CVTは最高のトランスミッションだ

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新型インサイトで実感、電気式CVTは最高のトランスミッションだ

■アクセル操作による加減速のコントロール性だけでも電動化にシフトする価値はある

2018年の年末にホンダから新型インサイトが登場した。1.5Lハイブリッドというパワートレインで、メーカー希望小売価格326万1600円~362万8800円というのは、いかにも高価に感じた。プラットフォームからするとシビックハイブリッドの後継ともいえるが、それにしても高価であるし、2モーターの「スポーツハイブリッドi-MMD」としては初めて1.5Lエンジンとの組み合わせになることから、アコードやCR-Vのパワートレインに対して力不足で、廉価版的な走りしかできないのでは? と予想していたこともあって、それほど期待していなかった。唯一の希望といえたのは、1.5Lエンジンと2モーターを組み合わせたホンダのプラグインハイブリッド「クラリティPHEV」の走りが良かったこと。とくに高速域においてエンジンをモーターがアシストする感覚は独特で、そうした新しいドライブフィールがあれば、インサイトの個性として存在感を示すかもしれないと考えていたのも正直なところだ。

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しかし、そうした先入観は新型インサイトのステアリングを握り、公道に出た瞬間に間違いであることに気付かされた。新しいインサイトは、市街地においては基本的にモーター駆動だけで走る電動率の高いクルマだが、そのフィーリングは電動であることを前面に押し出したものではなかった。アクセルを踏めば、そのストローク量や速度に応じて適切な加速ができる。アクセルペダルから足を離せば、これまた適切な(回生ブレーキによる)減速を見せるし、回生ブレーキの強さはパドルセレクターによって3段階にコントロールできる。さらに、回生ブレーキと機械式ブレーキをミックスしているにもかかわらずブレーキペダルへのリニアリティも高いレベルに仕上がっている。アクセル、ブレーキいずれのペダル操作においても、ドライバーの意志がしっかりとクルマに伝わり、期待通りの挙動を見せてくれる。これらは、エンジン車における理想とされている感覚に近い。いや、電動化によって得た自由度を、従来的な価値観における理想の実現に振り向けたと感じる。

どの速度からでも期待通りの加速ができ、その上シフトショックもない。これは大排気量エンジンを固定ギアで走らせたときに生まれるフィーリングだが、それを1.5Lエンジンと2つのモーター(発電用と駆動用)、そして少々のバッテリーを組み合わせたハイブリッドパワートレインで実現できると新型インサイトは証明した。正直、理屈としては実現可能とは思っていたし、電動パワートレインの目指す理想のひとつという認識もあったが、新型インサイトがここまで見事に具現化しているとは思っていなかった。大排気量エンジン的なフィーリングから逆算すると、正直に言ってインサイトの中心グレードが約350万円というのは妥当に感じるし、むしろバーゲンプライスにも思えてくる。そのくらい市街地を走っているときの、この1.5Lハイブリッドパワートレインは優秀だ。

そういえば「スポーツハイブリッドi-MMD」のデビュー当初、ホンダはハイブリッドシステムを「電気式CVT」と表現していた(じつはプリウスなどトヨタのハイブリッドシステムも同様の呼び方をしている)。2つのプーリーがベルトでつながっていることで無段変速を行なうのがCVTというイメージが強いだろうが、発電用モーターと駆動用モーターをそれぞれプーリーに置き換え、ベルトのかわりに電気でつないでいると考えれば、たしかにスポーツハイブリッドi-MMDは電気によるCVTといえるというわけだ。新型インサイトのエンジンは最大熱効率40.5%という非常に優秀な内燃機関であるが、最大トルクは134Nmに過ぎない。しかく駆動モーターの最大トルクは267Nmもあるし、そこに変速ショックは存在しない。あらためて「電気式CVT」が優秀なトランスミッションであることを確認すると同時に、クルマの電動化が桁違いにリニアな乗り味を実現するのであれば、その拡大はウェルカムとするユーザーも多いだろうと感じた。新型インサイトが示した走り味は、いわゆる内燃機関+多段変速機によるパワートレインは過去のものになっていくターニングポイントになるやもしれない。

文:山本晋也
自動車コミュニケータ・コラムニスト

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