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臆せず乗れる!優男なイタリアン・スポーツ

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臆せず乗れる!優男なイタリアン・スポーツ

ドゥカティのフルカウルモデルと聞くと、カッコよくて、スポーティで、実際速いのだろうけれど、「自分が乗るのはちょっと……」と腰が引ける人が多いかもしれない。ポジションがキツくて、ピーキーな性格で、楽しむ余裕などないのでは、と。ワタシもそう思っていました。

だからドゥカティ・スーパースポーツに、街で、高速で、そして峠で乗って、そのファン・トゥ・ライドぶりにビックリ! 優しくて、フレンドリーで、そのうえハンサム。すっかり虜になりました。自分、男ですが。

新機能の追加で盤石になったバイク界のスーパーオールラウンダー

このドゥカティ・スーパースポーツは、ガチ系のパニガーレシリーズとは一線を画す、公道でのファンライドをメインに据えたモデルだ。いかにもドゥカティらしく、鋼管を三角に組んだトレリスフレームで、937ccのL型2気筒エンジン(110ps)を包み込む。フレーム エンジンから直線的に伸びるレイダウンサスで吊られるサスペンションアームは、アルミダイキャスト製。片持ち式なのがいかにもレーシィだ。ボディ右サイドを見ると、むき出しのホイールに少しかかる、短く切り詰められたツインマフラーがいやでも目に入って、スポーツバイクに必須の「マスの集中化」といった言葉を思い出させる。イタリアンバイクは、機能を視覚化してデザインに昇華させるのが本当にうまい。

今回の試乗車となった「S」グレードは、オーリンズ製のサスペンション、ギアチェンジの際にクラッチレバーの操作が不要なクイックシフター、そしてシングルシータールックを演出するリアシートカバーを標準で装備するスーパースポーツの上級版。価格は、スタンダードモデルが162万9000円、Sが180万9000円(赤/マットグレーとホワイトは183万9000円)となる。

いかにも「走りそう」なスーパースポーツSのシートに跨ると、「アレ!?」。意外にポジション、楽だ。シート高は810mm。クッションの幅が狭いおかげで、身長165cm(短足)の自分でも、両足の親指を地面に付けることができる。いまどきのスポーツモデルの“足つき”としては御の字だろう。

ハンドルに手を伸ばすと、もちろん前傾姿勢は強いられるが、上目遣いに前方を睨むほど頭を下げる必要はない。むしろ「これなら気楽にツーリングに行ける!」と嬉しくなるレベル。ハンドルが体に近く、しかも思いのほか位置が高い。トップブリッジの上にもう一段、上に伸びる取付基部が置かれて、そこにバーハンドルが差し込まれるためだ。

94mmのビッグボアを持つ水冷Lツインは、110psの最高出力を9000rpm、9.5kgmの最大トルクにいたっては6500rpmで発生する。しかも最大トルクの80%を3000rpmで得られるという、スポーツバイクとしては異例に扱いやすいスペックを持つ。とはいえ、937ccのキャパシティである。発進時に穏やかにスロットルを開けても、不等間隔爆発のトラクションをストレートにライダーに伝える力強さ。特徴的な排気音と併せ、常に「ドゥカティに乗っている」ことを意識させるエンジンだ。

スーパースポーツには、スロットル操作とエンジンを電気的につなぐ「ライド・バイ・ワイヤ」が採用されている。エンジンの出力マップを変えるライドモードは3種類用意され、デフォルトの「ツーリング」ほか、「アーバン」と「スポーツ」から選択できる。

「アーバン」のチューニングはたくみで、これは言うまでもなくパワーの出方を控えめにするモードだが、過剰なアウトプットを抑える一方、出足のよさやスポーティな味付けをしっかり残している。ストップ&ゴーが頻繁な都市部でも俊敏性が損なわれないので、ストレスなく、日常的に“使える”モードだ。渋滞にはまったり、道が混雑した都市部に入ったりしたなら、迷わず「アーバン」を選択したい。

さっそくイタリアンスポーツを峠に連れ出してみると、なんだろう! この楽しさは!! バイクまかせで軽く流すだけでも、後輪を中心に小気味よくカーブを曲がっていく。身のこなしは軽くてボディの傾きも深いけれど、視線を向けたほうに「スパッと向きを変える」というシャープさとはちょっと違う。柔らかくロールしながら優しくラインをなぞっていく感じ。素早く左右に切り返す際もどこかソフトで、それでいて素直に速い。スーパースポーツSとのコーナリング行為をじっくり堪能したくなる気持ちよさだ。ちなみに、この日履いていたタイヤは、ピレリの「ディアブロ・ロッソ III」だった。

Sの専用装備であるクイックシフターは、加速時にはクラッチレバーを握ったりスロットルを戻したりすることなくギアを上げていける。シフトダウンは、右手でブレーキをかけながらペダルを踏むだけでOK。瞬時にシフトされるさまはレースマシンそのもので、ちょっとしたレーサー気分を味わえる。ただ、「スポーツ」モードと組み合わせてギリギリまで“攻める”のは、次にサーキットに行くときまで我慢したほうがいいかもしれない。

日常とスポーツ。ツーリングとコーナリング。使い勝手とスタイル。そうしたバランスを絶妙に取りつつ、ライダーを楽しませることにも長けている。ドゥカティ・スーパースポーツSは、まったく人たらしのイタリアンバイクである。

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