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化石燃料を使わずEVでもない。日本のモータースポーツが目指す新燃料開発と将来【GTA会見】

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化石燃料を使わずEVでもない。日本のモータースポーツが目指す新燃料開発と将来【GTA会見】

 11月7日、スーパーGT第7戦ツインリンクもてぎの期間中に行われた、スーパーGTをプロモートするGTアソシエイション(GTA)の定例記者会見で、GTAの坂東正明代表が、ホンダ、トヨタ、ニッサンの自動車メーカーの協力とともに、2022年からテストをスタートさせる『カーボンニュートラルフューエル』についての概要を改めて説明した。化石燃料をまったく使用しない燃料であることや、当初はリッターあたり1000円以上になるコストの面などが明らかにされた。

 2022年からスーパーGT、そして全日本スーパーフォーミュラ選手権といった国内最高峰カテゴリーででテストされ、2023年からのレースでの使用を目指しているカーボンニュートラルフューエルは、『e-フューエル(二酸化炭素と水素の合成燃料液体)』、『バイオフューエル(植物や生ゴミ、微細藻類、植物性の廃油などから生成)』とは呼び名は異なり、レースでのオリジナルの名称になる。その背景を、坂東代表が前回の発表に加えて説明した。

スーパーGTの新・環境燃料呼称は『カーボンニュートラル・フューエル』。2023年、全車への導入を目指す

「F1やWEC世界耐久選手権だったり、SRO(モータースポーツ・グループ)のレースが、(近似のゼロカーボン燃料)導入を目指しそれぞれいろいろな呼び名で言っているが、燃料の生産過程においての二酸化炭素をどうするか。メディアによってはE10(バイオエタノールを10パーセント混合したガソリン)という書き方もあったが、E10はガソリンの部分は化石燃料であり、『カーボンニュートラルフューエル』は化石燃料を使わない。今のガソリンに何かを足すのではなく、違うものでガソリンを作るということ。二酸化炭素や水素、ゴミなどからガソリンを作り、そこにE5なりE10を足す」と坂東代表。

 これまでの化石燃料+バイオエタノールとはまったく異なり、そもそも化石燃料を使用しないことを前提としているカーボンニュートラルフューエル。坂東代表はさらに『e-フューエル』『バイオフューエル』との違いについて説明を続ける。

「『カーボンニュートラルフューエル』は、現在の生産過程では二酸化炭素は出る。化石燃料を一切使わないものからガソリンは作るが、その生産過程で出る二酸化炭素をいかに減らすか。e-フューエルの定義も難しくて、食べ物以外の原料で作るものを将来的にe-フューエルと呼ぶ。生産過程を含めると今の段階では全部がe-フューエルとは言えないことから、『カーボンニュートラルフューエル』という呼び方になっている。将来図としてはe-フューエルとなるかもしれない」と坂東代表。

「海外でやっている『e-フューエル』『バイオフューエル』に比べても、この島国の日本でとんでもないことをやろうとしている。他にはないと思う。だから値段も高い。今のところリッター1000円くらいの話からスタートしていて、そこに輸入による税金や費用がかかってくる。今のスーパーGTは使わなかった分のガソリンを入れて、1戦あたり2万5000リットルくらいのガソリンを使っている。年間8戦で20万リットル。テストとスーパーフォーミュラ分を含めて、年間約30万リットル用意しないといけない」

 リッター1000円で単純計算しても最低、年間3億円以上のコストになる。

「費用の面も含めてJRP(日本レースプロモーション/スーパーフォーミュラ運営会社)と話はしている。カーボンニュートラルに対する燃料の調達においては、GTAがコントロールして、ドラム缶だったりで各サーキットに持っていく形になる。どういう燃料を仕入れるか、今はいくつかのサプライヤーをチェックしている」

「実車テストもこれから行っていく。ベンチテストはもうやっているし、そのための輸送もお金をかけてやってもらっている。国がどうこうではなく、日本の根幹産業である自動車業界のなかで、我々が将来的な燃料を作っていく」

 また、『カーボンニュートラルフューエル』はJIS規格に合わせることで、GT300含めて使用できることを目指していく。「業界全体でそれを作ろうとしている。ゆくゆく市販車にも転用できる技術かもしれないし、日本で生産できるのがいちばんだが、まだ日本だけでは作れない。もっと多くの力を集めてやらないといけない。いま予算をかけてやったところで、将来的にペイできるかも分からないが、我々は実績を積んで、モータースポーツからきちんとデータとして残していく」

 環境への配慮で考えるならば、EV(電気自動車)という選択も考えられるが、「五感を刺激するのがレース(坂東代表)」と話すように、『カーボンニュートラルフューエル』は音や振動、匂いと言ったこれまでの内燃機関エンジンの魅力を引き継ぎつつ、環境への影響と社会的な配慮を両立させることができる。

 日本のモータースポーツが再び走る実験室となって取り組む、次世代の将来的な燃料開発。まだまだスタートしたばかりだが、スーパーGT、そしてスーパーフォーミュラが先導する形で、これからさらに多くの協力会社、賛同者が増えていけば、日本のモータースポーツがレースの枠組みを越えて、世界への先駆けとなるかもしれない。

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