F1サンパウロGPでレッドブルのマックス・フェルスタッペンが圧倒的な勝利を挙げたことで、レッドブルが抱えていたプレッシャーは間違いなく軽減しただろう。フェルスタッペンが勝ったのは6月のスペインGP以来だったのだ。
レッドブルはこの数カ月、自身のマシンからパフォーマンスを引き出すことに苦労し、その間にマクラーレンやフェラーリ、メルセデスが進歩を見せた。そういう状況の時にチーム上層部によく起こることだが、レッドブルにはパラノイアの兆候が忍び寄ってきた。
マクラーレンとメルセデスのウイングへの疑惑をFIAが否定「たわみの検査により、全チームのウイングが合法と確認」
レッドブルはマクラーレンのマシンの合法性について、疑念を示し始めた。まず、マクラーレンMCL38のフロントウイングが規定で許可されている以上にたわんでいるのではないかと示唆した。FIAはそれが事実でないことを証明するために、ベルギーGPではすべてのマシンのフロントウイングにカメラを取り付けたが、結局何の異常も見つからなかった。
アゼルバイジャンGPの後には、レッドブルはマクラーレンのいわゆる“ミニDRS”について、FIAに問い合わせた(これについては、フェラーリが加勢した)。FIAは今度はリヤウイングを詳細に調査し、チーム代表アンドレア・ステラおよびエンジニアたちと話し合い、シンガポールGPの週末に、この問題は解決済みと発表した。
さらに最近では、レッドブルは、マクラーレンが予選でタイヤを最大限に活用することができ、レースでは大きなデグラデーションに見舞われないことに注目し、マクラーレンは規則とピレリの指示を無視した行動を取っているという疑いを持った。
レッドブルはマクラーレンがタイヤのパフォーマンスを保つために少量の霧状水を使用していることを疑い、FIAに対し、確認するよう求めた。ピレリは、水の注入により、タイヤの安定性が向上したり、デグラデーションが少なくなると認める一方で、内圧の制御が難しくなるとも述べている。
ブラジルでジョー・バウアーの技術チームが、スプリント後に正確な検査を行った。唯一の完全ドライコンディションのセッション後に行われた検査の後、最終報告書において、すべての車両のタイヤが空気への添加物を禁止する規則に準拠していることが明らかにされた。
霧状水がインフレーションバルブを通して注入されたというレッドブルの疑いを裏付ける証拠は何ひとつ出てこなかった。一方で、タイヤが熱くなると、加えられた液体は蒸発し、検査で発見されないと考える者もいる。しかし、それでもタイヤ内側に水分は残ることになり、すべてのチームはタイヤをホイールに取り付ける前に可能な限り内部の水分を取り除くことを考えれば、このプロセスは理にかなっていないと思われる。
レッドブルからマクラーレンに移籍し、チーフデザイナーを務めるロブ・マーシャルは、極めて創造的で機知に富んでいるということを、レッドブルは良く知っている。そのため、レッドブルは、マクラーレンの成績が急激に向上した理由を説明する特効薬を探し出そうと躍起になっている、というのがパドックの多くの人々の考えだ。
レッドブルは干し草のなかから針を拾い出すような作業をしているように見えるが、この試みは今のところ成功していない。しかし、フェルスタッペンの4度目のタイトルがほぼ確定した今、レッドブルは多少リラックスし、マクラーレンの速さの理由を探ることよりも、自分たちのマシンを速くすることに集中できるようになるだろう。
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