今年で開設50周年を迎えた伝統のゴイアニアにて、7月27~28日に争われたSCBストックカー・ブラジル“プロシリーズ”第6戦は、元F1ドライバーやタイトル獲得経験者に混じり、新世代のチャンピオン候補が台頭する週末に。
おなじみルーベンス・バリチェロ(モービル・エール・フルタイム/トヨタ・カローラ)が通算8勝を重ねてきた、得意のアウトドローモ・インテルナシオナル・アイルトン・セナのトラックにて、22歳の愛息“ドゥドゥ”ことエドゥアルド・バリチェロ(モービル・エール・フルタイム/トヨタ・カローラ)がスプリント初制覇を飾り、偉大な父から勝利の遺産を引き継ぐことに。
来季2025年導入の新世代“SUV”ストックカー第1弾『シボレー・トラッカー』が初公開/SCB
続くメインレースは、予選最速を記録したシリーズ“2冠”のガブリエル・カサグランデ(A.マティス・フォーゲル/シボレー・クルーズ)がポール・トゥ・ウインで反撃の狼煙を上げ、自身の契約更新を祝うシーズン初勝利を飾っている。
レースウイーク直前にアナウンスされた2025年導入の新型SUVストックカー第1弾モデル『シボレー・トラッカー』が初披露され、各セッションのグリッドから先導走行を担当するなど、新たな時代の到来を控えるSCBだが、金曜2回のフリープラクティス(FP)セッションでは、おなじみの光景でもある“3連覇”経験者ダニエル・セラ(ユーロファーマRC/シボレー・クルーズ)の最速で幕を開けた。
「首位発進を決めるのはいつだって素晴らしいことだ。午前のFP1は少し波乱含みだったが、多くのことをやり遂げ、午後には正しい道を見つけられたと信じている」と、季節外れの高温条件にも翻弄されたと明かすセラ。
「クルマの挙動は良かったが、本当に重要なのは明日(の予選)だ。今は7月だがゴイアニアはいつも暑い。しかし、それは誰にとっても同じであり、この条件を制することが週末シークエンスの最低要件だ」
明けた土曜も気温は30度を超え、路面温度は50度に迫ろうかという南半球では異例の条件のなか、前日から出走28台中25台が秒差圏内という超接近戦の前提で予選へ突入すると、ここでベテラン勢がさすがの仕上がりを見せることに。
この3ステージ制の勝負にて、好調フェリペ・マッサ(TMGレーシング/シボレー・クルーズ)や3冠セラを抑え切ったカサグランデが、今季初、キャリア通算9回目のポールポジションを獲得した。
「僕らは非常に困難な年を迎えているし、この結果はチームに感謝しなくてはならない」と語ったカサグランデ。
「日曜のメインレースで勝利を求めてスタートを切るために、今日はポイントを獲得できるスプリントレースをしようと思うが、重要なのは明日の勝利だ。そのためにクルマをケアをして、プッシュも控えなくてはね」
週末の最短勝負となる30分+1周に向けては、計時予選結果からトップ12のリバースグリッドが採用され、前戦ヴェロチッタでポール・トゥ・ウインを達成している42歳のベテラン、フリオ・カンポス(ポール・モータースポーツ/シボレー・クルーズ)と並び、ルーベンスの長男が最上位スタートを切ることに。
■父ルーベンスに感謝するエドゥアルド「僕が知っていることはすべて彼のおかげ」
そのオープニングラップでフロントロウに並ぶカンポスを抑えた“ドゥドゥ”は、3番手のリカルド・ゾンタ(RCMモータースポーツ/トヨタ・カローラ)以下、4番手ネルソン・ピケJr.(カバレイロ・スポーツ/シボレー・クルーズ)や、5番手の父ルーベンスの動向やラップペースも意識しながら、セオリー通りのタイミングで義務ピットを消化していく。
ここを無難に処理したサンパウロ出身の22歳は、アンダーカットを狙って作業タイミングをずらしたクルマからもポジションを取り戻し、今季2勝目、シリーズ通算3勝目を達成した。
「信じられない! 僕もゴイアニアが大好きだが、父はゴイアニアの住民のようなもので、このトラックの『キング』でもある。いつか彼の数字に近づけることを願っていたが、まさかここで初勝利を飾れるなんて……」と、完璧なパフォーマンスで父親の記録に続いたエドゥアルド。
「父は僕に(サーキットについて)何のアドバイスもくれなかったが、僕をここまで育ててくれた。だから、ここで得たものは基本的には彼にとっても間接的な勝利だ。なぜなら僕が知っていることは、すべて彼のおかげだから」
そして日曜14時に始まった50分+1周のメインレースは、前日よりさらに温度が上昇する条件のなか、ポールシッターのカサグランデが序盤からマッサとの激しい一騎打ちを繰り広げる。
その間、カカ・ブエノ(KTFスポーツ/シボレー・クルーズ)とガエターノ・ディ・マウロ(カバレイロ・スポーツ/シボレー・クルーズ)にインシデントが発生し、さらにリカルド・マウリシオ(ユーロファーマRC/シボレー・クルーズ)がクルマを止めたことなどから、2度のセーフティカー(SC)が導入される一幕もありつつ、義務ピット後はマッサが首位浮上に成功し隊列を率いる。
ここから前日の宣言どおり、勝利を目指しマッサとのホイール・トゥ・ホイールの勝負を仕掛けたカサグランデは、元F1ドライバーに対して美しいオーバーテイクを決めてトップを奪還。直後に発動した3度目のSCにも動じず、リスタート後もマッサとセラを従えてトップチェッカーを受けた。
「素晴らしいタイミングで勝利が得られた」と勝者カサグランデが振り返れば、惜敗ながら週末の最多得点者として“マン・オブ・ザ・レース”のトロフィーを獲得した2位マッサも「ここでの仕事は完璧だった」と、一定の成果を強調した。
「表彰台を獲得し、完璧で効率的な週末になったね。カサグランデは前半後半の両スティントとも僕よりわずかに速く、危険を冒したくなかったんだ。僕らはこの結果がチャンピオンシップの終わりにとって重要があることを知っているし、ここゴイアニアで達成できたことに満足している」と、新たな選手権首位カンポスと、同2位のゾンタに続き、ランキング3位に浮上したマッサ。
続いて『BH Stock Festival(BHストック・フェスティバル)』と銘打たれた2024年SCBシーズン第7戦は、ブラジル南東部ミナスジェライスの州都ベロオリゾンテにて、8月16~18日の週末に象徴的なミネイロン・スタジアムの周囲に建設されたストリートサーキットでの初開催イベントが控えている。
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