立体音響のいま Dolby Atmos for Carsとは
執筆:Hajime Aida(会田肇)
【画像】ドルビーアトモス for カーズのデモカー「アルファード」を見る【7.1.6ch】 全11枚
“車での移動空間がエンターテイメント空間になる”
このテーマをキーワードに、ドルビージャパンが年初の国内イベントに出展したのが、車載用として開発された「Dolby Atmos(以下:ドルビーアトモス)for Cars」である。その体験会がドルビージャパンのデモルームで行われた。
体験したのは「ドルビーアトモス for Cars」をインストールしたアルファードだ。
車内には合計21個のスピーカーを搭載してドルビーアトモスをフルスペックで再現できる7.1.6ch環境が構築されていた。システムとしては、平面スピーカー(7ch)、サブウーファー(1ch)、天井スピーカー(6ch)を搭載する。
ユニットは、平面スピーカーが30mmツイーターと170mmウーファーの2ウェイ仕様をセンターとフロントドア、スライドドア、3rdシートに。
サブウーファーはカーゴルームに250mmユニットを、そして天井スピーカーとしてフロント、ミドル、リアの3か所に左右2個ずつ50mmユニットを組み合わせたものだ。
一般的にドルビーアトモスといえば、サウンドに立体感を生み出すために平面だけでなく天井にもスピーカーを配置することで知られる。これによって、3次元での音の移動が再現可能となるのだ。
特に、映像制作者の意図を反映させるためにもこのシステムは重要なものとされており、このアルファードはその再現をフルに発揮するために準備されたものと言えるだろう。
「チャンネルベース」「オブジェクトベース」?
ただ、今回の試聴会はそのシステムをフルで体験するために設定されたのではない。
ドルビーアトモスでは、そうした“天井のスピーカー”まで用意したフルシステムでなくても、立体的なサウンドが楽しめることを実体感として知ることが目的だ。
実はドルビーアトモスを知る上で理解しておくべきことがある。それは、サラウンド効果を再現する手法として、「チャンネルベース」と「オブジェクトベース」という手法があることだ。
「チャンネルベース」とは事前に想定される出力チャンネル数に合わせた形で音声をあらかじめ制作するもので、各スピーカーからはそれぞれのチャンネルが対応して再生する。
収録場所の音場をそのまま再現するのに向いており、コンサートホールやライブ会場の再現に向いている手法と言える。これまでのサラウンド再生はこの手法がほとんどだ。
一方、「オブジェクトベース」では、音源に“位置情報”を持たせ、各スピーカーからどのような音を出すのか、その情報をリアルタイムにレンダリングして再生する。
それぞれの音を“オブジェクト”として捉えているため、システムに応じて動き・音量などの変化に追従できるのがポイントとなる。
つまり、チャンネルベースで制作された従来のサラウンドでは、立体的なサウンドを再現するにはどうしても天井にもスピーカーを用意する必要がある。
それに対してオブジェクトベースでは、動きを再現すべきオブジェクトに音声+3次元の位置情報を持たせ、それを再生時のシステムに合わせて演算してオブジェクトの動きを追従させる。
これによって、実際にはスピーカーがない場所から、あたかも音が出ているように錯覚させられ、数少ないスピーカーでも立体的なサウンドが楽しめるようになるというわけだ。
広がるドルビーアトモスのコンテンツ
もちろん、これを実現するには、制作時にドルビーアトモスに合わせたエンコードが必要であり、逆に再生時にはそのフォーマットに対応したAVアンプが必要になる。
一方でドルビー・アトモスの下で製作されたソフトであれば、たとえスピーカーが2chしかない場合でも、擬似的に立体的なサウンドとして再生できるメリットが生まれる。
それは特にユニットの取り付けに制限がある車載オーディオにとってこそ大きなメリットになると言っていいだろう。
ドルビージャパンによれば、すでに映画だけでなく、音楽でもドルビーアトモスで制作されることが増えているそうで、実際に米国の音楽チャート「Billboard」でシングルが100以内に入るトップアーティストの3分の2が、1曲以上をドルビーアトモスで配信している状況にあるという。
日本でもAdoやAimer、Official髭男dism、宇多田ヒカルをはじめ、小泉今日子、松任谷由実、矢沢永吉など採用するアーティストが続々と増えているそうだ。
また、昨今は自動車の電動化が進んできたことで車内環境の静粛性が増し、同時により高品質なカーAVシステムが求められるようになった一面もある。
そのため、2021年3月に米自動車メーカーのLucid Motorsが世界初のDolby Atmos対応EV「ルーシッド・エア」を発表し、それ以来、中国のEVメーカーであるNIOや理想汽車、XPENGなども相次いで対応モデルを発表。
22年10月にはメルセデス・ベンツが、メルセデス・マイバッハやEQS、EQS SUV、EQE、Sクラスで対応を開始し、翌11月にはボルボ・カーズの電動SUV「EX90」がDolby Atmosに対応することを発表するまでになっている。
今後、日本車にもドルビーアトモス対応の車両が登場することを期待したいところだ。
コンフィギュレーション「A」「B」を体験
さて、体験は天井スピーカーを使った“有”の“コンフィギュレーションA”と、天井スピーカー“なし”の“コンフィギュレーションB”の2種類を切り替える形で進められた。
楽曲はドルビーアトモスに対応したApple Musicで配信されているものを使用し、これを車載システム代わりのPCでデコードした上で車載状態にあわせてDSP処理したものを、セカンドシートの中央に座って試聴。
まず体験したのが、世界的DJのTiestoとSevennによるEDM「BOOM」。
天井スピーカー有りの“コンフィギュレーションA”では音が車内を自在に動き回る様子が再現され、ドルビーアトモスならではの多彩な演出が体験できた。
次に天井スピーカーなしの“コンフィギュレーションB”では若干、音の再現が下に下がった気はしたが、それでも音が動き回る様子はほぼ同じ。
スピーカーが少なくなっても制作者の意図がきちんと反映されているのが伝わった。
次にウィーン・フィルハーモニー管弦楽団&ジョン・ウィリアムズによる「帝国のマーチ(『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』から)」のオーケストラによる演奏を“コンフィギュレーションA”で試聴した。ここではホール全体で包み込まれるような音が再現された。
すごく気持ち良かったのが荒井由実の「中央フリーウェイ」。音に対する遊びはほとんどないものの、目を閉じると目の前の空間にその音像が浮かび上がり、フンワリとしたメロディーが自然に再生される。
こうした制作者の意図が様々な形で再現されることこそ、ドルビーアトモスの美点であるというわけだ。
クルマの中を、本格的な映画館に?
今回の体験ではセカンドシートの中央という、クルマの乗り方として想定しにくい状態で試聴することになったが、これはあくまでドルビーアトモスの能力を体験するために用意されたもの。
そこから先は自動車メーカーやティア1がユーザーの使い勝手を考慮して音作りをすることになる。ドルビージャパンがそこに立ち入ることはない。
最終的にはその基準に到達しているかをチェックするテストキットを渡してセルフテストを行い、その結果に応じて認証するといった流れとなるという。
最後に映像コンテンツも楽しむ機会が与えられた。
この時は画面サイズこそ小さいものだったが、音が上下に広がって再現される臨場感はその画面サイズの小ささを覆すに十分。
改めて音が重要な構成要素になってることを実感させられた次第だ。
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