恒例の開幕前合同テスト“メディアデイ”を目前に控え、BTCCイギリス・ツーリングカー選手権に参戦するホンダ系の“名門”チーム・ダイナミクスが電撃的なアナウンスを実施し「2023年のチャンピオンシップに参戦しない」ことを確認した。チームは事実上の活動休止に入ると同時に、今季ホンダ・シビック・タイプRを走らせる唯一のチームとなるワン・モータースポーツ(旧BTCレーシング)のサポートに回るという。
2004年にホンダとのジョイントを開始して以来、シリーズを代表するトップチームとして君臨してきたチーム・ダイナミクスが、開幕目前での参戦断念という苦渋の決断を迫られることとなった。
FL5型ホンダ・シビック・タイプR TCRのデビューは英国から。王者が世界に先駆け投入/TCR UK
2021年にシリーズとチームへの復帰を果たした元王者“フラッシュ”ことゴードン・シェドンは、この年明けの1月にも「新シーズンも3年連続でホンダのチームに留まろうとしているし、課せられた仕事に邁進したい」と語っていたばかりだったが、今月末の開幕戦ドニントンパークに向けては、その去就さえも不透明な状況となってしまった。
間接的には、潤滑油ブランド『カタクリーン』のパーソナルスポンサーを持ち込んでいたダニエル・ロウボトムが、この2023年を前にモーターベース・パフォーマンスが運営するNAPAレーシングUKへの移籍を決めたことが影響した……との憶測も出ているが、BTCCで複数のタイトルを獲得したチームは今季、同じホンダ陣営として参戦してきたワン・モータースポーツの支援に専念することを決断した。
「これは僕らのビジネスにとって非常に難しい決断だった」と明かしたのは、現オーナーであり自身もBTCC“3冠”を獲得するホンダ使いのマット・ニール。
「残念ながら、現在の経済状況では来たるBTCC新シーズンに向け、活動をコミットするために必要な商業的パートナーシップを確保することができなかった。僕自身、ずっとBTCCにいて多くの素晴らしい機会と思い出を与えてもらったし、僕らが直接関与できないことに非常に失望し、献身的な従業員やパートナー、ファン、サポーターのためにも深く悲しんでいる」と続けたニール。
「しかし、僕らは依然としてホンダ・ブランドをレースの最前線に保ち続け、最終的にレースで勝つことを望んでいる」
「もちろん僕らの関与した期間中に、このブランドはチャンピオンシップでもっとも成功したメーカーのひとつになった。わずか半分の活動年数で、フォードに次いで2番目の勝利数を数えるブランドになったのだからね」
■シリーズ共通エンジンからホンダ・ユニットにスイッチ
その系譜を踏まえてチーム・ダイナミクスは、この2023年はチームにとって必要な充電期間と捉えサポート業務に専念。これによりワン・モータースポーツは、昨年まで搭載したTOCA共通エンジンと決別し、直近のシーズンでダイナミクスが使用してきたニール・ブラウン・エンジニアリング製のホンダ・ユニットを使用する。
「僕らは2023年にワン・モータースポーツをサポートし、彼らがレースに勝利し、ドライバーとチームのチャンピオンシップに挑戦するのを支援することにより、冬の間に行われたリソースの投入と開発を有効に活用することを目指している」と、この決定が土壇場のものであったことを窺わせたニール。
「BTCCに関係するすべての人、とくに長年にわたって僕らをサポートしてくれた(BTCC運営責任者でTOCA代表の)アラン・ゴウに感謝したい。すべてのチームとドライバー、とくにワン・モータースポーツ・ウィズ・ニール・ブラウン・エンジニアリングの次のシーズンに向け、最高の幸運を祈っている。もちろん僕らも積極的に働きかけ、将来的にBTCCに戻ってこられることを目指していくよ」
1992年にBMWでシリーズ参画を果たしたチーム・ダイナミクスは、ニールとともに強豪の一角に成長すると、シリーズがFIAのスーパーツーリング規定を採用した時代にはマツダ、フォード、ニッサンのマシンを投入。休止期間を挟んで2004年からはホンダにスイッチし、地元法人のファクトリー支援を得て6回のドライバーズタイトルを獲得してきた。
そのダイナミクスの顔とも言えるダブルエースのニール&シェドンは、キャリアを通じて各3回のドライバーズチャンピオンを獲得し、それぞれが52勝を記録。チームとしても通算126勝を挙げている。
こうした急転直下の動きもあり、昨季まで2年間をBTCレーシングで戦った33歳のジェイド・エドワーズは、ルノー・クリオUK時代の“古巣”とも言えるチームハードに復帰。ダン・ロイドやボビー・トンプソンらと並び、この4月12日に開催される公式テストからクプラをドライブすることが決まっている。
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